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「過労」はサイレントキラー 体力がある人ほど注意

こちら「メンタル産業医」相談室(5)

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日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

花の香りに風ぬるむ今日このごろ、皆さまの心と身体はお元気でしょうか? 精神科医の奥田弘美です。今日は前回の「危険な『睡眠不足』 こんな兆候は要注意!」に引き続き、長時間労働をテーマにお話ししたいと思います。

前回は、長時間労働によって睡眠不足が続くと睡眠の負債(借金)がたまり始めるとともに、パフォーマンスの低下やアクシデントの原因になることを主に話しました。また良質な睡眠をとって疲労を回復させるためには、正味の睡眠時間だけではなく、心身の緊張を解きスローダウンする時間が重要であることについてもお伝えしました。

実は我が国の労働法には、このような睡眠をはじめとする医学的知見も加味されていることはご存じでしょうか?

俗に36(サブロク)協定といわれる「時間外・休日労働に関する協定届」があります。これは労働基準法第36条が根拠となっている協定で、第36条では「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労使で書面による協定を締結しなければならない」と定められています。そのため雇用している労働者がたった1人であったとしても、雇用者は、法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合、この届け出が必須となります。あなたの職場でもきっとこの協定が締結されているはずです。

月45時間の時間外労働が、健康を維持できる残業ライン

この36協定さえ届け出るといくらでも残業させられるのかって? いやいやそんなことは絶対にありません。「時間外労働の限度に関する基準」(労働省告示)により、延長時間の上限がしっかり定められているのです。

・1カ月の場合は45時間

・1年の場合は360時間

というのが限度基準です。

この36協定の月45時間以内という基準は、健康的な睡眠時間や心身をスローダウンする時間も考慮されており、精神医学上も非常によく考察された合理的な基準だと思います。

1日24時間のうち、法定労働時間が8時間、昼休憩が1時間、そして平均的な通勤時間が1時間、食事や入浴、身支度、家族との団らんなどの生活時間を最低限で4時間とみなした場合、残りは10時間。この10時間の中で7~8時間の健康的な睡眠をとるためには、残業できる時間はおのずと1日2~3時間ほどになります。通勤に1時間以上かかる人もいるでしょうし、睡眠に8時間必要な人もいるでしょうから、万人が無理なく残業できる時間は1日2時間程度となります。つまりひと月で考えると、36協定の45時間におおむね一致するのです(※ただし、36協定に特別条項を付帯すれば月45時間を超えて年間6カ月まで時間外労働させることができます。この特別条項は、長時間労働の悪因として医学的にも非常に問題であり、早急な検討が望まれます)。

また、脳・心臓疾患による過労死の労災認定基準については、様々な疾病の統計データから「発症前1カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たり平均45時間以内の時間外労働は発症との関連が弱いが、45時間を超えて長くなるほど関連性は強まる。発症前1カ月間に100時間、または2~6カ月間平均で80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強い」などの目安が示されています[注2]。つまり月45時間の時間外労働が、医学的にも労働衛生学的にも「健康をおおむねキープして働くことができる残業ライン」と考えることができるのです。

[注2]脳・心臓疾患の労災認定 -「過労死」厚生労働省

繰り返しますが、月45時間の時間外労働というと、単純計算では1日2時間程度の残業となります。あなたの残業時間はこの範囲で納まっているでしょうか?

おそらく多くの方がこの45時間ラインを大幅に超えているのでは?と危惧します。2017年2月中旬、政府は「働き方改革実現会議」において、罰則付きで時間外労働の上限設定を最大で月平均60時間、年間720時間までとするなどを柱とする上限規制案を提示しました。まだまだ45時間ラインには近からずといったところですが、併せて「勤務間インターバル制」を導入した中小企業には助成金を与える制度の導入を検討しているのは良い兆しといえるでしょう。

勤務間インターバル制というのは、時間外労働を含む1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバル時間を設ける制度です。欧州連合(EU)加盟国ではすでに導入されていて、このインターバルを11時間としています。繁忙期で残業が多くなり深夜に帰宅したとしても、翌朝は11時まで出社しなくてもよいとなると、健康の要となる大切な睡眠時間が確保しやすくなるので、医学的にも理にかなった制度だと思います。私が担当している企業にも、ぜひ導入を検討されるようにと勧めているところです。

睡眠負債や疲労が蓄積すると、体はどうなる?

さて睡眠負債と疲労に話を戻しますが、長時間労働が続いてスローダウンの時間が消失し、睡眠の負債がどんどん蓄積していくと、当然ながら体にも心にも疲れがどんどんたまってきます。

この疲れの蓄積、すなわち「過労」は非常に怖い健康被害を生み出します。医学知見に私の産業医としての経験も加味しながら、その恐ろしい健康被害を列挙してみたいと思います。

まず疲労がたまり始めると、初期症状として次のような状態が現れやすくなります。

【疲労がたまったときの初期症状】

○夜遅くに食事をとるようになると、睡眠が浅くなるため朝の寝覚めが悪くなる。また、朝に胃もたれが残り朝食を抜きがちとなるため、午前中の仕事の能率が落ち始める。

○疲れのため代謝が悪くなり、体の重だるさが連日とれなくなってくる。

○記憶力・ヒラメキ力が低下する。機転が利かなくなる。そのためうっかりミスや初動の遅れが出始める。

○精神状態が不安定となりイライラや不安が高じやすくなり、仕事やプライベートの人間関係がぎくしゃくしてくる。

○夜になっても仕事のことが頭から離れなくなり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなって夜に何度も起きたりと睡眠の質が劣化し始める。

さらに疲労の蓄積が長期間にわたって高じていくと、次のような深刻な症状が表れます。

【疲労が長期にわたって続いた場合の症状】

○全身倦怠感がひどくなり、頭も体もボーっとして思うように働かなくなる。仕事の効率は大幅に低下する。また大小様々なミスや人間関係トラブルがしばしば発生する。

○食事を楽しむ気力がなくなり、食欲が低下してやせてくる。

○免疫機能が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなる。

 →長期的にはがんを発症しやすくなる。

○糖尿病、高血圧、心臓病、脳血管障害になるリスクが高まる。

 →最悪の場合は過労死。

○自律神経の働きが崩れ、動悸(どうき)、めまい、胃腸障害など体調不良が本格化してくる。

○正常な思考力、判断力が低下し前向きな発想ができなくなる。本格的な不眠症やうつ病が発生する。

 →最悪の場合は自殺。

このように疲労の蓄積がもたらす恐ろしい悪影響は枚挙にいとまがありません。しかもこれは男女の別なく、誰にでも起こり得るれっきとした医学的な事実なのです。

過労は「サイレントキラー」

さらに恐ろしいことに、過労はいわば「サイレントキラー」です。本人が気付かないままじわりじわりと疲れが蓄積していき、元来が丈夫で健康な人ほど決定的な症状が出てくるまで時間がかかります。そのためぎりぎりの状態になるまで気付かない人も多く、実際、過重労働面談をしていると、体力や気力がなまじある男性ほど、先述の過労の初期症状が起こっていても無頓着でまったく気付いていないとことがよくあります。

そして最も怖いのが「過労死」です。疲労が高度に蓄積すると、何の持病も持っていなかったはずの人が急に不整脈、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞といった致命的な病気を発病して頓死してしまうことがあるのです。

そんな事態を防ぐためには、働く人自身のセルフケアだけではなく、経営者や管理者の安全配慮に対する意識改革が大変重要になってきます。次回は主に経営者や管理者が知っておかねばならない重要事項についてお伝えしたいと思います。

奥田弘美
 精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家。1992年山口大学医学部卒。精神科臨床および都内18カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わっている。執筆活動にも力を入れており「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「一流の人はなぜ眠りが深いのか」(三笠書房)など著書多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ、日本人にあったマインドフルネス瞑想(めいそう)の普及も行っている。

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