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「ささいなことでイラッ」 寛容力が下がるワケ 『寛容力のコツ』著者に聞く(1)

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2017/8/23

元自衛隊「心理教官」の下園壮太さんに、寛容力の高め方について聞きました(インタビュー写真:菊池くらげ)
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

ささいなことに腹を立てず、ちょっとした言葉に傷つかない人になりたい。そう思っても、このストレス社会では不可能なのではないか、と思う読者も多いかもしれない。『寛容力のコツ』の著者である心理カウンセラーの下園壮太さんは、「寛容でありたいと思う人は、誰かにイラッとするたびに相手を責め、同時にどこかで自分を責めている」と言う。さらには、寛容でなくなる直接的な原因として「疲労」がかなり影響する、と解説する。私たちが自ら意識して寛容力を高めることは、はたして可能なのか。下園さんに聞いた。

■社会全体を覆う「怒り」は、社会の損失でもある

――下園さんは、自衛隊で長く「心理教官」を務めてこられ、退官後は一般の人を対象に心理カウンセラーとして活動をされています。自衛隊の隊員と一般の人を比べて、メンタルの面で違いはあるのですか?

(インタビュー写真:菊池くらげ)

あまりないですね。みなさん、自衛官に対して特殊な感じを持っておられて「なにか特別な技法を使ってカウンセリングをしてきたのでは」と期待してくださるのですが、同じ人間ですから、同じようなことで悩んでいるし、私自身、カウンセリングする手法も同じやり方を使ってきました。

ただ、一つ言えるのは、自衛隊の隊員は肉体を鍛えているということと、対人関係に慣れている、という特徴があること。自衛隊に入隊すると、隊員は最初の3カ月で、濃厚な集団生活を経験します。そこではわざと精神的に追い込まれたり、助け合わないと前に進まないという条件にさらされます。その経験を通して、だいぶ、メンタル面も強くなるのです。

――メンタル面、というとまさにテーマになってくるのが「寛容力」ですよね。 今、社会全体に寛容さが減り、ぎすぎすしていると感じます。新著『寛容力のコツ』でも芸能人のスキャンダル報道など、小さな正義を振りかざし、誰かを追い詰めようとする風潮があるということが書かれていました。社会を覆っている空気感も、この本を執筆しようと思われたきっかけの一つだったのでしょうか。

『寛容力のコツ』(三笠書房)

その通りです。日替わりのように、政治家や芸能人をバッシングする報道を目にします。いわゆる著名人だけでなく、社会全体に、「何か問題が起こったらその当事者をとことん追及するのが是だ」という空気があります。

もちろん、それは論理的には正しいのかもしれませんが、理想と現実は異なる。「水清ければ魚棲まず」ということわざがあるように、水が清らかすぎると魚は棲まないし、人が潔白すぎると仲間もできない。人間もときには間違いを犯すものなのに、それを「絶対に許してはならない」という空気が出来上がるのです。

――まさに、「寛容力の低下」ですね。

この寛容力の低下に大きく絡んでいるのがネット環境だと私は考えています。数年前に、病院での対応に腹を立て、それを自身のブログにつづったところそれが炎上し、さらにはマスメディアも乗っかって個人攻撃した結果、自殺に追い込まれた議員さんがおられました。

今、個人がそれぞれ、何らかの「怒り」を抱えているとします。そのときに、誰でも匿名で発言ができるネット環境があると、炎上案件に乗っかることで、ストレス解消になるのです。これは昔からの小さなコミュニティでは「スケープゴート」といわれた仕組みです。

誰か一人をたたくことで、自分は浮き上がる。しかし、たたいた当人は次第に、「次は自分がそうなるかもしれない」と思い、他人を警戒しながら生きていかなくてはならなくなります。誰もが誰をも警戒する社会、それは社会全体の損失だと思うのです。

■価値観の多様化によって「我慢」が増えている

――誰もが無意識のうちに「次は自分がたたかれるかも」という警戒心を感じている、ということですか?

そう考えています。ただ、もともと人間は本能的に「相手は自分を殺すかもしれない」と、そばにいる人間に対して警戒する特性を持っているのです。これは、自分の命を自分で守るためです。私は、感情のメカニズムを考えるとき、現代人の感情やそれによって生じる体の反応は、原始人の頃からさほど変わっていない、という考え方を基本としています。しかし、日本人は農耕社会で長くやってきたため、例えばアメリカの狩猟社会(現在は銃社会)とは異なり、「身近な環境にいる相手に対しては安心感を持っていい」という信頼感を持てていたはずです。

ところが、ネット社会や、ストレス社会による疲労によって、人は周囲への警戒感を高めるようになりました。人に対する信頼、というものが失われ始めている。だからこそ寛容力を見つめ直す必要があるのです。そしてもう一つ、「価値観が多様化した」ということも、実は寛容力の低下に関わっていると私は感じています。

――そうなのですか? 価値観が多様化すれば、いろいろな考え方を受け入れられるようになり、むしろ寛容力が高まるのではと思っていたのですが。

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