身近な人が過労でうつに どうサポートすればいい?知っておきたい過労死の実態と防止策(下)

日経Gooday

睡眠をしっかり取ることは、とても大切だ(c)Rommel Canlas-123rf

休めないときにどうしたらいいのかは難しい問題ですが、自分でできることと、職場でできることがあります。まず、自分でできることの一つには、睡眠をしっかり取ること。前々回記事「過労による突然死 40~50代男性がリスク大」でもお話ししましたが、睡眠時間の短縮や質の悪化は脳・心臓疾患のリスクを高めることが分かっていますし、不眠をはじめとする睡眠障害はうつ病の典型的な症状でもあります。ですから、すでに不眠などの睡眠障害を自覚している人は、うつ状態の可能性があるので、精神科や心療内科、睡眠外来などを受診して対処したほうがいいでしょう。

睡眠時間が十分に確保できない時期には、睡眠の質を高める工夫をしてほしいと思います。例えば、目の網膜への光刺激は睡眠の質を下げるので、就寝前にはパソコンやスマートフォンの画面は見ない、覚醒作用のあるアルコールやカフェインの入った飲料はとらないなど。朝起きてすぐに太陽の光を浴びることも大切です。これは、太陽の光を浴びることで体内時計をリセットして、睡眠と覚醒のリズムをつかさどるメラトニンというホルモンの分泌を調整するためです。

職場では、働く人同士が互いの様子を気にかけ、挨拶するなど声をかけ合うことが大事です。休めない状況が延々と続き、先の見通しがつかない状態では、ストレスも高まります。ただ、そこで「よく頑張っているね」とお互いをねぎらい、「この仕事が一段落したらおいしいものを食べに行こう」などと言い合えたりすれば、ストレスの度合いは違ってきます。また、普段から業務の情報を共有して仕事の進め方を調整したり、必要なときには上司や先輩、同僚に相談したり、支援を求めたりしやすい環境を整えることも重要です。

働き方だけでなくコミュニケーションの改善が重要

ストレスがまったくない状態では、人間は成長しません。仕事のやりがいや面白さは、ある程度のストレスがある中で、自分自身を成長させながら育てていくものです。最近、注目されているワークエンゲージメント(従業員の心の健康度を示す概念)の研究でも、仕事に対する熱意や充足感などが高い人は、労働時間が多少長くても、健康でいられることが分かってきています。

だからといって長時間労働でも構わないという話ではありません。時と場合によって、自分自身や職場の人が働き方や心身の負荷をコントロールしやすい職場づくりを進めることが重要です。働き方改革の機運が高まっていることで、長時間労働の改善に取り組む企業が増えていますが、労働環境の整備だけでなく、仕事の生産性にも直結するコミュニケーションの改善にも目を向けてほしいと思います。

――ストレスチェックで高ストレスと診断されたときや、自分がうつ状態かもしれないという不安があるときには、職場の健康管理室などの産業医や保健師といった専門家に相談するのがベストだと思いますが、社内では相談しづらいという人も多いようです。

確かに、「社内で相談して、もしうつ病だと分かったら、キャリアに影響するかもしれない」と不安に思う人はいるでしょう。しかし、長い人生のうちでひどく落ち込んだり、うつ状態に陥ったりすることは、異動や転籍で上司や仕事内容が変わる可能性があれば、誰にでもあり得ることです。うつ病と診断されたとしてもそれでキャリアが終わるわけではありませんし、職場もまた、受け入れる環境を整備しなければいけません。

職場以外にも、相談できる窓口はたくさんあります。例えば、先ほどご紹介した働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」には、相談機関や窓口を紹介するページがあります。電話やメールで相談できるほか、精神科や心療内科のある全国の医療機関を検索することもできます。また、働く人、働く人を支える家族、事業者・上司・同僚のそれぞれに役立つ情報も多く掲載されているので、メンタルヘルスに関する悩みや困ったことがあるときは、サイトを訪れてみるといいでしょう。

【知っておきたい過労死の実態と防止策】

上:「過労による突然死 40~50代男性がリスク大

中:「仕事が原因のうつ病が増加傾向 自殺の9割以上は男性

吉川徹さん
労働安全衛生総合研究所 過労死等調査研究センター統括研究員。1996年産業医科大学医学部卒業。2015年4月から労働安全衛生総合研究所国際情報・研究振興センター上席研究員、労働災害調査分析センター センター長代理、過労死等調査研究センターを併任。2017年4月から現職。専門は国際保健学、産業安全保健学。過労死等事案の分析や、過労死等予防のための職場環境改善の研究などを行う。

(ライター 田村知子)

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