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一度は見たい地層10選 日本列島の年輪刻む

NIKKEIプラス1

2018/2/18 NIKKEIプラス1

何億、何万年も大地が重なる。地層はそのまま、日本の歴史だ。
チバニアンのほかにも、ユニークな地層が各地にある。
自然が織りなすロマンに浸れる場所を、ランキングした。

■「チバニアン」で火 景勝地で存在感

「チバニアン」が注目を集めている。77万~12万6000年前の地球の地質年代の名前として、2018年にも採用が決まる見込みという。77万年前に地球の磁場が逆になったことが、千葉県市原市の地層「千葉セクション」から読み取れるためこの名が付いた。基準地の地層には連日観光客が足を運び、一躍人気スポットとなった。

泥や砂、火山灰などが層状に積み重なったもの。それが地層だ。プレートがひしめき合う日本は地殻変動が激しく、様々なタイプの地層が露出した。まさに「地層の宝庫」(日本地質学会の斎藤真常務理事)でもある。

景観のいい地層は見応えも抜群。現地を訪れると、そのスケールに圧倒される。細かく見れば「大地の歴史」を知ることもできる。見ておきたいのが堆積物の種類や大きさ。例えば凝灰岩があれば、近くで火山活動があったことが分かる。凝灰岩は火山灰でできているからだ。

今回ランクインした地層の多くは観光整備され、景勝地として有名な場所だ。船から眺めるツアーがあったり、近くに博物館があったりと楽しみ方も様々だ。

ただし天然記念物の地層もあるため、扱いには十分に注意したい。スニーカーや長靴など、滑りにくい靴は必須。足場が悪いところがあるので、革靴は避けたい。

1位 地層大切断面 720ポイント
火山灰や礫100層、横に630メートル(東京都大島町)

高さ約24メートルもの巨大なしま模様の地層が、630メートルにわたって続く。地元・伊豆大島では「バウムクーヘン」の愛称で親しまれている。100~200年に一度、大噴火が起き、それが1万5000年にわたって繰り返されたことで火山灰や礫(れき)が100層ほど積み重なっている。「もともとの地形の上に降り積もったことで独特の模様が生まれた」(小松原純子さん)

年月をかけ生まれた地層はまさに歴史年表。ただし発見はそれほど昔ではない。大島観光協会の宇佐美一直事務局長は「1953年、道路工事で削ったら出てきた」と話す。「道路沿いなので近くで観察できる」(小林政能さん)

周辺には「噴火したときに出た噴石」(長谷川直子さん)など、多くのスポットがある。「1日に多くの火山地形が見られるのもいい」(白尾元理さん)。島内には火山博物館がある。

(1)アクセス 大島バス「地層切断面」下車すぐ(2)詳細情報 http://www.izu-oshima.or.jp/(大島観光協会)

2位 須佐ホルンフェルス 520ポイント
海底の砂や泥、マグマで変質(山口県萩市)

海岸沿いに、高さ15メートルもの断崖がそびえ立つ。ホルンフェルスとは「熱などによって変成してできた岩」(緒方信一さん)のこと。海底に積もった砂や泥が、マグマの熱や圧力で性質の違う岩になった。

ホルンフェルスが間近で見られるのは珍しく、砂岩と頁岩(けつがん)のしま模様は圧巻。「ストライプはため息が出るほど美しい。夕焼けに染まると赤くなり、色の変化も楽しい」(森順子さん)

しま模様には変色して丸くへこんだ部分がある。泥や砂が地中の圧力に耐えられずつぶれた跡で、サルの顔のように見えるところもあり、探すとおもしろい。打ち寄せた波が噴き上がる場所があり、写真映えは抜群。足場が悪いところや波によってぬれることもある。備えを十分にして訪れたい。

(1)JR山陰本線「須佐」駅から車で10分(2)http://kanko.susa.in/(須佐おもてなし協会)

3位 鬼の洗濯板 495ポイント
海岸線を8キロぐるりと囲む(宮崎市)

宮崎市南東部、青島の海岸線をぐるりと囲む。約8キロメートルにわたって広がり、砂岩と泥岩が交互に重なる。デコボコになっていて「リズミカルな景観はまるで洗濯板のよう」(平田大二さん)なことから、この名が付いた。

できたのはおよそ700万年前。深い海で積み重なり、傾きながら隆起した。波によって削られ、さらに隆起することで海面に顔を出すことに。砂岩と泥岩は巨大地震で堆積したと考えられており、計算上、少なくとも数百回の大地震が起こったことになるという。

潮が引けば「上を歩くことができる」(松田博貴さん)。上に立つことで地層を踏みしめ、大地を感じることができる。「観光地なのでアクセスもよく安全。子連れでも楽しめる」(小松原さん)。車は青島の手前の公共駐車場などを利用する。

(1)JR日南線「青島駅」から徒歩15分(2)http://www.miyazaki-city.tourism.or.jp/(宮崎市観光協会)

4位 岩畳 490ポイント
パイ生地のように薄い岩畳(埼玉県長瀞町)

地下20~30キロから隆起した岩石で、パイ生地のように薄い。幅約80メートル、長さ約600メートルにわたって露出している。「ペラペラはがれる地層が平らな岩畳をつくっており、その景観は見事」(斎藤真さん)。天然記念物のため、岩を削ったり持って帰ったりするのは厳禁だ。

プレートの運動で地下深く沈み込んだ岩石が、圧力によって変化した「結晶片岩」の地層で、「ナウマン象で有名なドイツの地質学者、ナウマン博士も調査している」(小林さん)有名な場所。日本地質学発祥の地でもある。川下りも楽しめる。

(1)秩父鉄道「長瀞(ながとろ)駅」から徒歩5分(2)https://www.nagatoro.gr.jp/(長瀞町観光協会)

5位 飛水峡 450ポイント
渓谷、ジュラ紀より古く(岐阜県七宗町)

約12キロにわたる渓谷。特に飛騨川にかかる上麻生橋から上流約2キロは「飛水峡の甌穴(おうけつ)群」として天然記念物に指定されている。上麻生橋からの眺めは絶景で「流れるエメラルド色の川の美しさ、硬いチャートの力強さを両方楽しめる」(鈴木美智子さん)。

形作られたのは日本列島が大陸の一部だった2億3千万年から2億1千万年前とジュラ紀や白亜紀よりも昔。大半がチャートと呼ばれる岩石だ。「チャートは岐阜県の『県の石』で、放散虫という微生物から構成されている」(芝原暁彦さん)。

(1)JR高山本線「上麻生駅」から徒歩約10分(2)https://www.kankou-gifu.jp/(岐阜県観光連盟)

6位 屏風ケ浦 420ポイント
10キロ続く「東洋のドーバー」(千葉県銚子市・旭市)

銚子半島の南西側に、約10キロにわたって断崖が続く。約300万年から約10万年前の地層で、高さは20~60メートル。ドーバー海峡に面した白い崖になぞらえて「東洋のドーバー」とも呼ばれている。「小学校の教科書に、地層の紹介で載っている」(斎藤さん)ほど有名な場所だ。

「切り立った崖にほぼ水平な地層がどこまでも露出しており、日本とは思えないような風景が見られる」(小松原さん)。遊歩道が整備されているので間近で見ることができ、ガイドツアーもある。

(1)東関東自動車道「佐原香取IC」から国道356号線で約1時間(2)http://www.choshi-geopark.jp/index.html(銚子ジオパーク)

7位 仏ケ浦 330ポイント
立ち姿の仏 連なるように(青森県佐井村)

海岸線に奇岩が連なる。「立ち姿の仏様が海岸にたくさんいるように見える」(緒方さん)ことからその名が付いた。

ユーラシア大陸が割れて日本海ができた約2千万年前に火山が噴火し、火山灰が固まった凝灰岩でできた。凝灰岩は軟らかいため風や波で削られ、柱状にそびえるものが多い。「海の青と白い地層のコントラストが素晴らしく、極楽浄土のよう」(森さん)。4月20日からは観光船も予定されており、海上から見ることができる。

(1)佐井港から車で約30分、駐車場から徒歩約20~30分(2)http://saikanko.sakura.ne.jp/(佐井村観光協会)

8位 木の葉化石園 300ポイント
木の葉の化石が露出(栃木県那須塩原市)

木の葉の化石が露出した地層。温泉街付近にあった古塩原湖に積み重なった地層からは、植物172種、昆虫89種の化石が発見された。ウグイやカエルなどの化石も出ている。保存状態がよく、葉脈がはっきり分かる植物や、体毛が残っている動物などが見られる。

博物館のため展示物が多く「様々な種類の化石を楽しめる」(芝原さん)施設だ。「化石探し体験もできる」(平田さん)ため、子どもも喜びそう。入園料は3月末まで通常より50円安く、大人450円、小中学生250円。

(1)東北自動車道「西那須野塩原IC」から約30分(2)http://www.konohaisi.jp/(木の葉化石園)

9位 安田(あんでん)海岸 290ポイント
海の時代や陸の時代別に(秋田県男鹿市)

約50万年以上前から8万年前までの地層が連続している。海の時代にできた層にはウニの化石、陸の時代には植物の化石など、海と陸によって作られた地層が交互に続き、種類別に地層を観察できる。

「阿蘇山や中国と北朝鮮の国境にある白頭山などから飛んできた火山灰の地層も見ることができる」(鈴木さん)、「古い地層が海岸のすぐ近くにあり、砂浜に立ってじっくり観察できる」(長谷川さん)。奥の地層を見るには水深10~30センチの小川を渡るので長靴が必須。ガイド付きツアーも。

(1)JR男鹿線「脇本駅」から車で約20分(2)http://www.oga-ogata-geo.jp/(男鹿半島・大潟ジオパーク)

9位 石炭の大露頭 290ポイント
5000万年前に形成、厚さ7メートル(北海道夕張市)

1888年に発見された石炭層で、約5千万年前のもの。石炭を含む地層が積み重なっており、その厚さは合計約7メートルと、全国でも例を見ない大きさだ。夕張の炭鉱開発における出発点で、日本の近代化を支えた歴史的な地層ともいえる。

「石炭層が容易に観察できる、唯一と言っていい場所。地層と経済活動を学ぶ格好の地点」(松田さん)。坑道内を見られる石炭博物館が隣接しているが、現在は工事中。大露頭だけを見ることも可能だ。博物館は4月28日に再オープンする。

(1)JR石勝線「夕張駅」から車で5分(2)https://www.city.yubari.lg.jp/kanko/index.html(夕張市)

◇  ◇  ◇

ランキングの見方 数字は選者の評価を集計し、点数化。地層名(所在地)。(1)アクセス(2)詳細情報など。写真は1位、2位、3位瀬口蔵弘撮影。ほかは地元観光協会や行政など提供。

調査の方法 地質学などに詳しい専門家や地層が好きな専門家への取材を基に、24の地層をリスト化。景観が美しい、一度は見ておきたい、交通アクセスがいいなどの観点から1~10位まで順位をつけてもらい、編集部で集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。

▽緒方信一(中央開発株式会社)▽小林政能(日本地図センター「地図中心」編集長)▽小松原純子(産業技術総合研究所)▽斎藤真(日本地質学会常務理事)▽芝原暁彦(地球科学可視化技術研究所所長)▽白尾元理(写真家)▽鈴木美智子(ジオガシ旅行団)▽長谷川直子(お茶の水女子大学准教授)▽平田大二(神奈川県立生命の星・地球博物館館長)▽松田博貴(熊本大学教授)▽森順子(地理女net代表)

[NIKKEIプラス1 2018年2月17日付]

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