こんにちは。ライターの大宮冬洋です。公務員の村田亜紀子さん(仮名、34歳)とランチをご一緒しながらお話を聞いています。
深い青色のワンピースがよく似合う亜紀子さん。ときどき浮かべる笑顔がすてきな美人です。30代に入ってから、職場の既婚男性から3人連続で言い寄られているとのこと(前回記事はこちら)。2人まではきっぱり断ったものの、3人目として現れた彰さん(仮名、30歳)は強敵だったのです。
「2年前の4月に私が異動になった職場の同僚です。共通の女友達がいたのがきっかけで、5月に10人ぐらいでバーベキューをしました。帰りの電車で席が隣になりましたが、そのときに彼もお酒好きなんだと知ったぐらいです。結婚指輪をしていたので男性として意識することはありませんでした」
夏には宿泊ありのキャンプに出かけます。男女合わせて12人。いずれもアラサーの同世代。亜紀子さんを含めた全員が同じ自治体に勤務する公務員です。半数は既婚ですが、配偶者を連れてきた人はいません。自由な職場ですね……。
もちろん彰さんも参加して、お酒という共通の趣味がある亜紀子さんとの距離は少しずつ縮まっていきました。
「みんなで会った後、二人で終電近くまで飲み直すこともありました。私は男性の友だちとも二人で飲みに行くことはあるので抵抗感はありません」
しかし、その頃には亜紀子さんも彰さんへの好意が募っていました。話をしていて楽しく、女心をくすぐるのが上手な男性だからです。別れた後は「ちゃんと帰れた?」とLINEメッセージを送ってくる、会話や表情で「私のことを好きなんじゃないか」と思わせる、などです。
彰さんのほうは亜紀子さん以上に恋愛感情があったようです。といっても、彼は既婚者なんですけどね。毎日のようにLINEを送って来るようになり、妻との旅行に行くのが面倒だ、という内容もありました。
「家庭に影響がないなら」とOKした休日デートで…
秋が深まる頃、彰さんは一線を越えようとします。休日の映画館デートに亜紀子さんを誘って来たのです。
「休みの日に二人だけで会うのはさすがにマズイですよね。奥さんと行けば、と返信したのですが、『ヨメは映画に興味がないから問題ない』と言うんです。家庭に影響がないのであればとOKしてしまいました」
彰さんの妻が本当に映画には興味がなかったとしても、休日にデートをしたことがバレたときに「家庭に影響がない」はずはあり得ません。相手が自分に特別な好意があることをわかったうえで、頻繁に二人きりで飲みに行ったり、休日にデートをしたりするのは、明確なOKサインを出しているのと変わりません。
亜紀子さん、「楽しいから」という理由だけで特定の男性と二人きりで会い続けるのはリスクを伴う行為だと知りましょう。妹みたいにかわいらしい亜紀子さん。脇の甘さが目立ってなんだか心配なので、つい説教臭くなってしまいました。
さて、休日デートはどうなったのでしょうか。映画館を出てから、当然のように二人は飲みに行きます。そして、終電近くまでファミリーレストランでお茶をしたそうです。別々の家に帰ることを惜しむかのように……。
「こんなに好きになるとは思わなかった」
ついに彰さんが告白。亜紀子さんは「既婚者と付き合うつもりはない」と諭します。しかし、終電を待つ駅のホームで抱き寄せられ、つい身を委ねてしまったのでした。
「このままではヤバいな、と思って慌てて体を離しました。でも、気まずくなりたくありません。ちゃんと向き合って友達でいようと思い、平日に改めて二人で会うことにしました」
亜紀子さんと彰さんは同じ自治体の同じ職場で働いています。しかも、毎日のように残業をしている忙しい職場でありながら、若手の職員はよく一緒に遊んでいるほど親しい間柄です。「気まずい関係になりたくない」という亜紀子さんの気持ちは少しわかります。でも、ここまで関係が深くなってしまったら、どちらかが傷つく勇気を持たないと落着しないのではないでしょうか。続きはまた来週。
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に「30代未婚男」(共著/NHK出版)、「バブルの遺言」(廣済堂出版)、「私たち『ユニクロ154番店』で働いていました。」(ぱる出版)など。電子書籍に「僕たちが結婚できない理由」(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京・愛知・大阪のいずれかで毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/
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