6000円無線イヤホン3機種 装着感に差、音質横並び
音質と装着感のバランスがいい6000円前後のBluetoothイヤホンは、どれが優れているのか? AV評論家の折原一也氏が、人気の3機種を徹底的に比べた。
2017年にイヤホンを買うなら「ワイヤレス」だ。イヤホンジャックが廃止されたiPhone 7の発売から1年近く過ぎ、イヤホンは、有線からワイヤレスのBluetoothへのシフトが進んでいる。iPhoneだけでなくAndroidスマートフォン(スマホ)ユーザーも「ワイヤレスのイヤホンのほうがケーブルがなくて便利なのでは……」と興味を持ち始めたのではないだろうか。
Bluetoothイヤホンの相場は、激安クラスの製品なら3000円前後、ある程度の音質も求めるなら6000円前後、アップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」といった最先端の製品を求めるなら、1万5000円前後が相場だ。本記事では、ワイヤレスイヤホン入門におすすめの、音質と装着感のバランスがいい「コスパ高」の6000円前後の最新イヤホンに注目した。
Bluetoothイヤホンを購入する際、チェックすべきポイントはどこだろうか。
音質はもちろんだが、まずは操作性や装着感をチェックすべきだ。ワイヤレスイヤホンはケーブルからは解放されるが、リモコンの形状やBluetoothの通信レシーバーやバッテリーを収納する本体デザインが製品ごとに違うため、これらの項目が意外に異なる。
通勤・通学、スポーツなどの使い勝手に大きく影響する連続駆動時間も重要。目安は連続駆動8時間以上だ。
Bluetoothによる音楽の伝送方式(コーデック)については、iPhoneならば「AAC対応」、Androidでは「aptX対応」なら高音質に対応している。しかし、音質はイヤホンも含めた製品全体の作りが重要なので、コーデックはあくまで参考値。ただし、aptX対応の機種はゲームや動画での音の遅延を避けられるので、音楽以外での使用でも役に立つ。
以上のポイントをふまえつつ、最新機種であるオーディオテクニカの「ATH-CKR35BT」、ソニーの「MDR-XB50BS」、Skullcandy(スカルキャンディ)の「Ink'd wireless」の人気機種を、6000円前後で購入できる「コスパ高モデル」としてピックアップし、音質や装着感・携帯性を5つ星で評価した。
オーディオテクニカの新入門モデル
実売価格/5970円
【5つ星評価】
音の情報量 ★★★★
音の広がり ★★★★
低音 ★★★★
装着感 ★★★★
操作性 ★★★
日本メーカーのオーディオテクニカが原音再生・高解像度・高レスポンスをコンセプトとしている「Sound Realityシリーズ」。その最新モデルとして17年6月に登場した、Bluetoothイヤホンの入門モデルだ。コーデックはAACに対応し、連続再生時間は7時間。
同製品は、襟元にバッテリーケースを固定する「Clip-On」という装着スタイルが特徴。ケーブルを首の後ろに回しつつ襟にクリップするという、合理的な作りだ。ただし、スーツやワイシャツのような襟のある服以外では背中に垂れ下がる形となってしまう。ケーブルの途中にリモコンが付いている。
サウンドは音の空気感とライブ感を引き出したタイプで空間をうまく作り出すが、音数の多い楽曲を聴くとアラも見えやすいタイプ。ロックではエレキギターの音はキツくなりがちだが、ベースラインは適度なパワー感とクリアさを両立し全体のバランスは整えられている。ジャズやダンス系といった空間の響きのある音源のほうが相性が良いだろう。
ソニーの「スポーツ志向・重低音イヤホン」
実売価格/6590円
【5つ星評価】
音の情報量 ★★★★★
音の広がり ★★★★
低音 ★★★★★
装着感 ★★★★
操作性 ★★★★
ソニーのイヤホンのなかでも重低音を追求する「EXTRA BASSサウンド」モデル。スポーツ向けのモデルに位置づけられ、IPX4相当の防滴対応で汗がかかっても安心。デザインはコントロールボックスをイヤホン本体に内蔵する。コーデックはAAC対応で連続再生時間は8.5時間。
装着するとき、毎回、耳の形にアークサポーターを合わせるため時間がかかる。かばんやポケットから取り出してすぐ聴ける手軽さはないが、耳の内側へのフィット感は抜群。左右をつなぐケーブルは首の後ろに回すのみでシンプルだ。
ズンズンと重低音の響くサウンドかつ、6000円台という価格帯で考えると音数も豊富。EDMのダンス系だけでなくJ-POPのボーカルの声も立体感、ジャズも響きのついたサウンドでうまく表現していた。静かな部屋で聴くと低音がやや強めではあるが、ランニング中や通勤・通学といった環境では、音質のバランスがいい機種だ。
米国ブランドのおしゃれイヤホン
実売価格/5470円
【5つ星評価】
音の情報量 ★★★
音の広がり ★★★★★
低音 ★★★
装着感 ★★★★★
操作性 ★★★★★
米国のおしゃれイヤホンブランドで、日本でも若者に人気の「Skullcandy(スカルキャンディ)」のワイヤレスイヤホン。最大の特徴は「ネックバンド型」と呼ばれる、バンドを首から肩にのせそこからイヤホンが伸びるスタイルだ。先端部がリモコンを兼ねており装着したまま音量調整もしやすい。連続再生時間は8時間。
バンドはシリコン素材で丸められるほどに柔らかく、ポケットに丸めて持ち歩ける。装着時は首まわりのバンドが目立つが、ファッションとしても見た目もよい。4色のカラーバリエーションから好みの色を選んで、服装と合わせたアクセントとして使える。
サウンドは若干軽めではあるが高域までスムーズに伸び聴きやすい。J-POPの音源を聴いてもボーカルはドライにセパレートして聞こえるし、ロックのベース音もタイトなサウンドで心地よい。高音質を追求するタイプではないが、J-POPだけでなくジャズやクラシックといった音源もそつなく鳴らすという意味で、よくできている。
筆者の評価は……
今回紹介したオーディオテクニカ「ATH-CKR35BT」、ソニーの「MDR-XB50BS」、Skullcandyの「Ink'd wireless」の3機種。いずれも6000円前後の人気モデルとして選出しているが、大きく差があったのは携帯性・装着性だ。
最もスタンダードなスタイルに近いのがオーディオテクニカのATH-CKR35BTだ。襟元に固定するスタイルは通勤・通学中に電車内で身につけるならピッタリ。
ただ、実際に装着してみると、片側のみのリモコンがあるため、襟元に固定すると左右非対称にケーブルが垂れる。筆者としては装着感に納得がいかなかった。このスタイルかつ、リモコンが欲しいという人向けのモデルだ。
ソニーMDR-XB50BSは、バッテリーもリモコンもイヤホン部分に一体化されている、筆者としては理想のスタイル。ただし、そのぶんイヤホン本体が大きくなっている。実際に使ってみると、イヤホン本体のサイズはともかくアークサポーター付きのイヤホンは取り付けしづらく、見た目も電車では目立つのが気になった。一方、スポーツ用としては文句なしのモデルだろう。
Ink'd wirelessは、リモコンやバッテリーを目立たなくするのを諦めて「ネックバンド」にする方向に振り切ったモデル。実際に装着するとバンドは邪魔にならないし、リモコンとしても使いやすく、カジュアルながら見た目も悪くない。特に夏場はYシャツ、Tシャツの上に身に着けるアクセントにもなる。
音質については、3機種ともそれぞれ「それなりに良かったが、突出している機種はない」というのが筆者の評価だ。同価格帯でさらなる高音質を求めるなら、有線イヤホンのほうがいいだろう。
Ink'd wireless(Skullcandy)
今回は、装着感で最も納得できた機種としてSkullcandyの「Ink'd wireless」を選出した。
(ライター 折原一也)
[日経トレンディネット 2017年7月28日付の記事を再構成]
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