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食の豆知識

茶わん蒸しがないすし屋なんて! だし効かせる名脇役

2017/12/13

夜はお高い割烹(かっぽう)のランチにはたいてい茶わん蒸しが付いてくる

私のお気に入りの店がまさにそれだ。おじさまの聖地にある、夜はちょっとお高い和食屋が手がけるランチは、魚がメイン。行くと決めたらもう頭の中は「銀ダラにしようかな、サバもいいな、いやいやブリ大根も捨てがたいし……」と仕事が手につかなくなるような、いい店だ。そこで魚が焼けるまでの間に出されるのが、茶わん蒸しなのだ。

空腹で待っている間の手持ち無沙汰や荒ぶる気持ちを、ぷるぷると鎮めてくれる茶わん蒸し。どちらかというと女性が好むものと思われがちだが、この店ではそんなことはない。どのおじさまも皆ウキウキと小さなスプーンを動かし、茶わん蒸しに舌鼓を打っている。だしがおいしいから茶わん蒸しだけでなく、煮物も味噌汁も大満足。初回からつい「夜のメニューを見せてもらえますか」と言ってしまうのもわかるだろう。

具なしのそっけなさもじわじわくる魅力がある

そういえば名古屋を中心とするモーニング戦争が激しい地域でも、コーヒーに茶わん蒸しが付いてくる店はちらほらある。意外性を狙ったということもあろうが、実際に食べてもらえれば満足度が高いため、リピート率が上がるからであろう。同じ卵料理でも、ゆで卵がポンと出てくるよりずっと印象に残るはずだ。

ところで茶わん蒸しというと、どのような姿を想像するだろうか。

一般的なのは、ちんまりとしたフタ付きの専用食器で作られ、鶏肉やエビ、カマボコにシイタケなどが入っているものだろう。ミツバやユズの香りがこの上なく「上品な和食」の趣で、万人向けであるが、量は少なめ。

長崎の人気店の茶わん蒸し

しかし茶わん蒸しにはさまざまなバリエーションが存在する。例えば大阪発祥と言われる、うどん入りの「小田巻蒸し」もそのひとつ。まだ卵が一般人の口にはなかなか入らなかった時代に、大阪は船場の商家でハレの日に作られたという。貴重な卵をたっぷり使い、うどんのおかげでボリューム満点。ぜいたくで、それでいて実も取る、そつのないごちそうといえよう。

他にも「空也蒸し」と呼ばれる、豆腐を入れた茶わん蒸しもある。また鳥取県には、春雨入りの茶わん蒸しもあるという。

長崎には大きな大きな茶わん蒸しを名物にしている店もある。長崎の本店も、銀座の店も、家族でよく出かけたものだ。「茶わんで蒸すから茶わん蒸しなのに、これではどんぶり蒸しだ」と文句を言いつつも、ペロリと平らげるところまでがお約束。中年になり食が細くなった今でも、ここの茶わん蒸しはペロリと平らげないと、どうにも気が済まない。

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