秋を眺める絶景ウオーク 伊豆・新島vs北海道・美瑛
わが国には絶景と呼ばれる地域が多々ある。関西福祉科学大学教授の重森健太さんは「絶景のなかを歩くと神経伝達物質ドーパミンが放出され、いつまでも歩きたいという気持ちが湧き上がる」と話す。秋が深まりウオーキングが苦にならない今の季節、歩くことで元気になれる絶景の道を紹介したい。
◇ ◇ ◇
伊豆諸島・新島 白砂の道
目の前には光を受け、キラキラ輝く白砂の道が延々と続いている。ここは、飛行機を使えば東京都心から1時間足らずで訪れることができる伊豆諸島の新島。左手には太平洋の大海原、右手には高さ200メートル以上の真っ白な断崖が迫る。まるで、ダリのシュルレアリスムの絵画のなかに飛び込んだような錯覚を覚えた。
周囲に広がるえもいわれぬ絶景に心を奪われながら、ザクザク、ザクザクと軽快な足音を立てて歩く。ほおをなでる潮風も心地よく、いつまでも歩き続けたくなる道だ。
新島は島全体が、多孔性でガラス質の「コーガ石」の土壌でできている。特にコーガ石がむき出しになった島の東側にあたる羽伏浦(はぶしうら)海岸は真っ白な断崖や砂浜が約8キロメートルにわたって続く。目の前には「白い世界」が広がっているのだ。
重森さんによれば、こうした軟らかい砂浜でのウオーキングは、膝や腰への負担が小さく済むメリットがあるという。「半面、足を前に踏み出す際には、砂で足が沈むため、太ももを大きく上げて歩かなければならない。太ももを上げる動作は腹筋や背筋に力を入れなければならないので、おのずと体幹トレーニングにもなる」
絶景が楽しめる上、健康効果も大きい。この砂浜ウオーキング、癖になりそうだ。
北海道・美瑛 パッチワークの丘
一方、ところ変わって東京23区の広さに匹敵する丘陵地帯が広がる北海道美瑛(びえい)町。およそ50万年前、十勝岳連峰の噴火活動によって火山灰や泥流が堆積し、長い歳月をかけて雨風に浸食され、連続する丘が形成された。
丘は、明治期以降の開墾事業で格子状に区割りされ、地主が思い思いの作物を育てた結果、夏前後には見事なパッチワークの風景が出来上がる。このため美瑛の丘を巡る道は「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも指定されている。
最高気温が10数度の今の季節、丘の色は濃淡のある緑や薄茶色に変わっている。12月には雪が降るが、それまでは遅い紅葉の魅力ある光景が楽しめる。
「アップダウンが多い緩やかな丘では、やや速めに歩くといい。効率良く心拍数が上がって脂肪燃焼効果が得られる上、バランス良く下肢・体幹の筋肉を使うので、脚周りやおなか周りのダイエットにもつながる」(重森さん)。
丘陵地帯にいくつかある「シンボルツリー」を通過ポイントとして設定すると楽しい。「ケンとメリーの木」や「セブンスターの木」などの大樹の下で一休みするのもいいだろう。
地図にしたコースを歩いてみた。約5時間のウオーキングで、10ほどの丘を上り下りした。疲労以上に爽快感に包まれた1日だった。
(日経おとなのOFF10月号より再構成 文・鵜飼 秀徳 新島の写真・中村 風詩人)
[日本経済新聞夕刊2017年10月28日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界