メーカーを除く業種別に見ると、人材が流出しているのは百貨店やアパレル業界、そこに銀行など金融業界が加わってくる。一方、受け皿となっているのは、ITサービスや外食、ヘルスケアなどの業界だという。「IT企業などでは、IPO(新規株式公開)したいという経営者は少なくない。上場のニーズに応えられる人材の価値は極めて高い。年収1500万円以上で迎えられるケースもある」(渡辺氏)という。

転職先の選択、まずは相性 年収は最後

では、どのようにして転職先の企業を選んだらいいのか。長年、ヘッドハンターとして活躍し、リクルートエグゼクティブエージェントのシニアディレクターを務める中村一正氏は、「私の経験では、(1)相性、(2)目的の共有、(3)年収などの条件――の順です。年収を気にする人は多いですが、その条件を優先しすぎると失敗するケースが少なくありません。まず第一は相手企業との相性です」と強調する。

みずぼFGの本社ビル

その企業の社風や文化、仕事の進め方や組織のあり方などが、自分の働き方に合うかどうか、それが相性だ。特にオーナー企業の場合は、経営者との相性が最も重要だ。次は目的の共有、転職先の企業でのミッション、役割を明確にして、目標を立て実行することを共有しておく必要がある。

中村氏はヘッドハンターの対象となるようなリーダー向きの人材は、会った瞬間に分かるという。「有能な人材には『目力』があります。どちらかというと傍流を歩き、しんどい環境で戦った人。いわゆる社内でエリートといわれる存在ではなかった人が転職して、いい成果を出すケースが多いのです」と明かす。

「挑戦者は欲しい」柳井氏

有能な銀行員は引く手あまただ。「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「地頭がよくて、挑戦できるリーダー人材ならいくらでも欲しいですね。銀行マンにも、そんな条件の人はたくさんいると思いますよ。しっかりと処遇もする」と話す。

柳井氏の盟友、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏や日本電産社長の永守重信氏らも過去に銀行出身者を幹部として重用、やはり急成長する新興企業を中心にニーズは高い。

「ついに大手銀行が大規模なリストラに動く。かなりの転職者が出そうだ」という観測は、構造改革の報道が出る前に転職サービス市場に流れていた。多くの有能な人材を抱える銀行業界。他の業界に有能なリーダーを送り出すことができれば、日本のビジネス界の活性化につながるかもしれない。

(代慶達也)

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