脂質ゼロで高タンパク 味覚糖がドレッシング作る理由

日経トレンディネット

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脂質ゼロ、糖質はわずか2%未満。その一方でタンパク質(プロテイン)が50%近くという前代未聞のドレッシングをUHA味覚糖が開発している。それが、クラウドファンディングの「Makuake」で2017年9月27日まで支援を募っている「プロドレ」だ。ターゲットは体型が気になったり、低糖質ダイエットに励む男女。オイルが主成分の一般的なドレッシングやノンオイルドレッシングではない、高濃度タンパク質を売りとした「第三のドレッシング」を、なぜ畑違いの菓子メーカーが開発しているのか。その背景や経緯を、製品の企画や開発を担う、30代の若き社員2人が語った。

低糖質・高タンパク質・無脂肪の世界でも類を見ないドレッシング「プロドレ」

菓子メーカーなのに「糖」を否定

――成分の半分近くがタンパク質で占められている、ユニークなドレッシングを開発中ですね。

UHA味覚糖・ヘルス&ビューティー開発部リーダーの北中進介氏(以下、北中): 正確に言うと、豚の骨や皮から抽出した、タンパク質の一種であるコラーゲンペプチドが40%以上を占めています。脂質はゼロで、糖質は2%未満です。これほど多くのタンパク質を含むドレッシングは世界でも類がなく、業界初、世界初の高濃度タンパク質ドレッシングと言うことができます。

左がUHA味覚糖の北中進介氏。右が佐藤宏祐氏

――そもそも「プロドレ」を開発しようと思ったのはなぜですか?

ヘルス&ビューティー開発部主任の佐藤宏祐氏(以下、佐藤): 現在、国内を席巻している低糖質ダイエットブームが背景にあります。低糖質ダイエット中は、サラダなど野菜中心の食生活を送る人が多いと思いますが、問題はサラダにかけるドレッシング。オイルが主原料のタイプでは脂質を余計に摂取してしまいます。

一方でノンオイルドレッシングは、脂質を抜いて足りなくなった味を糖質(ブドウ糖など)で補うことが多く、知らぬ間に余分な糖質を摂取することになりかねません。その点、プロドレであれば、脂質はカットされ、糖質も一般的なドレッシングより非常に少ないため、低糖質ダイエットにぴったり。さらに、多くのタンパク質も摂取でき、栄養面でもとても効率的です。近年では、コラーゲンの摂取で筋肉量が増加するという報告も、日本アミノ酸学会で発表されており、体づくりに関心のある人にも訴求力があると考えています。

――UHA味覚糖は飴やグミなど「甘さ」を追求し、糖を使っている商品が主力。それなのに、糖質を否定するドレッシングを開発するのは自己矛盾では?

北中: 今は、低糖質食やロカボなど、糖質を極力摂らないことが良しとされる傾向が強く、我が社にとっては逆風。しかし、時代の流れには逆らえないと考えています。糖を否定することは確かに自己矛盾につながりかねないリスクを負いますが、それでも、手をこまねいているより、時代のニーズをくみ取る製品を世に出すべきだと決断しました。UHA味覚糖の「UHA」は、元々「遊波」と書き、世の中に遊び心のあるトレンドの波を作る気概が込められています。また、「UHA」はUnique Human Adventureの頭文字を表し、冒険心や挑戦する気持ちも社名に込めています。そうした社風が、プロドレの誕生につながったとも言えますね。

当初は「砂糖抜きのグミ」を試作

――それにしても、菓子メーカーなのになぜドレッシングを作ろうと思われたのですか?

北中:  実をいうと、当初は砂糖抜きのグミを作ることを目指しました。豚の骨や皮に含まれるコラーゲンから不純物を除去して精製した素材がゼラチンであり、ゼラチンを細かく分解した素材がコラーゲンペプチド。要するにゼラチンもコラーゲンペプチドも、原料は豚のコラーゲンです。グミは大まかに言えば、甘い糖と、酸っぱさを出すためのクエン酸にゼラチンを混ぜたお菓子。そのグミから糖を抜いて、ゼラチンとクエン酸だけの原料を試作してみたわけです。ところが、これが全くおいしくなかった(笑)。ただし、タンパク質のうまみが豊富で酸味もあるのが特徴で、この原料を何かに利用できないかと、行きついた答えが、同じように酸味があるドレッシングです。世の中は低糖質食が流行していますし、これをドレッシングに転用できないかと発想したわけです

――とはいえ、グミからドレッシングへの発想の転換は、飛躍があるように感じますが……。

佐藤: 実は当時、私が低糖質ダイエットを実践していたことが影響しています。我が社の社長(山田泰正氏)は常日頃から「新しい製品を作るためには新しいトレンドに身を投じろ」と社員に檄(げき)を飛ばしており、私はそれを愚直に行っていただけですが(笑)。特に太っていたわけではなく、やっていれば何かひらめくかなと、軽い気持ちで取り組んでいました。ご飯を一切食べず、代わりに大量の生野菜の上に鶏のササミをのせて食べていたのですが、あるとき、ドレッシングにプロテイン(タンパク質)をたくさん入れて液体にしてかけてしまえば、鶏のササミをのせる手間が省けると思い立ったのです。私は元々グミの開発に携わってきており、ゼラチンの知識も豊富でした。ゼラチンを細かく分解してコラーゲンペプチドにすればドレッシングにできると、アイデアが沸いてきましたね。

プロドレの試作品
プロドレのキャッチコピー。「糖も脂肪もとりたくない」「理想のカラダをつくる」と、魅力的なうたい文句が並ぶ

――トレンドに身を投じることで、全く畑違いではあるものの、UHA味覚糖に蓄積されたゼラチンの知見が役立つ新製品につながったわけですね。

佐藤: おかげで、私の体重は64kgから58kgに減量し、体脂肪率は約10%にまで落ちました(笑)。その後、社長に直にプレゼンする機会がありましたが、お菓子ではなく、なおかつ糖を否定する製品なので、正直言ってボツにされると思っていました。ところが、社長は自身が体を鍛えることが好きで、低糖質ダイエットが流行っている世の中の背景もあったことから、「やってみろ」と意外にもゴーサインを出してくれたのです。

最大のネックはコラーゲンの強い苦み

――高濃度のタンパク質を含むドレッシングは斬新ですが、人気が出た場合、後発メーカーから類似品が出る可能性もありそうです。

北中: ゼラチンを細かく分解してコラーゲンペプチドにして、それをドレッシングに高濃度で入れることは、確かにどのメーカーもできます。ただし、クリアすることが困難な問題が一つあります。それは、ゼラチンを細かく分解すればするほど、苦くなってしまうこと。高濃度にするためには細かく分解する必要があるのですが、それに比例して苦みが増していくジレンマがあるわけです。

その点、UHA味覚糖は長年ゼラチン(コラーゲン)を扱ってきた会社であり、ゼラチンの苦みや臭みを消して、さまざまなフレーバーのグミにする知見や方法が、蓄積されています。今回もそういった知見を活用して香料や甘味料を加えつつ、特許出願中の独自製法によって、強い苦みを完全に消しました。コラーゲンを多量に含んでいるのに苦みをシャットアウトしたことが、プロドレ開発の最大の山場だったと思っています。

――クラウドファンディングの「Makuake」で2017年9月27日まで支援プロジェクトを実施していますね。

北中: 最初のプロトタイプとして、バジル入りのイタリアンを試作しましたが、その後、味を再考し、Makuakeでは、「玉ねぎ味」と「ごま味」の2つのドレッシングを支援に対するリターンとして提供する予定です。

Makuakeのプロジェクトページ。2017年9月7日時点で180万円を超える支援額を集めていた

――生野菜にかけて実際に試食してみましたが、タンパク質特有のうまみが強く、野菜に少し付けるだけでおいしく食べられました。コラーゲンの濃度が高いためにトロッとした粘り気があり、野菜とよく絡むことから、多めのサラダでも大さじ1杯(20ml)程度で十分味が付きますね。

北中: ノンオイルドレッシングの弱点は水っぽく、野菜に絡みにくいこと。それに対し、プロドレはねっとりと絡むため、ドレッシングが皿の底に落ちて溜まってしまうことを防げます。また、大さじ1杯で、鶏のササミ1本分、コラーゲンドリンク2本分(コラーゲン1万mg)を摂取することができます。うまみが濃いぶん、10ml当たりの食塩相当量は0.2gと、一般的なノンオイルドレッシングの0.7gに比べて少なく、減塩効果も期待できます。

プロドレを泡だて器でかき回すと、空気が混ざって変色し、乳白色のドレッシングになる。今後、こうした使い方、食べ方のアレンジを情報発信していく予定
蜂蜜に近い粘り気が特徴。サラダの野菜によく絡むため、大量にかけなくても味がしっかり付く

――腹回りが気になるメタボ男性や、低糖質ダイエット中の女性に人気が出そうですね。今後の展開は?

佐藤: Makuakeで得られた支援金は、工場で製造ラインを構築する資金に当てたいと考えています。10月には支援者にリターンとなる製品を発送し、2018年春には一般販売する計画です。価格は680円を想定しており、一般的なドレッシングと比べたら高額。しかし、アーリーアダプターとして体づくりに関心が高い男性が手にしていただけることを見込み、その後女性のダイエット市場に食い込めればと。

我が社はお菓子の販路は持っていますがドレッシングの販路はなく、まだ売り場を確保できていないのが現状です。社内でも「畑違いの製品をどうやって売っていくのか」と、物議を醸している面もあります。Makuakeでニーズがあることを証明し、本格的な生産と販路開拓につなげていくことが当面の目標です。

(文 高橋学、写真 宮川透)

[日経トレンディネット 2017年8月23日付の記事を再構成]

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