WOMAN SMART

DUALプレミアム

夫の家事は1日67分 これで女性は活躍できる?

日経DUAL

2018/1/4

日経DUAL

PIXTA

 共働き家庭で、夫はどのくらい家事・育児を分担しているのでしょうか。女性の活躍促進や待機児童解消などの取り組みが重要とされた過去5年で、夫の分担率はどのくらい伸びて、妻の負担はどのくらい減ったのでしょうか。教育社会学者の舞田先生が統計データを使って、解き明かしてくれました。

■夫の家事・育児分担、どのくらいですか

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。先だって、2016年の『社会生活基本調査』の生活時間統計が公表されました。1日あたりの各種行動の平均時間が分かる、スグレモノです。

 共働き夫婦の家事時間が何分、育児時間が何分、という情報も知ることができます。これをもとに、夫の家事・育児分担率を計算してみようと思います。皆さんの家庭はどうですか。「夫4:妻6」くらいですか。これは見上げたものですが、「夫1:妻9」のような場合は、妻の不満が爆発する可能性が高くなるでしょう。

 観察対象は、6歳未満の子がいる共働き夫婦です。手のかかる乳幼児がいる夫婦ですが、夫婦の家事・育児時間の合算のうち、夫がしている分が何%を占めるか。これが、家事・育児分担率の概念です。

 『社会生活基本調査』は5年間隔ですので、前回調査(2011年)のデータとの比較をしましょう。この年以降、女性の社会進出の促進と並行して、男性の家庭進出(家事・育児参画)を促す取り組みもなされてきました。はて、その成果が見られるかどうか。

■夫の家事・育児時間は微増し良い方向に

 では、原資料から採取したデータをご覧いただきましょう。各曜日の1日あたりの平均時間です。

 平日と土日をひっくるめた週全体の数値をみると、夫の家事・育児の平均時間は、2011年が54分、2016年が67分です。13分増えています。妻のほうは、329分から327分へと微減しています。

 その結果、夫の分担率は14.1%から17.0%と、ちょっと上がっています。家事・育児の8割以上を妻がやっている状況は変わりませんが、良い方向に向かってはいるようです。曜日ごとにみると、土曜日の増加幅が大きくなっています(21.0%→25.1%)。完全週休2日制の普及により、土曜の仕事時間が減っているためでしょう。

■トップは東京 最下位は福岡

 これは全国のデータですが、続いて、47都道府県のデータもみてみましょう。結論を先取りすると、この5年間の変化は県によって多様です。全国トレンドより増加が顕著な県もあれば、悲しいかな、夫の分担率が下がってしまっている県もあります。

 週全体でみた1日あたりの平均時間をもとに、47都道府県の夫の家事・育児分担率を計算してみました。先ほどみたように全国値は2011年が14.1%、2016年が17.0%ですが、県別にみるとかなりの地域差があります。

 黄色マークは最高値、青色マークは最低値です。2016年でみると、最高は東京の25.2%、最低は福岡の9.6%となっています。東京の夫の分担率は4分の1ですが、福岡は10分の1未満です。

 この5年間の変化をみると、東京は16.7%から25.2%と、かなりアップしています。全国トレンドの伸び幅を大きく上回っています。47都道府県中の順位も、10位から首位に躍進。逆に陥落が大きいのは、2011年にトップであった島根です。22.4%から13.2%に下がっています。

 はて、この分岐は何によるのか。夫の仕事時間の変化でしょうか。同じ属性の男性(6歳未満の子がいる共働き夫婦の夫)の平日の仕事時間をみると、東京は2011年の573分から、2016年の529分へとかなり減っています。島根は、488分から534分に増えています。なるほど、合点がいきますね。

 ただこれは両極端で、仕事時間の変化と、家事・育児時間のそれとの間には、有意な相関関係はありません。両方とも減っている県もあります。「男性が家事をしない要因は、仕事時間だけではない」と言いますが、他にもファクターはあるでしょう。

 赤字は、良好な成績を残している県です。2016年の数値が全国値(17.0%)より高く、かつ、この5年間で5ポイント以上伸びている県です。この基準で「優良都県」と判定されるのは、青森、福島、東京、新潟、兵庫、奈良、山口、宮崎、沖縄の9都県。大阪も頑張っていて、この5年間の増加幅は全国で最も大きくなっています(6.7%→15.5%)。最下位脱出です。

 「優良都県」に問い合わせてみたところ、福島県では2015年に知事がイクボス宣言をし、トップが率先して、育児参画を呼び掛けているようです。沖縄県の男性の育休取得率が4.8%(2016年 2000社を対象とした調査)が、全国平均の3.16%(2015年 厚生労働省調査)と比べて高いのも目立っています。9都県に共通した取り組みは、ワークライフバランスの推進、イクメン・イクボス養成のための企業への働きかけ、父親に向けたセミナーや育児教室の開催でした。しかしこうした取り組みは、「優良都県」以外でも行われているので、それだけが原因とはいえないでしょう。

■正社員夫婦でも夫分担は2割以下

 上記の表は、各県の政策評価の参考資料に使っていただければと思いますが、これで終わりでは芸がないので、あと一つデータをご覧に入れましょう。一口に共働きといっても、夫婦の働き方には色々なタイプがあります。それに応じて、夫の家事・育児分担率が違うかどうかです。

 共働きといっても、「夫フルタイム+妻パート」という夫婦が多いので、統計に表れる夫の分担率は低くなって当然。こういう見方もできます。しからば、雇用形態や仕事時間が同じ夫婦の場合、夫の分担率は上がるか。

 最近の『社会生活基本調査』の公表データは充実しており、この点も知ることができます。表3は、同一の働き方をしている夫婦でみた、夫の家事・育児分担率です。

 夫婦とも正社員の共働き家庭でみると、夫の家事・育児時間が78分、妻が319分。雇用形態をそろえても全然違います。夫の分担率は、78/(78+319)=19.6%で、2割にも達しません。

 まあ、「夫正社員+妻パート」の夫婦の13.7%に比したら高いですが、大きな差とはいえません。8割以上を妻がやっているのは同じです。仕事時間をそろえても、分担率に大きな変化はみられません(下段)。

 むろん、条件をもっと統制する余地はあるでしょうが、基本的な就業条件をそろえても、夫の家事・育児分担率は低い。この事実は押さえておくべきでしょう。同じ正社員で、フルタイムで働いているにもかかわらず、家事・育児の8割以上が妻に課せられる。異常としか言いようがありません。

 夫の分担率を高めるための作戦は色々あるようです。ちょっとネットで検索してみて面白いと思ったのは、ホワイトボードに家事を細かく書き出し、妻の担当分には赤、夫のそれには青のマグネットをつけるというもの。真っ赤になったボードで、夫のだらしなさがハッキリと「見える化」されます。

 私は「視覚人間」ですので、こうされると弱いなあ。妻の怒りの炎(赤)で染まったボードを、毎日見せられるのはつらい。少しでも青色を増やして「火消し」をせねばと思いますが、世のパパさんたちはどうでしょう。私が子どものころ、陣取りゲームを好む男子が多かったですが、オトコの心理をうまく突いた戦略であるように感じました。 

 案外、こういう「遊び」的な要素も大事なのかもしれません。

舞田敏彦
 教育社会学者。1976年生まれ。東京学芸大学大学院博士課程修了。博士(教育学)。専攻は教育社会学、社会病理学、社会統計学。著書に『教育の使命と実態』(武蔵野大学出版会)、『教職教養らくらくマスター』(実務教育出版)、『平均年収の真実 31の統計から年収と格差社会を図解【データえっせい】』(impress QuickBooks)など。近著は『データで読む 教育の論点』(晶文社)

[日経DUAL 2017年10月19日付記事を再構成]

WOMAN SMART新着記事

ALL CHANNEL