日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/12/25

一方で新たな発見もあった。フクロオオカミの遺伝的多様性は、12万~7万年前に急激に減少していたのだ。これまでは、フクロオオカミの多様性が減少したのは、それよりもずっと最近のことだと考えられてきた。

「我々は長い間、フクロオオカミの遺伝的多様性が大きく制限された時期は、タスマニアデビルと同じく、タスマニア島だけに生息するようになった後のことだと考えてきました。つまり、本土と島とをつなぐ陸地が失われた1万5000~1万年前頃です」とパスク氏は言う。

フクロオオカミの遺伝的多様性が減少した原因は、12万~7万年前に気候変動によって植生が変化したためかもしれない。今回の発見は、人類がオーストラリアにやってくる6万5000年前よりもはるか昔に、フクロオオカミがすでに本土において減少しつつあったことを示唆している。

フクロオオカミの復活は

それでも狩りによって最終的にフクロオオカミを絶滅させたのは人類だ。一部の研究者が、ゲノム解読をきっかけとして将来的に彼らを復活させたいと望む理由はそこにある。

「最近絶滅した動物の中でも、フクロオオカミは人類にその責任があることが特に明白な例であり、リョコウバトと同様、復活させるべき候補として名前が挙がるのは当然と言えるでしょう」と、英ダラム大学の進化生物学者で古代DNAに詳しいロス・バーネット氏は言う。

シドニーにあるニューサウスウェールズ大学で絶滅種の再生を研究している古生物学者マイク・アーチャー氏は、2000年代初頭、フクロオオカミのクローン作成を試みる先進的な研究を行い、2013年には、絶滅したカエルの胚のクローンを作ることに成功している。1980年代に姿を消した、胃の中で子供を育てる一風変わったカエルだ。

「課題はまだ山積みですが、パスク氏のチームによる今回の研究は、20年前には誰もがありえないと考えていたことが可能になりつつあることを示しています」とアーチャー氏は言う。

パスク氏は、フクロオオカミをぜひとも復活させたいという思いはあるとしつつも、「きちんと機能するゲノム全体を作るということと、解読されたゲノムを持っているということはまるで別の話であり、そこには越えるべき大きなハードルがあります」と述べている。それでも彼は将来的に、フクロオオカミと近しい有袋類を利用して、ゲノムの違いを完全に明らかにし、異なる部分を編集してフクロオオカミを再現したいと考えている。

「種の復活を実際にスタートさせる技術が手に入るまでには、少なくともあと10年はかかるでしょう」と彼は言う。「とはいえ、技術はときとして予想外に速い進化を遂げるものです」

(文 John Pickrell、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年12月13日付]

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