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ボーダー越えて着物を革新 老舗仕立屋4代目の挑戦

2018/2/23

 創業100年の仕立屋、岩本和裁(東京・新宿)の4代目、キサブロー。着物デザイナーとして、和服の現代的な再解釈に取り組む。曽祖父、初代岩本喜三郎の名を受け継ぐが、そもそもは女性。性別に違和感を覚えてきた自らの経験も背景のひとつとして、和服と洋服、男女の性差など、さまざまなボーダーを越えた、新しい「キモノ」の表現に挑戦している。




 キサブローは1985年生まれの32歳。少女時代は家の仕事柄、和服を着る機会が多かったが、「花柄でピンクだったり赤だったり、好きではないものを着せられていた」と振り返る。

キサブロー氏(2ndコレクション「鯔背-INASE-」の会場で)

 その後も違和感が消えることはなかったが、多摩美術大学への進学で転機を迎える。1年目、自分の好きなものと嫌いなものを書き出せ、という演習でのことだ。「嫌い」には女性らしいものばかりが並び、「一体何なんだ、と混乱した」。

■「自分にさよなら」

 区切りをつけたのは翌年の成人式。親の望みに応えて振り袖姿となった。嫌だったが「これを着ればこの先、私がどうなったとしても親は許してくれるのではないか」と思ったという。「自分にさよならしたって感じです。自由に生きようと開き直ったんです」

 そして卒業時には羽織はかまを着た。「このとき、着物が好きになりました。着たかった物だから。いままでは着たくない物を着ていただけ。しっくりきました」と振り返る。

■着物の機能美

作品には意識的に新しい素材を入れることにしているという

 着物というと柄などに目がいってしまいがちだが、「合理的にできているのが美しい」と話す。着物は1本の反物を直線裁ちで、残布を出さずに仕立て上げる。その機能美を知ったときに「一気に好きになった」。さらに、縫い糸をほどいて、仕立て直すこともできる点も魅力だ。「着物は育てていく衣服かなと思っている」。

 めざすは「洋服感覚で着られる着物」。洋服と合わせられる着物だ。「服とジェンダー(性差)は密接な関係があるが、そこすらも超えて着物をつくりたい」と語る。

(敬称略)

キサブロー
1985年生まれ。2009年多摩美術大学情報デザイン学科卒、アートユニット「明和電機」入社。映像制作会社を経て独立。2015年、「キサブロー」ブランドを立ち上げ。2016年、伊勢丹新宿本店の「ISETAN×ルパン三世 LUPINISSIMO IN ISETAN 2016」で、キャラクターをモチーフとしたオリジナル着物を制作、反響を呼ぶ。2017年11月、2ndコレクション「鯔背-INASE-」開催
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