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「ささいなことでイラッ」 寛容力が下がるワケ

『寛容力のコツ』著者に聞く(1)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

ささいなことに腹を立てず、ちょっとした言葉に傷つかない人になりたい。そう思っても、このストレス社会では不可能なのではないか、と思う読者も多いかもしれない。『寛容力のコツ』の著者である心理カウンセラーの下園壮太さんは、「寛容でありたいと思う人は、誰かにイラッとするたびに相手を責め、同時にどこかで自分を責めている」と言う。さらには、寛容でなくなる直接的な原因として「疲労」がかなり影響する、と解説する。私たちが自ら意識して寛容力を高めることは、はたして可能なのか。下園さんに聞いた。

社会全体を覆う「怒り」は、社会の損失でもある

――下園さんは、自衛隊で長く「心理教官」を務めてこられ、退官後は一般の人を対象に心理カウンセラーとして活動をされています。自衛隊の隊員と一般の人を比べて、メンタルの面で違いはあるのですか?

あまりないですね。みなさん、自衛官に対して特殊な感じを持っておられて「なにか特別な技法を使ってカウンセリングをしてきたのでは」と期待してくださるのですが、同じ人間ですから、同じようなことで悩んでいるし、私自身、カウンセリングする手法も同じやり方を使ってきました。

ただ、一つ言えるのは、自衛隊の隊員は肉体を鍛えているということと、対人関係に慣れている、という特徴があること。自衛隊に入隊すると、隊員は最初の3カ月で、濃厚な集団生活を経験します。そこではわざと精神的に追い込まれたり、助け合わないと前に進まないという条件にさらされます。その経験を通して、だいぶ、メンタル面も強くなるのです。

――メンタル面、というとまさにテーマになってくるのが「寛容力」ですよね。 今、社会全体に寛容さが減り、ぎすぎすしていると感じます。新著『寛容力のコツ』でも芸能人のスキャンダル報道など、小さな正義を振りかざし、誰かを追い詰めようとする風潮があるということが書かれていました。社会を覆っている空気感も、この本を執筆しようと思われたきっかけの一つだったのでしょうか。

その通りです。日替わりのように、政治家や芸能人をバッシングする報道を目にします。いわゆる著名人だけでなく、社会全体に、「何か問題が起こったらその当事者をとことん追及するのが是だ」という空気があります。

もちろん、それは論理的には正しいのかもしれませんが、理想と現実は異なる。「水清ければ魚棲まず」ということわざがあるように、水が清らかすぎると魚は棲まないし、人が潔白すぎると仲間もできない。人間もときには間違いを犯すものなのに、それを「絶対に許してはならない」という空気が出来上がるのです。

――まさに、「寛容力の低下」ですね。

この寛容力の低下に大きく絡んでいるのがネット環境だと私は考えています。数年前に、病院での対応に腹を立て、それを自身のブログにつづったところそれが炎上し、さらにはマスメディアも乗っかって個人攻撃した結果、自殺に追い込まれた議員さんがおられました。

今、個人がそれぞれ、何らかの「怒り」を抱えているとします。そのときに、誰でも匿名で発言ができるネット環境があると、炎上案件に乗っかることで、ストレス解消になるのです。これは昔からの小さなコミュニティでは「スケープゴート」といわれた仕組みです。

誰か一人をたたくことで、自分は浮き上がる。しかし、たたいた当人は次第に、「次は自分がそうなるかもしれない」と思い、他人を警戒しながら生きていかなくてはならなくなります。誰もが誰をも警戒する社会、それは社会全体の損失だと思うのです。

価値観の多様化によって「我慢」が増えている

――誰もが無意識のうちに「次は自分がたたかれるかも」という警戒心を感じている、ということですか?

そう考えています。ただ、もともと人間は本能的に「相手は自分を殺すかもしれない」と、そばにいる人間に対して警戒する特性を持っているのです。これは、自分の命を自分で守るためです。私は、感情のメカニズムを考えるとき、現代人の感情やそれによって生じる体の反応は、原始人の頃からさほど変わっていない、という考え方を基本としています。しかし、日本人は農耕社会で長くやってきたため、例えばアメリカの狩猟社会(現在は銃社会)とは異なり、「身近な環境にいる相手に対しては安心感を持っていい」という信頼感を持てていたはずです。

ところが、ネット社会や、ストレス社会による疲労によって、人は周囲への警戒感を高めるようになりました。人に対する信頼、というものが失われ始めている。だからこそ寛容力を見つめ直す必要があるのです。そしてもう一つ、「価値観が多様化した」ということも、実は寛容力の低下に関わっていると私は感じています。

――そうなのですか? 価値観が多様化すれば、いろいろな考え方を受け入れられるようになり、むしろ寛容力が高まるのではと思っていたのですが。

そこはちょっと複雑なのです。私は今50代半ばですが、私が成人になった頃は、結婚にしろ、仕事の仕方にしろ、わりと単一の価値観が存在していました。例えば自衛隊員が休暇で海外旅行に行く、などと言うと「自衛隊員が海外に遊びに行って、そんなんで国を守れるのか」と当たり前に批判された。25歳を過ぎたら結婚するもの、という価値観があったので、「まだ結婚しないの?」とお節介を焼く人も受け入れられたのです。今そんな人がいたら「セクハラだ」と叱られるかもしれません。

価値観が多様化したということは、「今はいろいろな生き方があっていい」という表の情報の裏で、「でも本当は文句を言いたい」という本音がくすぶる、という状況を示している、つまり、社会的、人間関係的には軋轢(あつれき)が生じやすい状況を生むのです。言いたいことがあるけれど、日本人は基本的に人に気を使い、我慢をする民族なので、本音をのみ込んでいる。

そこにネットで何らかのルール違反をした人が登場すると、「俺もずっとそう思ってた!」と食いつき、そして簡単に「炎上」するのです。ところが、炎上を引き起こした各人は軽い気持ちでぽんとコメントして、「ちょっといじっただけ。ディスっただけ」と思っていても、攻撃された本人は絶えずずっと、大人数から攻撃を受けます。加害者が想像するよりも圧倒的に大きなダメージを被害者が受けている。これがネットの怖さです。

――まさにネットは、負の感情の増幅装置のようなものですね。私たちは、どう向き合えばいいのでしょう。

恐らく慣れてくるとは思います。ただ、10年はかかるでしょう。かつて、2ちゃんねるに書かれたことを、会社組織が「こんなことを書かれた」と大きく取り上げていた時代がありました。しかし今は「2ちゃんねるだろ? 好き勝手言っているだけだよ」とかわせるようになってきた。同じように、ネットの情報の信頼度にも、みんなが本気でそう思っているかどうかにも幅がある、ということが分かり、「ネットで言われていることだろ?」と冷静に受け止めることができるようになる。つまり、耐性ができてくるのだろうとは思います。

「自分にできること」を考えるのが寛容力

――ネットの記事を読んでいると「結局、今の日本がダメだからだ」「社会の構造がこうだから仕方ない」という結論で終わっているものが多いと感じます。しかし、下園さんの著書では、自分でできることを見つめ、自分がアクションを起こすことこそ大切だというメッセージを強く感じました。

私がやっている仕事は、社会を批評することではなく、対人援助だからです。こういう社会だからしょうがない、という理屈は一つあるとしても、それだけでは解決能力を持ちません。世の中がそうだからしょうがない、という考えは、「自分には何もできない」と言っているのと同じこと。対抗手段がないと人の意欲は低下し、世の中をさらに警戒するようになる。自分が攻撃されないように、相手を威嚇し、常にイライラするようになる。

それはすごくもったいないことだと思いませんか。そうではないよ、あなたにはできることがたくさんある、それが寛容力を身につけていくことなんだよ、ということを本書ではお伝えしたかったのです。

 ◇  ◇   ◇

次回は、中年以降に「攻撃的になる人」と「丸くなり穏やかになる人」の違いはどこにあるのか、ベテラン世代の寛容力の高め方について聞いていく。

下園壮太さん
 心理カウンセラー、MR(メンタルレスキュー)協会理事長、同シニアインストラクター。1959年鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。1996年陸上自衛隊初の心理教官に。自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士など)やレンジャー隊員などに、メンタルケア、自殺予防、惨事ストレスコントロールについて指導、教育を行う。2015年退官。近著に『寛容力のコツ』(三笠書房 知的生きかた文庫)。

(ライター 柳本操)

[日経Gooday 2017年7月19日付記事を再構成]

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