高画質化だけでなく、Netflixでは高音質化にもこだわり、最新の立体音響フォーマットである「ドルビーアトモス」に対応したコンテンツの数も増やしている。高機能に見合うコンテンツ不足に悩むテレビメーカー、オーディオメーカーにとって、この上ないパートナーとなる。
レコメンデーション機能や画面の操作性などの使い勝手向上はもちろん進めているが、デバイスメーカー各社と協力し、約1000種類のハードウエアにおける使いやすさの検討や、高画質、高音質といった面への取り組みも積極的に行う。この考えはある種メーカー的ともいえる。ここに消費者とNetflixとの相性を測るひとつの指針があるのかもしれない。
Netflixが会員だけに作品リストを見せる理由
宣伝戦略の面でもテックカンパニーの傾向が強くでている。たとえばNetflixでは、会員にならないと配信作品リストを確認することができない。

入会を検討しているユーザーにとって不便ではないのだろうか。この疑問に対する答えが非常に興味深かった。
「Netflixでは、たとえば作品リストを公開して本当に効果があるのかといったことも検証します。海外でリストを出してみたところ、視聴時間が延びたというデータが一切ないんです」
「リストを見て安心はするのかもしれませんが、それが加入に響くとか、視聴時間が伸びるかというと、全くそんなことはありません」と中島さんは解説する。「それよりも1つの素晴らしい作品、『オクジャ/okja』など最たるものだと思いますが、そういう作品をきちんと紹介すると、視聴時間が伸びることが実証されています。私もリストはあったらいいなとは思います。しかし、『実際に結びつかないものはやらない』というのがNetflixのスタンスなのです」
ECサイトの強み生かすAmazonプライム・ビデオ
言わずと知れた、巨大ECサイトAmazonが運営する定額制動画配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」。年間3900円、もしくは月間400円で「Amazonプライム」の会員になれば、定額制動画配信サービスのほか、音楽配信サービスの「Prime Music」、容量無制限に写真を保存できるサービスの「プライム・フォト」、さらにECサイト向けサービスとして購入した品物のお急ぎ便や、お届け日時指定便を追加料金なしで何度でも利用できる。
日本における「Amazonプライム」は、当初ECサイト向けサービスとしてスタートした。そのため、15年9月にプライム・ビデオが開始された際、「既に会員であれば追加料金なしにプライム・ビデオを楽しめる」と話題となった。ECサイトで既に会員を抱えていたこと、そして追加料金なしにサービスを受けられるお得感が奏功したためか、ジャスト・システムが7月に発表した調査によると、定額制動画配信サービスのなかで最も利用者数の多いサービスが「Amazonプライム・ビデオ」となっている。

Amazonプライム・ビデオ コンテンツ事業本部長 アジア・パシフィック リージョナルヘッドのジェームズ・ファレルさんにAmazonの強みを聞いたところ、「Amazonのユニークなところは、それ自体が巨大なメディアであること」という答えが返ってきた。「ショッピングのお客様が追加料金なしでビデオを見られると喜んでもらえるし、ビデオ視聴が目的でAmazonのプライム会員になったお客様がショッピングの配送特典を楽しんでいただけます」