ライフコラム

立川談笑、らくご「虎の穴」

談笑、談志をしくじる 真打ち披露に師匠が来ない!? 立川談笑

2017/10/8

PIXTA

 マクラのテーマは「危なかったけど、助かった」。弟子の笑二、吉笑を受けて今週は師匠である私の番です。

 もう10年以上も前の夏のこと。フジテレビの当時の恒例イベント「お台場冒険王」が開幕しました。局の総力をあげてのイベントは、私の携わる朝の情報番組「とくダネ!」のコーナーでも大々的に取り上げます。その年はひときわ力がこもっていました。

立川談笑一門会で高座に上がる落語家の立川談笑さん

 コーナーの時間は15分ほど。社屋内やその周辺の7カ所から生中継のリポートを次から次へとバトンタッチしていきます。しかも事前収録しておいた映像が絶妙のタイミングで差し込まれるという非常に凝った構成でした。他の中継地やVTRとタイミングを合わせて、すべてを一連の流れで見せるという生放送です。めくるめくマジックショーのような仕上がりで、あれは素晴らしかった。

 生放送ですから、一発本番。ちょっとした失敗でも取り返しがつきません。出演者の動き、カメラワーク、スイッチの切り替えなどすべてがスムーズに連動しないと、全員の努力が台無しになります。打ち合わせは入念なものでした……と、ここまでが前振り。あくまで前振りです。別にここはピンチじゃあない。確かにあのイベントがらみの生中継では数々のピンチもありました。ある年は象の上から滑り落ちそうになったり、またある年はウォーターボーイズに交じって泳いで溺れかけたり。いやいや、話を本当のピンチに戻しましょう。

 いよいよ生放送が翌朝にせまった日の夜。スタッフと出演者全員による最終打ち合わせがお台場でありました。もちろん出演者である私も同席しなければなりません。夜には落語会がありますが、自分の高座が終わってすぐに移動すれば打ち合わせにはなんとか間に合う。ところが! なんと、その夜は師匠談志も出演する会だったのです。トリを務める師匠の高座を見守ることもなく、「お先に~」なんてもってのほかです。さあ、困った。お台場では一発本番を控えて真剣に打ち合わせをしています。顔を出さないわけにはいかない。でもトリが終わる時間までここにいたら、間に合わない。でも先に帰るわけにはいかない。でも、でも、でも。

 迷ったあげく、楽屋の談志におそるおそる切り出しました。

 「ええ。あの、この後ひとつ仕事が……」

 その言葉をさえぎるように師匠が言いました。

 「おお、構わない。行きな行きな」

 「はい。申し訳ありません。お先に失礼いたします」

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