独自開発の「仮想通貨」を使って社内で褒め合う、ユニークなシステムの実証実験「仮想通貨“Pay It Forward”」。利用者の9割が「モチベーションが上がった」といいます。実験を主導したのは、大手IT(情報技術)ベンダーである新日鉄住金ソリューションズの営業女性6人(チーム名はチタン女子)。「女性社員の仕事がつらいという気持ちを分かってほしい」という思いから、このアイデアは生まれたそうです。チームは「新世代エイジョカレッジ2017」でフォーラム部門大賞を受賞しました(エイジョとは営業職で働く女性たちのこと)。6人のメンバーに話を聞きました。
(参考:2016年大賞の紹介記事は「未婚の営業女性が「ママ」に挑戦 その驚くべき結果は」です。)
仮想通貨で「褒める」ハードルを越える!

白河桃子さん(以下敬称略) 今回、「チタン女子」というチーム名で2つの実証実験を実施しました。1つは「実験!会議室」、もう1つが「仮想通貨”Pay It Forward”」。このうち最終選考で大賞に選ばれたのが仮想通貨の方でした。仮想通貨とはどんな仕組みなのか教えてもらえますか。
熊野聖奈さん(以下敬称略) 用意した仮想コインは「ありがとう」「よくできました」「期待してるよ」「元気玉」という4種類。システムは社内のエンジニアに協力してもらい、ブロックチェーン技術を使って開発しています。パソコンの画面上でこれら4種類のコインに対して、それぞれ5コイン、10コイン、15コインと3種類のレベルが選べるようになっています。送りたい相手のメールアドレスを設定し、コメントを付けて送信することもできます。

例えば、取引先を訪問し、結果を上司に報告すると「期待しているよ」が5コイン送られてくる。そこに、「こういう風にしたら10コインあげるよ」とコメントが付いていたら、次にどんな行動を起こしたらいいのかがわかる。ログも残りますから、後で見返すこともできます。どういうポイントで上司が褒めてくれるのかが分かり、個人的にも上司とのコミュニケーションが円滑になりました。
白河 それまでは、上司とのそこまで緊密なやりとりは難しかった?
熊野 そうですね、上司も忙しいですから、わざわざそのための時間をとってもらうのは難しかったと思います。

白河 「次世代型営業」という実験テーマに対して、なぜ仮想通貨に着目したのか教えてもらえますか。
田中麻優さん(以下敬称略) 自分たちの感情を職場の人たちにどうやって分かってもらうか、が発想の原点でした。仕事をしていて「つらい」と感じても、それを伝えるために忙しい上司にわざわざ時間をとってもらうのは気が引ける。だったら、アラートを出せるような仕掛けがあったらいいなということを、まずは考えました。
ただし、実際にできた仕組みにはアラート機能は実装していません。つらいときにアラートを出すだけだと、ただ単に「気を使われる存在」になってしまう。性別関係なく使える仕組みはなんだろうと考えたときに、「褒めること」が浮かんできました。