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白河桃子 すごい働き方革命

「頑張れ精神」は日本の毒 ドラッカー流は知的に休む ドラッカースクール ジェレミー・ハンター准教授(上)

2018/4/25

ハンターさんは「心身をもっと大切にしなければ、21世紀で成功できない」という

白河 一種の燃え尽き症候群ですね。自分は大丈夫だと思っても、体がいうことをきかなくなる。

ハンター うつ状態にも陥り、孤独感・無力感に打ちひしがれ、誰にも会いたくなくなってしまう。日本人は文化的にここに陥りやすい。米国人もそう。両国は何十年もの間、国中がゾーン・オブ・レジリエンスの外側で走り続けているようなものです。

■「とにかく頑張れ」のメンタリティーは日本の毒

白河 ゾーン・オブ・レジリエンスの内側で生活することが、生産性を高めることにもつながるんだ、という認識を広めていかないといけないですね。 

ハンター そう思います。「とにかく頑張れ」のメンタリティーは日本の毒。自己犠牲で頑張りすぎるのはあまりに非健康的であり、心身をもっと大切にしなければ、21世紀で成功できない。

実は、休むことに罪悪感を覚える人は私の米国のクライアントにも多いです。特にエグゼクティブワーカーや、それを目指す学生たち。私のクラスでは、そういう人たちにどうすればゾーン・オブ・レジリエンスの内側に戻れるのか、を教えています。

白河 具体的には、どんなことを心がければいいんですか?

ハンター 基本は、十分かつ質のいい睡眠をとること。睡眠に関してはよく、5つのことを話します。午後2時以降はなるべくカフェインを摂取しない。できればお酒も飲まない。お酒には睡眠導入の効果もありますが、半面、睡眠の質を下げてしまいます。パソコンのブルーライトを浴びるのも、寝る前は避けた方がいい。

白河 寝室にスマートフォンを持ち込むな、とよく言いますね。

ハンター その通りです。それと、お風呂に入るのはいい。お風呂は日本人にとっての秘密兵器ですよ(笑)。加えて、朝のエクササイズ。とにかく、よく眠れて、ゆったりとした朝を迎えること。これが基本です。

もう一つ付け加えるとすると、抹茶も日本の秘密兵器といえるでしょう。私はコーヒーよりも好きです。神経質になりすぎることなく落ち着いて集中力を持続するのに役立つのです。これは私の友人の脳科学者も薦めています。

■時間より目的が大事

白河 日本では今、働く時間を法律で管理しようとしていますが、必ず「もっと働きたい」という声が挙がります。「私たちは好きで仕事をしているのだから、もっと働かせてくれ」と。どう思われますか?

ハンター 単に労働時間を短くすればいいというシンプルな問題ではないと私は思います。「なぜ私たちはこのように働かなくてはいけないのか?」そして「何を達成したいのか?」「そのためにもっといい方法がないだろうか?」に注目する方がもっと有益でしょう。

接待文化は特に毒ですね。私のクライアントにもいるのですが、彼女は毎晩のように2時3時まで付き合いをしなくてはならず、このスケジュールのために休息がとれないばかりか、新たなことを学んだり開拓したりすることさえもできません。さらに厄介なことに、彼女の仕事はビジネスにイノベーションを起こすことなのです。極度の疲労を継続的に感じている中で、どうやってイノベーションが生まれるというのでしょう。毎晩のように飲み歩くことが、望んだビジネスの結果を達成するために本当に必要なのでしょうか? もっと他にやり方があるのではないでしょうか?

重要なのは、働く人たちが「自分たちは安全だ」と思える環境を作れるかどうか。安全だから挑戦できるわけで、安全だと感じられなければ、人は失敗を恐れて何も挑戦しなくなります。

白河 たしかに、挑戦できることが大事ですね。グーグルが2012年から、労働生産性を向上させるために開始した「プロジェクトアリストテレス」でも、最も生産性の高いチームは心理的安全性の高いチームである、という結果が出ています。そこには挑戦できる環境があるんですね。

ハンター そうです。それはゾーン・オブ・レジリエンスとナレッジワーカーの生産性における私の考えを説明する良い例です。失敗したら破産して敗者の烙印(らくいん)を押されるような社会ではイノベーションも起こらないし、スタートアップも生まれて来ないでしょう。

(下編の「『不快な変化』こそチャンス ドラッカー流働き方改革」では、自分が直面した変化にどう対応するか、どう感情と向き合い、コミュニケーションしていくべきか、などについてお聞きします)

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 曲沼美恵)

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