女優・西尾まりさん 父母の働く姿に多くを学んだ
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は女優の西尾まりさんだ。
――3歳で子役デビュー。仕事を始めたきっかけは。
「幼少期、きつ音がありました。親が医師に相談すると『子どもが大勢いる場所で楽しいことをやるといいかも』と言われ、たまたま近くにあった児童劇団へ。女優にとか、そういう気持ちは私も親も全くなかったです」
――いわゆるステージパパ、ステージママではない。
「全然違いますね。実家はクリーニング店。両親共に働いていたので、仕事の現場への送り迎えや、オーディションに同行はしてくれましたけど。劇団のお稽古の帰り道、母とレストランで食事ができるのが楽しみでした」
「子どもがテレビに出るのはうれしかったようです。VHSのビデオデッキは他の家庭よりも早く家にありました。お客さんから『娘さん、テレビに出ていたよ』とか言われると、父は『みんな見てるんだな』と喜んでいました」
――父親はどんな人?
「客商売なので会話は上手。奥様がたの転がし方も上手だったと思いますけど、娘には甘い方だったかな。母が瞬間湯沸かし器でカッとなる方だったので、バランスをとっていたのか、小言程度。とにかく仕事で疲れていて、寝ている姿の印象が強いです」
「釣りが好きで、仕事が遅く終わった後も、休日は夜中から出掛けていました。そんな時、母は幼児の私を、おむつと一緒に車に詰め込んでいました。寝かしつけがてらですね。小学生ぐらいまでは一緒に釣りをしたり、沢ガニをビールの缶に入れて空揚げにしたり。私も釣り好きです」
――母親はどんな人?
「本当に変わっています。親子なのに『ごめんください』と言って電話を切るとか。他の役者さんに『いつもお世話になっています』と言えばいいところを『こんなくだらない娘をありがとうございます』とか」
「娘が言うのも何ですが、きれいな人。NHKの大河ドラマの撮影に付き添った時に『女優になりませんか』と誘われたそうです。でも、さすがにそれはどうでしょう」
――自身も2児の母。両親の子育てから学んだことは。
「言葉ではなく、働きながら子育てする姿に教えられた気がします。小学生の息子に『何でいつも家にいないの』と言われると『ご飯や電気、水道も全部、働いたお金のおかげなの』と話すのですが、私自身は親にそういうことを言われた記憶がありません。働いている親を見て、勝手にそう思い、育ってきたのかな。私も働いている姿を見せられればいいのかな、と思うようになりました」
――最近は舞台活動も多い。息子に見せたいですか。
「そうですね。なかなか子どもが見られるような舞台に出ていなかったですが、この前初めて見に来てくれて。ちょっと照れくさそうでした」
[日本経済新聞夕刊2017年12月26日付]
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