内村光良さん 53歳の「現役力」に学ぶ理想の上司像
早いもので2017年も残すところあと少し。やはりこの時期になると、毎年恒例の風物詩『紅白歌合戦』を取り上げないわけにいきません。
注目の総合司会はウッチャンナンチャンの内村光良さんとNHKの桑子真帆アナウンサー。紅組司会を昨年に続き有村架純さんが、白組司会を嵐の二宮和也さんが務めます。
総合司会を務める内村さんはマスコミ合同取材会にて「今年最後の仕事ですし、しっかり務めたいなと思っております。この2人と桑子さんと、4人で紅白歌手の皆さんをバックアップしていきたいと思います」とコメントしていました。
この「4人で紅白歌手の皆さんをバックアップしていきたい」という控えめな言葉がいかにも内村さんらしいですし、4人の顔ぶれを見ても、圧迫感のない癒やし系チームが結成されたなぁという印象を持ちます。
「理想の上司」ランキングで1位
内村さんといえば、数多くの人気バラエティー番組を背負って立つ、日本を代表する大物芸人の一人。ですが、不思議と我の強さは感じられず、むしろ親しみやすさや愛らしさが前面に出てくる芸人さんです。
その人柄はビジネスパーソンにも認められていて、2月に発表された明治安田生命保険発表の「理想の上司」ランキング男性編で、内村さんは見事1位に輝いています。その主な理由は「親しみやすさ」「優しい」「実力がある」ということでした。
内村さんは53歳。ビジネスの世界で53歳といえば、管理職世代です。自身がMCとして仕切り役を担当する『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)や『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)、『スクール革命!』(日本テレビ系)などの番組では、しっかりと存在感を示し、リーダーシップを発揮しています。
そのリーダーシップは、内村さん自身がプロデューサーとなり、毎週独自の手法とコンセプトでさまざまな企画にチャンレンジしていた番組『内村プロデュース』(テレビ朝日系で2000年4月~2005年9月放送)の頃に培われたようにも感じます。
『内村プロデュース』は、毎週、まだ人気者になっていない若手や中堅のお笑い芸人さんたちを続々と起用し、練り過ぎず作り込み過ぎない企画に挑戦、芸人さんたちが繰り広げる自然体のトークやリアクションを楽しむ番組でした。
気負わずに見られるこの番組は、深夜の放送であったにもかかわらず、熱心な視聴者を獲得していました。今や人気番組のMCを務めているくりぃむしちゅーさん、さまぁ~ずさん、有吉弘行さん、バナナマンさんなどは、この番組をきっかけに人気上昇に勢いがつき始めたともいえるでしょう。言い換えれば、内村さんが主役として旗を振り、人気者を次々と世に送り出してきたわけです。それだけに若手芸人さんたちの信頼も厚いようです。
自ら体を張ってチャレンジ
内村さんが大物芸人であり、大物司会者でありながら、幅広い世代から親しみを持たれている理由は番組内での立ち位置もあるでしょう。人気番組の『イッテQ!』で内村さんは常に他の出演者と並んで、番組を進行させています。司会でありながら、メンバーの一員という役割も演じているのです。実際に番組カレンダーを作成する企画などでは自ら体を張って挑戦し続けています。そしてチャレンジする大変さを分かっているからこそ、他のメンバーの企画にも厳しくも優しいコメントができるのだと思います。
内村さんは、NHKのコント番組『LIFE!~人生に捧げるコント~』でも中心的な役割を担っていますが、この番組の中で繰り広げるコントは、まさに体当たりそのものです。眉毛がつながっているキャラクター、増田彦介・彦美の兄妹シリーズでは、毎回、勢いよく壁にぶち当たって突き抜ける力技のコントを披露しています。この彦介というキャラクターは内村さんの「体を張ったコントをやりたい」というリクエストに応える形で、メークや動作などをアニメ的なものに仕立て上げたのだそうです。
その場に応じた立場で必要な力を発揮する内村さんには、ビジネスパーソンにも必要な「自在な対応力」が根付いているように感じます。そして、その自在な対応力は、いくつになっても現役であり続けようとする意志と努力に裏打ちされたものなのかもしれません。
部下にとって一番やっかいな上司は、現場の苦労や制約を知らないのに、命令だけは大上段に構えたものであったり、大きな数字目標であったりと、現役感覚を欠いた中で権力を行使しようとする人です。
自在の対応力でチームをまとめる
もし、内村さんのように場所によって主役になってくれたり、脇役になってくれたり、マンパワーが足りないときには現役として機能してくれたりと、自在の対応力でチームや組織をまとめてくれるリーダーがいてくれたら、若手や中堅も伸び伸びと能力を発揮できることでしょう。内村さんが「理想の上司」として選ばれたのも納得です。
先述の『紅白歌合戦』マスコミ合同取材会の中で、心境を問われた内村さんは「そうですね。『総合とは何か』っていうことを毎日思っているんですが、風邪薬みたいなもの、何にでも効く漢方薬みたいなものかなと。赤勝て白勝てとどっちもあおる感じでうまく仕切れたらなと思っています」と答えていました。
大みそかは何にでも効く漢方薬のような内村さんの総合司会ぶりに注目しつつ、『紅白歌合戦』を楽しみたいと思います。
経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。TV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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