スマートフォン(スマホ)とイヤホンをつなぐケーブルだけでなく、イヤホンの左右をつなぐケーブルもない「完全ワイヤレスイヤホン」。2017年後半、大手オーディオブランドからも新製品が相次いで登場した。音質や使い勝手はどうなのか。ソニーとBOSE(ボーズ)の完全ワイヤレスイヤホンを、昭和生まれのオーディオ評論家と平成生まれのライターが日常生活で使い比較してみた。
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販売が急伸している完全ワイヤレスイヤホン
16年に発売されたiPhone 7でイヤホンジャックが廃止されたことをきっかけに、17年はBluetoothによるワイヤレスイヤホンの売り上げが大きく伸びた。調査会社のGfKジャパンによると、ワイヤレスヘッドホン・イヤホン(Bluetooth対応ヘッドホン・ヘッドセット)の売り上げは数量ベースで前年比45%増、金額ベースで79%増(17年1~11月)。17年9月に発表されたiPhone 7の後継機であるiPhone 8やiPhone Xでもイヤホンジャックは搭載されず、今後もますます需要は伸びていくだろう。
中でもケーブルでつながっておらず、左右が独立した「完全ワイヤレスイヤホン」が注目を集めている。GfKジャパンによれば、17年1~11月の家電量販店における販売台数は前年同期の31倍に達した。同社アナリストの合井隆人さんは「Bluetooth製品はステレオヘッドホン市場を押し上げている存在だが、中でも完全ワイヤレスイヤホンは販売が急伸している」と話す。
便利というより不便がない
完全ワイヤレスイヤホンの最大のメリットはケーブルがないことだ。これにより、ケーブルを引っかけて外れたり断線したりする心配がなくなった。実際に使ってみると便利というよりも不便さがなくなり、ストレスを感じなくなったという印象が強い。特に冬の時期はマフラーやマスクに絡まることがないのが快適だ。
完全ワイヤレスイヤホンはアップルの「AirPods」が有名だが、それ以外はモダニティ「EARIN」などのクラウドファンディング発の製品や新興ブランドが中心だった。しかし、17年後半にはソニー、BOSE、JBLなど、主要ブランドから新製品の発表が続いた。大手メーカーの参入によって、「さらに販売拡大の動きが加速するとみられる」(合井さん)。
NIKKEI STYLEでは以前「AirPods」とソニーの「WF-1000X」を比較した記事を掲載している(「ソニーの完全無線イヤホン 音質ではアップルに圧勝」)。今回は17年10月に発売されたソニーの「WF-1000X」と、11月に発売されたBOSEの「SoundSport Free wireless headphones」を平成世代のライター(小沼)と、AV評論家の小原由夫さんが比較した。
存在感のBOSE、忘れるほどフィットするのはソニー
小沼(25歳のライター) まずはそれぞれの外観から比べてみましょう。こちらがキャリングケースです。


小沼 どちらも幅は同程度ですが、BOSEの方が平らで、ソニーの方が背が高いかわりに薄くなっています。重さはソニーが70g、BOSEが80gと大きな違いはありません。
小原(53歳のオーディオ・ビジュアル評論家) このケースは充電器の役割も兼ねています。これは完全ワイヤレスイヤホンの特徴ですね。ただ、どちらもケースが少しあか抜けてないなあ。もっと洗練されたデザインもできたんじゃないかと思ってしまいます。
小沼 カバンに入れていれば気にならないでしょうが、ポケットに入れていると少し存在感がありますよね。街を歩きながら装着する時も、ケースが手の中で安定せず少しまごつきます。続いて本体を比べてみましょう。