増えるシェア自転車 スマホで予約、通勤にも人気
特集 目指せ!「持たない」生活(上)
新年度がスタートする4月は、生活スタイルを見直すチャンス。日々増え続ける身の回りのモノを減らして身軽な生活を送りたいと思っているなら、ぜひ試したいのが近年広がりを見せているシェアリングサービスだ。この特集では3回にわたって、シェアリングサービスを実際に利用し、その使い勝手や可能性を探っていく。目指すは、自分で所有するものを限りなく減らした「持たない生活」。初回は自転車のシェアリングサービスを利用してみた。
シェアサイクル事業に多くの企業が参入
シェアサイクルのサービスには、現在多くの企業が参入している。
ドコモ・バイクシェアはNTTドコモの関連会社で、東京都内10区を中心に大阪や仙台など15の地域でサービスを提供している。料金は1回あたり150円/30分から。他に、1日パスや月額会員など複数の料金プランがある。借りた場所とは別の場所に返すこともできるので、ちょっとした移動や観光にも気軽に利用できる。
会社設立は2015年2月だが、サービス開始はNTTドコモ自身が運営していた11年4月までさかのぼる。全く畑違いのシェアサイクル事業に参入した理由について、ドコモ・バイクシェアの広報担当者は「これまで、NTTドコモの通信事業で培ってきた通信技術や課金・認証プラットフォームが生かせると考えた」と話す。提供地域の拡大や自転車の増車は、市場の状況を踏まえて検討していくという。
17年8月から札幌市内や福岡市内でサービスを展開している「モバイク」は、中国発のシェアサイクル。LINEが出資することでも話題となった。モバイクでは、これまで世界で展開してきた実績を活かし、世界共通で提供しているスマホアプリからQRコードを読み取るだけで簡単に自転車が利用できる仕様になっている。その手軽さから「日本人の普段使い以外に、訪日外国人の利用も多い」(広報担当者)。利用エリアは順次拡大していく予定だ。
東京都やさいたま市、横浜市で17年8月から「ダイチャリ」を展開するシナネンサイクルは、もともと自転車の卸・小売業を50年にわたって運営した企業だ。これまでの経営で培ってきた、自転車の供給やアフターメンテナンスの知見が生かせるとして、シェアサイクル事業に乗り出した。「人口減による需要縮小や急速な経済のシェアリング化における消費者のニーズに応えるべく、自転車を通した新たな交通インフラ作りに挑戦していく」と担当者は意気込む。
17年11月にはセブンイレブンと提携し、セブンイレブンの用地にステーションの設置を開始した。さらに、2018年度中には首都圏、および政令指定都市を中心に1000店舗5000台の貸出・返却スペースを設置する予定でセブンイレブンと合意しているという。近くのコンビニから乗れるようになれば、利便性がアップするのは間違いない。今後は同様の事例で参入する企業も増えそうだ。
アプリで場所を確認して予約
実際の使い勝手はどうなのかを確認するために、シェアリングサービスを利用してみた。使ったサービスは、ドコモ・バイクシェアが運営する「docomo bike share」だ。
自転車を使うときは、事前にスマホから予約をする。専用アプリの「ドコモ・バイクシェア ポートナビ」が用意されているのでダウンロードした。ちなみに予約後は約20分以内に自転車を利用し始めないと自動でキャンセルされてしまう。そのため、予約操作は現地で行う必要がある。
最初に自転車を借りるエリアを選択する。今回は新宿区で利用することにした。アプリの「借りる」から「新宿区自転車シェアリング」をタップすると、ログインページが表示される。初回利用時は、メールアドレスやユーザーIDなどの会員情報を登録する必要がある。なお、会員登録作業は時間がかかるため、初回の予約をする前に自宅などで済ませておきたい。
ログインが完了したら、マイページに切り替わって自転車を予約することができる。今回は「新宿・西新宿」のエリアで利用することにした。「地域を選ぶ」で「新宿区」、「場所を選ぶ」で「新宿・西新宿」を選択すると、エリア内のサイクルポート(専用の貸出・返却場所)が一覧表示された。
ただ、初めて利用するので、ポート名と実際の場所がさっぱり結びつかなかった。また、自宅から新宿駅までは電車で移動して利用する予定だったが、新宿駅からどれくらい離れているのかも想像がつかない。そこで、トップ画面の「ポート検索」からポートのある場所を調べることにした。
ポートをタップすると、借りられる自転車の番号が一覧で表示される。そのうちの一台をタップすれば予約が完了して、解錠に必要なパスコードが表示される。
ポートに行ってみると自転車が並んでいる。予約した自転車の番号を見つけたら、サドルの下にあるテンキーでパスロックを解除すれば利用できる。自転車は、別のポートに返却することも可能だ。
通勤に利用する人も多い
1回試して使い方を覚えれば、2回目以降は比較的スムーズに利用できるだろう。通勤や決まったルートを移動する足が欲しい場合は、便利な選択肢になりそうだ。例えば、自宅から電車の最寄り駅までバスに乗っているなら、代わりにシェアサイクルを使ってもいいだろう。また、オフィスまで自転車で行ければ運動不足の解消にもなる。あらかじめサイクルポートの場所をチェックしておけば、止める場所を探し回る心配もない。また、オフィスの近くにサイクルポートがあれば、営業先や打ち合わせで訪問するオフィスなど、仕事で定期的に行く場所へスムーズに移動できる。
今回利用したドコモ・バイクシェアでも「30~40代の男性が通勤に利用するケースが多い」(広報担当者)という。また、法人利用のプランも提供しており、運輸事業の一環として利用しているケースもあるそうだ。
ただし、初めて利用する場合は、借りる手順やポートの場所を把握するのに若干苦労するだろう。もしこの記事を見て、観光や仕事で利用してみたいと思ったら、時間があるときに、近場で試してみるのをおすすめする。
シェアリングサービスを使えば、自転車の購入・メンテナンス費用は不要で、いつでも手軽に利用できる。自宅周辺にはステーションがないという場合も、今回紹介したようにシェアサイクルに参入している企業は増えている。コンビニなど身近な場所にも徐々に浸透しているようなので、今後生活圏でサービスが提供されることを期待したい。
(文 藤原龍矢=アバンギャルド)
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