きっかけは、「倍返しだ!」で大ヒットした13年7月放映のTVドラマ「半沢直樹」。三光稲荷神社には、池の御神水でお金を洗うと何倍にもなって返ってくると信じられている「銭洗い池」があり、ドラマとは直接の関係はなかったものの、「倍返し神社」と話題になりました。参拝客は前年から約2割増え、神社は徐々に知られる存在となっていきました。

(左上、右上)ハートの絵馬で人気に火が付いた姫亀神社、三狐地神社は 三光稲荷神社の境内にある(下)色とりどりのあんが人気。茶処くらやの恋小町だんご

地域を巻き込む地道な活動で観光客が年々増加

そして16年7月ごろ、水谷さんは商店街の人などから「最近、神社はインスタ(インスタグラム)ですごい人気ですね」と声を掛けられるようになりました。インスタを知らなかった水谷さんは最初、何のことか分からなかったといいますが、そのころになると神社は若い女性であふれていました。神社の画像は多くのSNS(交流サイト)に投稿され、観光情報メディアのスナップレイスによる17年の「SNS映えスポットランキング」では「Cool!(おしゃれ・フォトジェニック)部門」で全国3位となっています。

同じころ、城下町では昭和横丁の「茶処くらや」が、カラフルでかわいらしい「恋小町だんご」を考案。本町通りには新しい店が続々とオープンするようになり、城下町散策の魅力が広く知られ、若者や女性が集まる観光地へと変貌しました。歩行者天国開催日の歩行者数は、12年は1日平均約1700人でしたが、17年には約4500人に増えています。

この裏には地道な街づくりの活動もありました。その中心となったのは、05年に旅行会社から犬山市観光協会に入った後藤真司さん。江戸時代に描かれた城下絵図と、現代の地図がほぼ一致するという犬山城下町の価値に目を向け、シャッター街となっていた本町通りで城下町復活に奔走しました。

07年には、名鉄犬山線を運行する名古屋鉄道と犬山市が観光タイアップキャンペーンをスタート。五平餅や田楽などご当地の串料理をアピールする「串グルメ」、お笑い芸人が車夫を務める「お笑い人力車」など、ユニークなコラボ企画を次々打ち出し、徐々に観光客が戻ってくるようになりました。

09年には本町通りの電線が地中化され、すっきりした街並みに江戸情緒がより際立つようになりました。数々の取り組みで、犬山城の入場者数は11年連続で増加。過去最低だった03年の約19万人から、17年は57万人まで増えました。城下町のにぎわいはそれを上回るものになっています。

犬山城の入場者数は、過去最低だった2003年の3倍まで回復
江戸情緒が色濃く残る城下町。電線地中化ですっきりした街並みになった

散策で立ち寄りたいレトロなカフェ

本町通りには飲食や雑貨、土産物などの店舗の他、江戸期の建築様式を残す旧磯部家住宅や、4月に行われる犬山祭の車山(やま)からくりを展示する「からくり展示館」などの観光施設も充実。さらに本町通りの周辺には、魅力的なカフェが点在しています。

寺内通りには看板猫の「ボタン」がいるカフェ「珈琲ボタン」があります。古い日本家屋を改装したレトロな店内はテーブル席の他、本棚を備えたカウンター席があり、一人でもゆっくり過ごせます。自家焙煎(ばいせん)のコーヒーや自家製のチーズケーキの他、モーニングやランチなどのカフェメニューも充実。

(写真上)珈琲ボタンのオーナー、大前夫妻と看板猫のボタン(右)とポポ。(左下)古民家を改装した店舗。(右下)チーズケーキセット。(写真上と右下提供:珈琲ボタン)

オーナーの大前良平さん、和恵さん夫妻は関西出身。二人の出会いはインドでした。和恵さんがふらりと訪れた犬山を気に入って07年に移住。その後、良平さんも移り住み、いつかカフェを開きたいと勉強していたところ、現在の場所で営業していたカフェが閉店することになり、オーナーさんから譲り受けました。

珈琲ボタンは17年4月にオープン。6月には新たに黒猫のポポが看板猫に加わりました。ボタンたちはお散歩に出かけて会えないこともありますが、ゆっくりと街歩きを楽しみつつ、休憩や食事で立ち寄ってみたいもの。

犬山の春は、ユネスコ無形文化遺産の「犬山祭」(今年は4月7日・8日)、お城と桜を楽しむ「犬山城遊覧船」(同3月30日~4月8日)など見どころがいっぱいです。市内には、明治時代の歴史的建物などを集めた歴史テーマパーク「博物館明治村」、約70種のサルと触れ合える「日本モンキーセンター」など観光スポットも集積しています。名古屋からは、名鉄犬山線犬山駅へ快速特急で約25分。一足延ばして訪れてみませんか。

水津陽子
合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究などを行う。