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自動翻訳も 無線ヘッドホンはスマホ連携で賢く進化 西田宗千佳のデジタル未来図

2018/2/14

ソニーの無線イヤホン「WF-1000X」

 ヘッドホン市場の主流になった「ワイヤレス」。ケーブルがなくなって自由になることだけが魅力ではない。スマートフォン(スマホ)との連携によって賢くもなっているのだ。ノイズキャンセリングをシチュエーションに合わせて自動的に調整したり、自動的に聞こえる外国語を翻訳したりと、その機能は格段に広がっている。

■ワイヤレスで「インテリジェント」になる

 調査会社のGfKジャパン(東京・中野)によると、ワイヤレスヘッドホン・イヤホン(Bluetooth対応ヘッドホン・ヘッドセット)の売り上げは数量ベースで前年比45%増、金額ベースで79%増(17年1~11月)。すっかりヘッドホンの主流になった。

 ワイヤレスヘッドホン・イヤホンは常時スマホとBluetoothで通信している。そこで、スマホと連携してより賢く使おうという動きが始まった。

 現在、ミドルクラス以上のBluetoothヘッドホンのメーカーは必ずスマホアプリを用意している。筆者の手元にあるものだけでも、ソニー、BOSE、Jabra、Bowers & Wilkins、JVCと、名の知れたオーディオメーカーのほとんどがアプリを用意していた。

BOSEのヘッドホン用アプリ「BOSE Connect」ノイズキャンセリングのレベルなどを設定できる
イヤホンのファームウエアもスマホからアップデートできる

 アプリの機能は音質の調整や設定の変更。ヘッドホン本体のボタンで設定や調整するよりも、スマホアプリでするほうが簡単になっている。

 ワイヤレスヘッドホンを使っていても、アプリはダウンロードしていない……という人も意外と多い。ユーザーであればぜひ使ってほしい。

■スマホのセンサーを使って「賢く」自動設定

 単に、ヘッドホンのボタンの代わりにスマホアプリを使うだけではない。もっとスマホの側の能力を生かすところまで発想が進み始めている。

 ソニーは、ハイエンドヘッドホン「1000X」シリーズの17年秋発売以降の新機種から「アダプティブサウンドコントロール」という機能を搭載した。

「アダプティブサウンドコントロール」に対応した無線ヘッドホン。左から「WI-1000X」、「WF-1000X」「WH-1000XM2」

 この機能は、利用者の行動にあわせて、自動的に1000Xシリーズの持つノイズキャンセル機能と「外界音取り込み機能」を調整するものだ。

 例えば、歩いたり走ったりしているときは、音楽で外界の音を完全に遮断すると危ない。ある程度のノイズキャンセルは欲しいが、自動車のロードノイズまで完全に消えると、事故の恐れが増す。電車に乗っているときはノイズキャンセルを最大にかけたいが、電車のアナウンスが全く聞こえないのは困る。机に向かって集中して作業しているときは、音楽とノイズキャンセル機能で外とは隔絶されたい……。

 どんな環境を望むかは人によって異なると思うが、「自分の行動」によって望む環境が違うのは間違いない。そこで、スマホアプリがスマホのセンサーから行動を把握することで、ヘッドホンの側の設定を自動調整しようというのが、アダプティブサウンドコントロールの正体である。スマホのモーションセンサーとGPSを使えば、それを持っている人が「歩いている」のか「走っている」のか、「電車で移動中」なのか「止まっているのか」をかなり正確に把握できる。その情報を使って自動的にスマホアプリがヘッドホンをコントロールするのだ。

 ヘッドホン自体をインテリジェントにするアプローチもある。ドイツのメーカーであるBragiの「The Dash Pro」は、内部に32ビットのプロセッサーを内蔵し、音楽ファイルの再生や心拍数・消費カロリーなどの記録の他、頭の動きによるジェスチャー操作もできる。ヘッドホン自体にプロセッサーを積んでインテリジェントにしているが、この製品も、設定やファームウエアのアップデートなどにはスマホアプリを使う。ワイヤレスヘッドホンのインテリジェントな進化はスマホなしには語れないのだ。

Bragiの「The Dash Pro」

■新たなトレンドは「音声アシスタント連携」

 もうひとつ、18年のトレンドになりそうなのが「音声アシスタント連携」だ。

 Googleアシスタントは、スマホやスマートスピーカー「Google Home」で使われている音声アシスタントであり、音声で問いかけることで、ちょっとした質問に答えてくれたり、各種機能を呼び出したりできる。

 スマホからGoogleアシスタントを使いたいときは、スマホを操作する必要があった。だが「Googleアシスタント連携」機能を持ったヘッドホンを使うと、スマホを取り出す必要はなくなる。ヘッドホンに設けられた「アクションボタン」を押すことでスマホ内のGoogleアシスタントが呼び出され、音声での操作ができる。スケジュールの設定やプレイリストからの音楽の再生、天気などの確認ができて、意外と便利である。

 この機能は、17年に発売されたBOSEのワイヤレスノイズキャンセルヘッドホン「QuietComfort35 II」から搭載が始まったものだが、今年はソニーも対応を予定しており、前述の「1000Xシリーズ」新機種もソフトウエアアップデートで対応するという。技術的には対応は難しいものではないそうで、多数のヘッドホンがGoogleアシスタント対応を打ち出してくると予想される。

Googleアシスタントに対応したBOSEの「QuietComfort35 II」

 実はすでにアップルが自社の音声アシスタント「Siri」で似たような機能を実現している。iPhoneに対応したヘッドホンから、Siriを呼び出して命令できる。例えば「AirPods」では、耳に入れているイヤホンを2回タップするとSiriが呼び出せる。ヘッドホンでのGoogleアシスタントの対応はAndroidを採用しているスマホで利用可能であり、音声アシスタントの利便性拡大であると同時に、アップルへの対抗策、という部分もある。

 また、前述のBragi「The Dash Pro」はアマゾンの音声アシスタント「Alexa」に対応している。

 これらの中で、Googleアシスタントの有利な点としては「自動翻訳」を想定しているところが挙げられる。Googleが17年から米国で販売しているヘッドホン「Pixel Buds」は、同社のスマホ「Pixel 2」と組み合わせることで「リアルタイム自動翻訳」ができる。もちろん精度は完璧ではないし、翻訳時にはスマホを相手に向けなければいけない(スマホのマイクから相手の声を拾って翻訳するため)こと、現状はPixel 2との連携でしか使えない(そのため、Pixel 2を販売していない日本では使えない)などの欠点があるが、「ヘッドホンのインテリジェント化」としては、非常に興味深い動きである。

GoogleのPixel Budsはスマホ「Pixel 2」と連係してリアルタイムに翻訳できる(写真提供:Google)

 スマホという知能と通信手段を手に入れたことで、ヘッドホンは音を流すだけの存在ではなくなりつつあるのだ。

西田宗千佳
 フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。

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