秋を眺める絶景ウオーク 伊豆・新島vs北海道・美瑛

秋空のもとにそびえる「ケンとメリーの木」(北海道・美瑛)
秋空のもとにそびえる「ケンとメリーの木」(北海道・美瑛)

わが国には絶景と呼ばれる地域が多々ある。関西福祉科学大学教授の重森健太さんは「絶景のなかを歩くと神経伝達物質ドーパミンが放出され、いつまでも歩きたいという気持ちが湧き上がる」と話す。秋が深まりウオーキングが苦にならない今の季節、歩くことで元気になれる絶景の道を紹介したい。

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伊豆諸島・新島 白砂の道

右手が断崖の不安定な砂地を歩くことで体幹を鍛えられる(羽伏浦海岸)
>★絶景コース&ポイント 空港がスタート地点。まず、西方向に向かって羽伏浦海岸に出よう。そして断崖沿いの海岸をひたすら歩く。断崖は次第に高くなっていく。高さ250メートルもある白ママ断層付近は大迫力。ただし同断層は崩落の危険があるので、真下には行かないように。海岸歩きが終わったら、今度は集落へ向かおう。途中、木々がトンネル状に覆いかぶさっている道が続き、日差しを遮ってくれる。

目の前には光を受け、キラキラ輝く白砂の道が延々と続いている。ここは、飛行機を使えば東京都心から1時間足らずで訪れることができる伊豆諸島の新島。左手には太平洋の大海原、右手には高さ200メートル以上の真っ白な断崖が迫る。まるで、ダリのシュルレアリスムの絵画のなかに飛び込んだような錯覚を覚えた。

周囲に広がるえもいわれぬ絶景に心を奪われながら、ザクザク、ザクザクと軽快な足音を立てて歩く。ほおをなでる潮風も心地よく、いつまでも歩き続けたくなる道だ。

新島は島全体が、多孔性でガラス質の「コーガ石」の土壌でできている。特にコーガ石がむき出しになった島の東側にあたる羽伏浦(はぶしうら)海岸は真っ白な断崖や砂浜が約8キロメートルにわたって続く。目の前には「白い世界」が広がっているのだ。

重森さんによれば、こうした軟らかい砂浜でのウオーキングは、膝や腰への負担が小さく済むメリットがあるという。「半面、足を前に踏み出す際には、砂で足が沈むため、太ももを大きく上げて歩かなければならない。太ももを上げる動作は腹筋や背筋に力を入れなければならないので、おのずと体幹トレーニングにもなる」

絶景が楽しめる上、健康効果も大きい。この砂浜ウオーキング、癖になりそうだ。

北海道・美瑛 パッチワークの丘

秋が深まる中、落ち着いた緑と茶色の色彩に染まる美瑛町の丘陵地帯
★絶景コース&ポイント JR美瑛駅が起点と終点。駅の北西方向に広がる丘陵地帯へと向かおう。まずは2.5キロメートル地点にある日産スカイラインのCMで使われた「ケンとメリーの木」を目指したい。6キロメートル地点にはたばこのパッケージのモデルになった「セブンスターの木」があり、360度ぐるりと波打つ丘が見渡せる。その先は小さな丘の連続。徒歩でなくレンタサイクルで回る手もある。

一方、ところ変わって東京23区の広さに匹敵する丘陵地帯が広がる北海道美瑛(びえい)町。およそ50万年前、十勝岳連峰の噴火活動によって火山灰や泥流が堆積し、長い歳月をかけて雨風に浸食され、連続する丘が形成された。

丘は、明治期以降の開墾事業で格子状に区割りされ、地主が思い思いの作物を育てた結果、夏前後には見事なパッチワークの風景が出来上がる。このため美瑛の丘を巡る道は「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも指定されている。

最高気温が10数度の今の季節、丘の色は濃淡のある緑や薄茶色に変わっている。12月には雪が降るが、それまでは遅い紅葉の魅力ある光景が楽しめる。

「アップダウンが多い緩やかな丘では、やや速めに歩くといい。効率良く心拍数が上がって脂肪燃焼効果が得られる上、バランス良く下肢・体幹の筋肉を使うので、脚周りやおなか周りのダイエットにもつながる」(重森さん)。

丘陵地帯にいくつかある「シンボルツリー」を通過ポイントとして設定すると楽しい。「ケンとメリーの木」や「セブンスターの木」などの大樹の下で一休みするのもいいだろう。

地図にしたコースを歩いてみた。約5時間のウオーキングで、10ほどの丘を上り下りした。疲労以上に爽快感に包まれた1日だった。

(日経おとなのOFF10月号より再構成 文・鵜飼 秀徳 新島の写真・中村 風詩人)

[日本経済新聞夕刊2017年10月28日付]