「その1つが、非合理な考え方から合理的な思考に転換する習慣です」(吉野さん)。具体的には、普段の生活で、ネガティブな言葉を自身の中でポジティブな言葉に置き換えるトレーニングが有効だという。精神科医のデビッド・D・バーンズ氏が提唱する非合理な考え方の代表例「10種類の認知の歪み」から、吉野さんが典型的な転換方法を教えてくれた(図4)。
「他己」評価ではなく自己評価で生きる
「非合理な考え方をする人は、他人から自分はどう見られているかを気にする人が多い。しかし、評価する人の性格や機嫌、体調、状況次第で評価は変わり、その評価は絶対的なものではありません」(吉野さん)
「結果が悪かったとしても、『自分の努力が足りなかった』と気づくだけでも自己成長につながり、成功だと考えることもできる。結局、結果に対して『成功か失敗か』は自分で決めればよくて、ストレスで心を病まないためには、『他己』評価ではなく自己評価で生きることが重要だと思います」(吉野さん)
※後編は「医師が明かすストレス対策 心を病まないための習慣」をご覧ください。
吉野聡さん
吉野聡産業医事務所代表・新宿ゲートウェイクリニック院長、精神科産業医。2003年筑波大学医学専門学群卒業、2007年筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。東京都知事部局健康管理医、筑波大学医学医療系助教・付属学校教育局統括産業医などを経て、2012年吉野聡産業医事務所を設立。50社以上の企業の産業医として従事。『「職場のメンタルヘルス」を強化する』(ダイヤモンド社)など著書多数。

(ライター 高島三幸)
[日経Gooday 2017年9月20日付記事を再構成]