最大のきっかけのひとつが、マウントアダプターという変換リングをつけることで、ほぼ全てのデジタルカメラに装着可能になったことだ。特にミラーレス一眼との相性がよく、フィルム用レンズを、あえてデジカメに装着することで、写真に新しい表現が加わったのである。

もちろん、純正レンズではないので、ピント合わせのためのマニュアル操作など、手間はかかる。しかし、クラシック・レンズの表現力は、マルチコーティングされた最新レンズにはない、自然な発色やコントラスト、ボケ味の心地よさがある。これもある種の“レトロフューチャー”的な楽しみ方なのだろう。

■陰影を感じ取り、生活を豊かに

最近は、見た目のファッション性の面白さもあって、中古市場でレンズを探し、デジタルカメラに装着する若いファンが世界規模で急増。いわゆるオールド・レンズのブームが到来したというワケだ。そのあおりをうけて、中古レンズ市場も玉不足なのだとか。

ちなみに、変換アダプターはLマウントやMマウントだけでなく、シネマ用8ミリや16ミリのCマウントなどのレンズにも対応できる。もしかしたら、押し入れで寝たままのレンズだって、息を吹き返すに違いない。そこは昔取ったきねづか、かつて愛用したレンズの表現力を、よみがえらせてはいかがだろうか。

それは同時に、デジタル画像や発光ダイオード(LED)照明の刺激でまひした眼力を、鍛え直すチャンスかもしれない。いい意味でも悪い意味でも、現代は光のコントラストが強すぎる。谷崎潤一郎の「陰影礼賛」ではないが、もともと人間は、ほのかな陰影を感じ取り、生活を豊かにする潜在能力を持っているのだ。

ちなみに、この連載の写真を撮影する藤田一浩さんは、フィルム・カメラしか使わない。デジタルでは出ない光のニュアンスや粒状性を、感じ取って頂いているだろうか?

なかむら・たかのり
コラムニスト。ファッションからカルチャー、旅や食をテーマに、雑誌やテレビで活躍中。近著に広見護との共著「ザ・シガーライフ」(ヒロミエンタープライズ)など。

[日経回廊 7 2016年5月発行号の記事を再構成]

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