2017/12/26

育休は個人を成長させる CRAZYの森山和彦社長

――CRAZYの森山社長は17年7月、創業者で妻の山川咲さん(34)の出産に合わせて、約1カ月の育休を取ったそうですね。育休を取得して、率直にどう感じましたか。

「育休は体験しないと理解できないと痛感しました。期間中、週に2日は出社しましたが、それ以外は妻が出産した広島まで通う日々でした。現地でも空き時間があると、ちょっと仕事をしてしまったのですが、子どもが泣くと集中が切れて全く仕事が進まない。働くパパママの大変さは、体感しないと理解できません」

森山和彦(写真中央)
CRAZY社長。1982年生まれ、35歳。中央大学卒業後、人材コンサルティング会社に入社。その後独立し、妻の山川咲氏とともに2012年7月にCRAZYの前身であるUNITEDSTYLEを創業。完全オーダーメードがコンセプトのウエディングサービス「CRAZY WEDDING」を手掛ける。

――普段の仕事と育児の違いを感じた。

「そうですね。できないことも多い。経営者として一番嫌う社員は『指示待ち族』です。『手伝うことがあれば言って』『何かできることある?』。自分の目で見て状況を把握し、やるべき仕事を見つけて自ら動く。こういう社員であってほしい。ところが、いざ育児となると、経営者でも指示待ち族になってしまう。そうなりたくないと思いました」

――育児は自分の領域でないという感覚が男性にはあるのかもしれません。

「日ごろから指示待ち族ではダメだと言っている経営者こそ育休を取ってみるべきです。私は妻に対して、自分なりにやるべきことを見つけて動くけれど、できていない部分があれば教えてほしいと伝えて理解を得ました」

――育休を取る、あるいは復帰して育児をしながら働くというのは同僚や組織に負荷をかけると思われがちです。そうしたとらえ方が男性の育休取得を阻んでいるとも考えられます。

「そんなことはありません。育休は個人を成長させる絶好の機会ではないでしょうか。当社では、育休明けの社員をあえて出世させた事例も複数あります」

――仕事の負荷を減らすのではなく、あえて負荷を掛ける?

「負荷を掛けたいわけではありません。マネジメントに向く経験をしたと判断したからです。育児を通して、人の視野はものすごく広がるんです。これまで個人の仕事の範囲を決めていた社員をマネジャーに登用したら、ものすごく成長しました。目の前の自分のことだけではなく、周囲をよく見通せるようになる。育休明けこそ、成長するチャンス。ただ、職場環境の整備をセットに考えないといけません。復帰する社員がより働きやすい環境をつくるにはどうすればいいか。それを経営者は考えて整備すればいいのです」

――CRAZYは社内に託児スペースがあり、シッターが常駐、子連れ出社が可能ですね。

「この環境は当初からあったわけではありません。創業メンバーが出産を機に職場から離れたことがきっかけです。復職を考えた時期はお子さんが生後6カ月の時でした。どうしても復帰してほしかったので、専属のシッターをつけることを経営会議で決めたのです。大切な仲間がどうしたら戻って仕事をしやすい環境になるか。それを話し合って作り上げました」

――CRAZYには社員全員でランチを食べる習慣があり、子どももいる。まるで大家族のような会社ですね。

「これまで地域が担ってきた子育てのコミュニティーが崩壊しつつあります。では誰が担うのか。その答えの一つに『会社』があってもいいのではないでしょうか。会社全体で子どもの成長を見守る。子育ての機能について、会社がもっと拡張すべきだと思います。まだ結婚をしていない社員にとっても、子どもに触れ合う機会をつくるのはプラスに働くと思います」

「当社では創業時から社員全員で一緒にランチを食べるようにしていますが、栄養価の高い昼食を用意しています。これは投資です。社員が健康でいるための投資なのです」

――費用負担は決して少なくないと思います。

「国や自治体が税金を使って社会保障や地域の暮らしやすさを整備するのと同じで、会社の中でも働きやすい環境を整備する税金のような存在が必要だと考えます。現状では当社売上高(約15億円)の5%程度(約7000万円)を社員の昼食代やベビーシッター代として出しています。安心して健康に働く。数値化は難しいかもしれませんが、この投資は中長期的に会社に返ってくると思う」

――安心して働ける職場環境が大事?

「ただ安心させるだけではいけません。良い環境だと思われがちですが、結果については厳しく見る。ただ優しい会社では組織としての成長は難しいですから。成長の機会を提供する。これも大事です」

――CRAZYのような職場環境の広がりに期待する声は大きいのでは。

「連日のように、会社見学に来る人がいます。当社が掲げるスローガンに『フューチャーサンプルを創ろう』があります。社会が解決できない課題に対し、今までにない形で解決法を考えて世に提示する。今の職場環境もその一つです。ただこれはアンサーではありません。全社に適合するアンサーなど存在しませんから。提示するのはあくまでサンプルです。こんな解決法もあって良い。それを感じてもらい、それぞれの集団の中での解決法を探していくのが、あるべき姿だと思います」