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石川県民愛用の「とり野菜みそ」 首都圏で勢力拡大中

日経トレンディネット

2018/2/13

人気漫画家・東村アキコ氏とのコラボで2017年から発売している「東村アキコみそ鍋革命セレクトセット」(税込み2624円)。東村アキコ氏が選んだ、5種6袋が詰め合わせになっており、まつやオリジナルのマウスパッドも付属する
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 ここ最近、首都圏のスーパーや量販店でよく見かけるようになった「とり野菜みそ」という鍋スープの素がある。ややレトロなイラストのパッケージが特徴で、人気漫画家・東村アキコ氏が出演するCMも放送中なので、見たことがある人もいるかもしれない。このとり野菜みそを作っているのは石川県かほく市の食品メーカー「まつや」。石川県で鍋といえば、とり野菜みその名がまず挙がるほど、県内では人気が高いのだという。この「謎のみそ鍋」が県民に支持される理由、さらに首都圏で急激に勢力を伸ばしている理由を探った。

まつやの「とり野菜みそ(200g)」(税別290円)

■とり野菜みその「とり」は「鶏」ではない

 まつやの松本啓志社長によると、とり野菜みそのルーツは江戸時代までさかのぼる。廻船問屋を営んでいたまつやの初代当主が乗組員のために調合みそを考案。魚や野菜を入れて鍋で煮込んだところ、野菜がたくさんとれると喜ばれたという。「その後、松本家の家庭の味として代々受け継がれてきた」(松本社長)。

 とり野菜みそというネーミングからてっきり鶏肉を使うみそ鍋かと思ったが、「とり」は鶏肉ではなく、野菜や栄養を「取る」という意味だという。1973年に松本社長の父親(現・松本啓治会長)が鍋の素として袋詰めしたものをスーパーなどに卸すようになったのがきっかけで、石川県全体に広まった。

 まつやが全国展開戦略を開始したのは、2015年の北陸新幹線開通がきっかけだという。とり野菜みそが石川県民に十分認知され、県内ではこれ以上拡大することはないと考えていたところ、「北陸新幹線が開通し、石川県の地場産業が多くのメディアに注目されるようになった。このタイミングをチャンスと捉え、販売地域の拡大に着手した」と松本社長は振り返る。

 まず2015年に味噌文化が根付いている中京地区に進出し、八丁味噌以外の味噌を取り入れられるかを探ったという。2016年には関西と東海、2017年にはほぼ全国に販売エリアを拡大。それにつれてCMの放映エリアも広がったが、「CMは認知度を上げるためのもの。売り上げに結びつけるには味を知ってもらうことが大切」と、試食販売を各地で精力的に行った。

マルコメは2016年9月からまつやと協業し、とり野菜みその販売を開始。「まつや とり野菜みそ(340g)」(左)、「まつや ピリ辛とり野菜みそ(340g)」(右)

 2016年9月からはマルコメと販売提携を結び、中身はそのままにスパウト(注ぎ口)を付けたパウチタイプ2種類をマルコメから発売している。「自社の営業網を活用し、西日本だけでなく全国へ広めて行きたい」と、マルコメ コミュニケーションデザイン部 広報宣伝課の尾田春菜氏は意気込む。

 さらに若い層を取り込むため、2017年夏から漫画家の東村アキコ氏をCMに起用。東村氏が石川県内の大学出身であり、大のとり野菜みそ愛好者であることを知り、出演を依頼したのだという。CMにより認知度がアップしたためか、売り上げは前年同月比より2~3割程度増えたという。

■コラボに積極的 あのランチパックまで!

 コラボ商品にも積極的だ。豆乳・みそ関連商品を数多く展開しているマルサンアイ(愛知県岡崎市)は2012年からとり野菜みそとのコラボ商品を展開。現在4商品を販売している。「マルサンアイの鍋スープシリーズのなかでも上位に入るヒット商品。売り上げは前年同期比で10%以上伸びている」と同社開発統括部 商品戦略室 ブランドマネジメント課の深津博美氏は話す。2017年9月に山崎製パンから「ランチパック みそ&たまご(とり野菜みそ使用)」を発売するなど、「コラボ商品は累計で50種類くらいはある」(松本社長)。現在は誰もが知っている有名商品とのコラボ食品の開発が進行中で、2018年秋ごろに発売になる予定だという。

2012年からマルサンアイが発売しているコラボ商品「とり野菜みそ 豆乳鍋スープ(720g)」
2013年9月から販売されている、とり野菜みそとのコラボの即席カップラーメン「イトメン とり野菜みそらーめん」。毎年9月~翌年3月までの期間限定商品だが、累計で約66万個売れているという

 とり野菜みそについて分かったところで、鍋を作って食べてみることにした。同社の公式サイトにはCMにも出演する東村アキコ氏のエッセイ漫画が掲載されており、そのなかで東村氏が「袋の裏面にある説明通りに作ることが大切」と力説している。「豚バラ肉を鍋スープが冷たいうちに投入する」という説明に従って、とり野菜みそで鍋を作ってみた。すると、コクとうまみにあふれた鍋に! とり野菜みそにハマる石川県民の気持ちが理解できた。

 東村氏がエッセイ漫画のなかで何度も「味の奥行きがすごい」と表現していたのは、鍋スープ自体の主張が強くなく、具材同士が融合して重層的に味を引き立て合っているからなのだろう。

 とり野菜みその味で一番大事なのは「おいしくしすぎないこと」と松本社長は話す。「鍋の素の完成度を高めすぎると、特定の食材しか合わないようになる」(松本社長)。どんな食材にも合うよう、ここ10年ほどの間にも数回、味の微調整をしているそうだ。

袋の裏面には「本品と水を入れ溶かし」「具を入れてから火にかける」と書いてある。指示通りに作ったとり野菜みそ鍋は絶品だった。東村氏によると「バターを加えるとさらにおいしい」とのこと

 鍋の素のトレンドはバラエティー鍋ブームが終わり、定番に回帰。だが、定番は差異化が難しいため、今度はだしに特化するなどして完成度を高める方向に向かった。トレンドが変わりやすい市場環境で「鍋の素といえばこれ」という強いブランドが存在せず、同じ味なら価格の安いほうを選ぶという流れができている。

 そんななか、とり野菜みそは鍋の素市場で数少ない、指名買いされているブランドといえる。コラボ商品が多いのもブランド力が強いからだろう。とり野菜みその快進撃はまだまだ続きそうだ。

[日経トレンディネット 2018年1月17日付の記事を再構成]

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