ヘッドハンティング 第一線で働く女性、次はあなた!

「あなたのキャリアに興味を持つ企業があります」。人材獲得競争が激しさを増すなか、第一線で働いている女性に新たな挑戦を求める企業の視線が熱い。最適な人をスカウトし転職へ導くヘッドハンティングで、輝く女性たちの姿を探った。
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電機メーカーから小売店へ イケアの花見伊登子さん

「大人数で同じゴールを目指し、軌道に乗せるのは面白い」。家具販売のイケア長久手店は10月11日に開業する。異業種からスカウトされて副店長に就いた花見伊登子さん(41)は準備に大わらわ。国内外から集まった従業員らと笑顔で打ち合わせをこなす。
米国の大学で電気工学を専攻した。1999年、日本の大手電機メーカーに入社して以来、携帯電話に内蔵するカメラやビデオといったマルチメディア機能などの技術開発を担当した。海外の通信企業との合弁会社に出向し、現地に3年赴任。帰国後は本社の技術部門でリーダーや課長として商品開発プロジェクトの進捗管理などを担った。
長く働きたいと考えていたが、週末の仕事や出張が多く、周囲の男性には体力でかなわないと限界を感じた。と同時に「ここ数年、同じ事の繰り返し。違う仕事に挑戦したい」と思うようになった。昨年秋、「イケアで副店長を探しています」とヘッドハンティング会社からのメールを受け取り、心が動いた。
輝く目で誘うイケア・ジャパンのヘレン・フォン・ライス社長は「一緒に働きたい」と思わせる人だった。新店舗開業の仕事は、前職の合弁会社のリーダーとして多様なメンバー一人ひとりと対話し、期限が迫ったプロジェクトを成功させた経験に通じる。17年の元日に入社した。
副店長として約450人の面接をこなし、店内レストラン・売店とカスタマーサービス部門の事業を担当する。収益管理は初めての業務だ。それでも「好奇心旺盛で、連帯感と熱意などの価値観を共有できる」とピーター・ハイネル店長は花見さんを評する。新店を軌道に乗せたら、次は「世界各地のイケアの店舗で働く」との目標ができた。
技術開発・海外交渉の経験生かす コニカミノルタの吉田明子さん

コニカミノルタIoTサービスPF開発統括部戦略推進部の吉田明子さん(39)は6月、担当部長として働き始めた。昨年秋、ヘッドハンターから誘われたのがきっかけだ。会津大学でコンピューターサイエンスを専攻し、米国の大学院を修了。ドイツの研究所でコンピューターグラフィックスを研究した。日本の家電メーカーの研究職を得て、後にソフトウエア開発事業部長に就いた。部品を生産する国内外の企業や社内の他部署との折衝を重ねた。
女性で技術開発の経験を持ち、海外の企業と交渉ができる人材は貴重だ。複数の企業から誘いを受けた。企業側の狙いは社内にない多様な考えを取り入れ、モノやサービスを育てて世界との競争を勝ち抜くことだ。
コニカミノルタはあらゆるモノがインターネットとつながるIoTの技術を応用した機器やサービス開発を急いでいる。「新規事業を担う人員の過半数が即戦力の中途採用で、本気度が違った」と吉田さん。最終面接では一緒に仕事を進める同僚たちが同席した。「新しいレールを自分で敷いてみたい」と決心した。
就任後は戦略方針のまとめ上げに全力を注ぐ。「最初の経験を基に、将来は新たな事業の責任者になってほしい」と築沢孝治人財採用グループリーダーは期待する。
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ヘッドハントの対象は従来、50、60代以上の経営者や取締役が中心だった。しかし近年、将来のリーダー候補を求める例が目立つ。ヘッドハント会社のプロフェッショナルバンク(東京・千代田)は「一定のスキルがある30代後半から40代半ばの部長一歩手前の人材が多い」(高本尊通常務)。
同社への女性に絞った依頼は16年、前年の2割増えた。「企画に女性の考えを入れたい」「異業種の優秀な女性が欲しい」「経営陣の雰囲気を変えたい」との理由からだ。ヘッドハンターは様々な手段で人材を調べ上げ、電話やメール、手紙でスカウトする。
経営幹部層のスカウト事情に詳しいヘッドハント会社、縄文アソシエイツ(同・港)の古田英明代表は「転職まで成立した件数のうち、女性は全体の5%程度」とまだ少ない。働く女性は増えたものの、幹部候補の40代前半ぐらいの女性は層が薄い。次世代の経営者を見据えた獲得競争は始まっている。
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広がるキャリアチャンス ~取材を終えて~
退職金制度の見直しや役職定年の導入で転職を考える人が増えている。「スカウトメールを送ると4割返信がある」とヘッドハンターたちは言う。欲しい人材を手に入れるため、ヘッドハンターや人材紹介の仲介者を頼むのが当然になってきた。「企業は採用に妥協しない」とヘッドハント会社、オプティマス(東京・千代田)の広富さつき社長。「能力があれば年齢は問わないケースが多い」という。
長く現役で働くため、女性は多様なキャリアを積み市場価値を上げたい。リクルートエグゼクティブエージェント(同・中央)の森本千賀子さんは「身構える必要はないのでスカウトの声がかかったら、一度自分を査定してもらってみて」と話す。売り手市場の今、キャリアアップと収入増の両方をかなえるチャンスが広がっている。
(畑中麻里)
[日本経済新聞朝刊2017年9月25日付]
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