見かけで選ぶ缶チューハイ 女性は「りらくす」が圧倒

顧客が最も買いたくなるパッケージデザインはどれか。今回は、市場が急拡大している「ストロング系缶チューハイ」。サッポロビール「りらくす」(A)、宝酒造「タカラcanチューハイ<ドライ>」(B)、キリンビール「氷結ストロング」(C)、アサヒビール「もぎたて」(D)、サントリースピリッツ「-196℃ストロングゼロ」(E)のパッケージデザインを取り上げる。消費者、デザイナー、マーケター500人が選んだデザインは?
男性の一番人気は「氷結ストロング」
5商品について、500人に対して「パッケージで選ぶならどれを購入したい?」(Q1)と聞いたところ、Aが32.2%と最も人気が高く、C26.4%、D18.0%、B12.4%、E11.0%と続いた。男性のみを見ると、C29.1%、A22.1%となり、1位と2位が入れ替わる。女性のみでは、Aが過半数に迫る48.5%の支持を得ており、女性からの圧倒的人気がAを全体のトップに押し上げていることが分かる。

「パッケージから伝わるイメージ」(Q2)で、各商品が他と比べて高い評価を得た項目を中心に見ると、Aは「香りが良さそう」「おしゃれなイメージ」が各37.6%、Bは「高級感がある」が37.2%。Cは「親しみがある」が48.2%。Dは「果実感がありそう」が49.0%、「素材が良さそう」が47.8%。Eは「アルコール度数が高そう」が38.8%となった。

「通常のアルコール度数が8~9%の缶チューハイが100円だった場合、Q1で選んだ商品がいくらまでなら買うか」(Q3)と聞くと、Aが+10.0円、Bが+10.6円、Cが+11.3円、Dが+11.5円、Eが+12.7円となった。Q1で支持を集めたAやCではなく、EやDのデザインの価格寄与度が高いのは興味深い。コアな支持層がいることが分かる。

「デザインの良いところ、悪いところ」(Q4)を聞いた結果を、ヒートマップに着目しながら見ていきたい。それぞれの商品の2つ並んだヒートマップのうち、暖色を示した左は「良い」コメント、寒色を示した右は「良くない」コメントが寄せられた箇所を示している。

Aの「良い」コメントは、パッケージ上部の「フルーツビネガーのチューハイ」に集まった。「フルーツビネガーというのはとても良いアイデア」(男性60代)、「女性受けがよさそう」(女性20代)といった意見があった。
Bの「良い」コメントは「PREMIUM」の文字に集中しており、「黒がプレミアムっぽい」(女性50代)、「高級感がある」(男性20代)といった意見が寄せられた。

Cの「良い」コメントは、レモンと「果汁感炭酸感UP」の文字に集中しており、「爽やかな感じで良い」(女性30代)、「果実感が強い」(男性40代)といった意見があった。
Dの「良い」コメントは、ロゴ「もぎたて」に多く、「分かりやすくておいしそう」(女性40代)、「もぎたての字体が良い」(男性30代)との意見が寄せられた。

Eの「良い」コメントは、ロゴと「しっかり果実感」に多く、「力強いメッセージ」(男性40代)、「パンチが効いてそう」(男性30代)といった意見が寄せられた。
「良くない」コメントが寄せられた箇所は、Aはりらくすのロゴ。BとCはパッケージ正面中央。Dはもぎたてのロゴ。Eはロゴ付近となっている。どの商品も、良いコメントが寄せられた箇所が「良くない」コメントも集めている。
りらくすが女性6項目でトップ
Q2とQ4の結果から、各商品ともに、パッケージを通じてそれぞれの商品特性を表現できていると言える。
「パッケージから伝わるイメージ」(Q2)を女性に絞って見ると、Aのりらくすは、「おしゃれなイメージ」「特別なときに飲みたい」「おいしそう」など6項目でトップに立ち、あらためて女性からの人気の高さが際立ってくる。

全体では高い人気だったAだが、マーケター、消費者、デザイナーに分けて見るとどうだろうか。「パッケージで選ぶならどれを購入したい?」(Q5)では、マーケターと消費者はAがそれぞれ28.8%、36.7%でトップ。デザイナーのみ、Cが26.0%でトップとなった。デザイナーは、AよりもCのパッケージデザインを「買いたい」と評価する傾向が強かった。

各商品の「デザインの良いところ」(Q6)について、マーケター、デザイナーの意見を見てみると、Aについては、マーケターは「ネーミングが新鮮」(女性50代)、「訳が分からなくて興味がわく」(男性50代)など、商品名に注目。デザイナーは、「平仮名のロゴが柔らかい感じ」(男性50代)、「女性に受けそうな書体」(男性40代)に注目している。

Bもまた、マーケターとデザイナーで注目したポイントが異なる。マーケターは「ありがちではあるが高級感が出る」(男性40代)、「特別感がありそう」(男性30代)と、PREMIUMというロゴに特に注目した。デザイナーは「インパクトがあるデザイン」(男性60代)、「デザインは美しい」(男性40代)など、パッケージデザインそのものを評価している。この結果から、マーケターは具体的な訴求ポイントを意識し、デザイナーは全体の雰囲気を見ると再確認できる。

Cについては、マーケターは「商品のイメージがわきやすい」(男性50代)、「おいしそう」(男性30代)と味に言及。デザイナーは「缶の形状がおしゃれ」(女性40代)と缶の形状にも注目している。

Dについては、マーケター、デザイナー共にネーミングと果実感の関係を評価。Eは、マーケター、デザイナーどちらも、アルコール度数の高さを表現したパッケージデザインと評価している。
女性のストロング系ユーザーに訴求
今回の調査結果を総合すると、パッケージによって、ターゲットに最も好印象を与えているのはAだ。女性消費者の3人に1人はストロング系を買っているというデータを受けて、「女性が買いやすいストロング系があってもいいのでは」と開発をスタートしたという。
Aの開発を担当したサッポロビールの新価値開発部第2新価値開発グループ商品開発担当主任の宝麻実氏は、「30代、40代の女性がメインターゲット。20代は量は飲めないし、8%だと強過ぎる。27歳くらいからお酒が楽しくなると想定し、30代以上に訴求する商品にしたいと考えた」と語る。
パッケージの工夫については、「新商品なので、まずは読んでもらうことが大事」と考えて、ロゴのディテールやサイズを何度も検証した。パッケージ上部に配置した果実のイラストについては、「おいしさ感、果実のみずみずしさが伝わるよう、描き直してもらったり、色を付け直してもらったり、図鑑チックなイラストにならないように気をつけた」と、ストロング系でありつつも、あくまで女性目線でおいしさを表現するパッケージデザインを目指したと言う。
(ライター 廣川淳哉)
[日経クロストレンド 2018年4月24日の記事を再構成]
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