日経Gooday

2017/12/25

from 日経Gooday

また人間は本来、昼行性の動物であり、日中に活動して夜間に睡眠をとるという活動の概日リズムを有しています。人間の活動の概日リズムは、季節の影響を受けることが知られており、日照時間が長く、気温が高い夏季には睡眠時間が短くなり、その逆の冬季には夜間睡眠時間が延長する傾向があります[注1]。つまり12~2月の極寒期は、健康な人であっても環境ストレスのため疲れやすく、生体リズム的にも睡眠時間がよりしっかり必要となり、睡眠が不足すると通常以上に疲れもひどくなりやすいのです。これらを考慮すると、冬季は十分に睡眠と休息をとり、普段より「ゆったりめの活動モード」に本来は切り替えるべきだといえるでしょう。

[注1]白川修一郎ら. 日本人の季節による気分および行動の変化.精神保健研究. 1993;39:81-93.

冬うつ予防のための4つの工夫

しかしながら日本のビジネス界では、年末年始から3月の決算期にかけては「ゆったりモード」とは真逆で、「ガンガン活動モード」に拍車がかかっていくという社会構造となっています。そんな本来の生体リズムに反した過酷な環境のなかで、働く人が心身の調子を崩すことなく、元気に乗り切るためには「とにかく疲れをためない」という自覚と工夫が必要です。私が産業医としてこの時期によく行っているアドバイスをご紹介しますので、ぜひ役立ててください。

【1】睡眠負債をためない

一時的に睡眠不足になっても、数日のうちに取り戻したい(c)subbotina -123rf

冬場の睡眠不足は免疫を落とし、ウイルス感染や体調不良に直結します。最低でも6時間以上の睡眠を毎日確保しましょう。急ぎの仕事などで睡眠がどうしても不足してしまったら、できるだけ数日のうちに睡眠の借金を返すつもりで、しっかり睡眠をとりましょう。睡眠負債は早めに解消しないと、ため過ぎると返済できなくなり心身の不調を引き起こしてしまうので要注意です。

【2】バランスのとれた食事を実践する

疲労回復効果が高い肉、魚、卵といった動物性たんぱく質と、風邪予防効果の高いビタミン・ミネラル豊富な緑黄色野菜・果物などを1日最低2食はしっかり摂取しましょう。炭水化物もほどよくとらないと体温がスムーズに産生されません。冬場に過激で極端なダイエットは体力を消耗するのでご法度です。ダイエットをするなら極端にバランスの欠いた食事法や激し過ぎる運動で急激に体重を落とすことは避け、体やメンタルに負担がかからない安全で無理のない方法を選んでください。

【3】冬場の外出時には体力を温存する工夫を

年末年始や冬場の土日は、体力的に負担のかかる激しいレジャーや遠出は控えめに。もしスキーやマラソンなど体力を使うレジャーや、遠方への旅行や帰省をするときは、休日の最終日ギリギリまで使わずに1日(最低でも半日)は自宅でゆっくり過ごせるように調整し、体力回復日を設けましょう。

【4】日光浴をこまめに行う

屋内で仕事をしている人はただでさえ日照不足になりがちで、冬にはさらに日照不足が加速してしまいます。休憩時間には屋外や窓辺で日光をしっかり浴びて体内時計の乱れを予防しましょう。その際にストレッチを行うと全身の血の巡りがよくなり、さらに自律神経を整える効果が期待できます。今注目されているマインドフルネス瞑想もぜひストレッチとともに活用してみてください(詳しくは第17回「オフィス疲れに 簡単マインドフルネス・ストレッチ」をご覧ください)。

日本のビジネスパーソンの皆さまが極寒期もベストな体調と気力をキープして、新しい年もより実り多いご活躍をされますように、引き続き本連載でも応援させていただきたいと思います。

奥田弘美
 精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内20カ所の産業医として働く人を心と体の両面からサポートしている。著書には「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及も行っている。
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