介護を必要とせず自立した生活を過ごせる期間である「健康寿命」。厚生労働省がこのほど公表した2016年の推計値は男性72.14歳、女性74.79歳でした。長い健康寿命は老後の生活の充実につながるし、医療費削減にもプラスに働きます。健康寿命をさらに延ばしていくための医療政策や長寿研究への期待が高まっています。
16年の日本人の健康寿命は前回(13年)と比べ男性が0.95年、女性が0.58年、それぞれ延びました。介護などが必要となる期間を示す、健康寿命と平均寿命との差は男性8.84年、女性12.35年で前回よりいずれも縮小しています。
医療費との関係をみると、健康寿命が長い上位5県の1人当たり生涯医療費は2516万円で、下位5県の2961万円を15%下回っていました。健康寿命が延びれば医療費の削減につながることがわかります。
健康寿命を延ばすことを目的にした長寿研究や調査が各地で進んでいます。慶応義塾大学は85歳以上の超高齢者、100~104歳の百寿者、さらに105歳以上の超百寿者の各集団の心身状態を追跡したり遺伝子データを集めたりするプロジェクトを進めています。
研究を通じてわかってきたことの一つが、老化と体内に生じる炎症との深い関係です。細胞老化に伴って慢性的な炎症が生じ、運動・認知機能が低下する「フレイル」(虚弱)の原因になるといいます。同大学の広瀬信義特別招聘(しょうへい)教授は「加齢に伴う慢性炎症を抑制することによって健康長寿が実現できる」と考えています。
早稲田大学は、40歳以上の卒業生を中心に参加者を募り、毎週1回、健康診断と体力測定を15年から20年計画で実施しています。ネット参加者を含め約5000人分のデータを集めました。樋口満アクティヴ・エイジング研究所長によると、野菜や海藻など副菜をたくさんとっている人は内臓脂肪が少なく、生活習慣病のリスクが低くなることが確認されたそうです。