こだわりの逸品

150年存続の秘訣「スモール・イズ・ビューティフル」 神戸・元町の柴田音吉洋服店(下)

2018/6/17

柴田音吉洋服店の5代目柴田音吉氏

 1868年(明治元年)の起業以来、神戸・元町でビスポーク(ハンドメード)スーツにこだわり続ける柴田音吉洋服店。その150年間は、そのまま近代日本の洋装史でもある。前回「最初の顧客は伊藤博文 明治元年からスーツづくり 」に引き続き、激動の時代を乗り越えてきたその心髄を現社長の5代目柴田音吉氏に聞いた。




 ――柴田音吉洋服店が受け継いできた理念は何でしょうか。

 「ビスポークの原点である『最後の1針まで1人の職人が縫う』を守っています。スーツは上着を6万針、パンツは約3万針が必要です。仮縫いから約28時間かかり、そのうち26時間が手作業の工程です。職人一人ひとり、針のテンション(圧力)が違い、縫い方も異なります。最後まで1人だけが担当することで着心地がよく、長い間形崩れしないスーツに仕上がります」

 「当然ながらコストは高い。1着30万~40万円からで、生地によっては100万円を超えることもあります。生地は約500種類を常時そろえています。1カ月に作れるのは20~30着ですね」

 ――工場長(チーフカッター)の稲沢治徳氏は「神戸マイスター」や厚生労働省の「現代の名工」にも選ばれています。

 「高度な縫製技術と裁断が評価されました。スーツ作りの大きなテーマである、機動性のあるゆとりと美しいシルエットを両立させました。現在79歳ですが24歳で入社して以来、変わらず一線で働いてもらっています」

Latest