最新「多機能」ペン 価格、替え芯で製品の幅広がる
納富廉邦のステーショナリー進化形
仕事で持ち歩くペンを選ぶとき、最初に候補にあがるのはボールペンやシャープペンシルなど、異なるジャンルの筆記具が1本の軸にまとまっている「多機能ペン」だろう。最新の多機能ペンにはどんなものがあるのか。長年文具を見続けた納富康邦氏が解説する。
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発表会の取材に行くと、そこに来ているライターが「ジェットストリーム 4&1」(三菱鉛筆)を使っているのをよく見かける。低粘度油性でスイスイ書けるボールペンが黒、赤、青、緑と4色、さらに0.5mmのシャープペンシルまでが1本に収まって1080円という、とりあえず持っていれば困ることがない筆記具なのだから、人気があるのも当然だろう。
ジェットストリーム 4&1のような、ボールペンとシャープペンシルなど、異なるジャンルの筆記具が1本の軸にまとまっている製品を「多機能ペン」と呼ぶ(一方、赤と青と黒のボールペンが1本にまとまっているタイプの製品は「多色ペン」と呼ばれる)。
多機能ペンといわれ多くの人が思い浮かべるのは、1977年、ゼブラが発売した「シャーボ」ではないだろうか。「右へ回すとシャープペン、左に回すとボールペン」のコピーで大ヒット商品となった「シャーボ」は、リニューアルし、今も「シャーボX」という名前で販売は継続中。購入時に軸、「リフィル」と呼ばれる交換できるインク芯(油性インク、ゲルインク、エマルジョンインクの各色)、シャープペンシル(0.3、0.5、0.7mmから選ぶ)を好きに組み合わせることができる。高級筆記具路線の多機能ペンの代表的な製品だと言えるだろう。
違いは「シャープペンシル」機能
多機能ペンの場合、メカニズムの最大のポイントは、シャープペンシルの芯の出し入れ用ノックボタンを、どこに配置するかということになる。
前述の「ジェットストリーム 4&1」は、ボールペンは軸の上辺にある各色に合わせたノックボタンを押すのだが、シャープペンシルはクリップを押すようになっている。芯の出し入れは、さらにクリップを押し込んで行うのだ。シャープペンシル部分を引っ込めるには、ボールペン部分のノックボタンのどれかを軽く押せば良い。現在、比較的安価な多機能ペンの場合、このシステムが一般的のようだ。尻軸のキャップを外すと、消しゴムが入っているあたりも、きちんとシャープペンシルとして使えるようになっている。
軸を回転させて芯を繰り出すタイプの場合は、シャープペンシル部分もボールペン同様、軸を回してペン先を出して、芯は軸の上半分がノックボタンのようになっている、というスタイルが一般的。前述の「シャーボX」や、「4+1 RiDGE」(パイロット)などが、このタイプ。多色も多機能も、軸回転式は高級ラインの筆記具に多く使われる。
ちょっと変わったところでは、ノックボタン1つの振り子式で、シャープペンシルもボールペンも同じようにノックで出せるけれど、シャープペンシルの時だけ、ノックボタンをさらに押せば芯が出るというタイプもある。ロットリングの「4 in 1」が、そのシステムの代表。ノックボタンは1つだが、実はリフィルを引っ込めるにはクリップ上にあるボタンを押す必要がある。なので、正確には2ボタン式なのだ。
買うときに中身が選べる安価タイプ
高級ラインの多機能ペンの場合、その多くが、通称「4C」と呼ばれる、似たような規格のリフィルを使っていることが多く、好きなメーカーのリフィルに差し替えることができるのも魅力の一つ。とはいえ、メーカーによって微妙に太さが違ったりして、使えない場合もあるのだが、ハイテックCなどで使うゲルインクのリフィル、ジェットストリームやビクーニャ、アクロボールといった低粘度油性のリフィルも4Cのものが増えて、色々差し替えたくなるのも事実。
500円以下で買えるような安価なタイプだとメーカーごとのリフィルのサイズが違うので、差し替えて、自分ならではの多機能ペンを作るのは難しい。
しかし、その一方で、安価なタイプは、買う時点で中身を選べるものが多い。パイロットの「ハイテックC コレト」、三菱鉛筆の「スタイルフィット」、ぺんてるの「アイプラス」、ゼブラの「サラサセレクト」など、軸とリフィルを好きに組み合わせて購入できるタイプは、当初、学生、特に女性向けにヒットしたが、最近は、ビジネスでも使えるようなシンプルな軸も登場して、ユーザー層も広がった。
この手の製品の面白いところは、シャープペンシル機能を入れるか入れないかも自分で選べるところ。三菱鉛筆の「スタイルフィット」ならジェットストリームのインクを使ったリフィルが選べるというように、各社の最新のインクが利用できるのも魅力だ。
修正テープがある多機能型も
これまでの常識にとらわれない多機能ペンも登場している。
回転式の黒、赤、シャープの多機能に加え、消しゴムを繰り出せるトンボ鉛筆の「モノグラフマルチ」。パイロットの「アクロボール ホワイトライン」はボールペンと修正テープが1本の軸に入っている。「多機能」のバリエーションも広がっているのだ。
デザイン性を加えたものも出てきた。たとえばトンボ鉛筆の「ズーム505 mf」は、国産筆記具にデザインの視点を導入したロングセラー「ズーム505」の多機能タイプ。パイロットの「バーディスイッチ」はシャープペンシルのノックボタンを外すと中にボールペンが仕込まれている手帳用極細軸の多機能ペンだが、500円(税別)という価格とは思えない高級感を持つ。
それにしても、ボールペン自体の性能がアップしたおかげで、多機能ペンはメカニズムはそのままでも、ものすごく使いやすくなっている。軸もどんどん細くなって、シャーボXなど、よく、この細さにあれだけのメカニズムを詰め込んでいると感動する。構造上、単色のペンに比べて筆記時にペン先が少しだけブレる欠点はあるものの、やはり大抵のことが1本で済むペンは便利なのだ。
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