ハイスタ、小沢健二 ベテランが次々復活、若手に刺激
Hi-STANDARD(ハイ・スタンダード、以下ハイスタ)、小沢健二、THE YELLOW MONKEY、コーネリアスなど、1990年代にヒット曲を連発したベテランアーティストが、10年以上ぶりに新曲を発売して話題を呼んでいる。フェスで若手のミュージシャンと共演したことなどをきっかけに、刺激を受けたベテランが次々と創作活動を再開しているのだ。
ベテランの新曲は売れ行きも好調だ。THE YELLOW MONKEYが15年ぶりに発売した『砂の塔』(2016年10月発売)は13万枚を超えた。ハイスタの16年ぶりの新曲となる『ANOTHER STARTING LINE』(同年10月発売)は22万枚を突破した。
ハイスタは、単にリリースが久々だっただけでなく、「ファンのパッケージ離れ」が進む音楽ビジネスの現状にも一石を投じた。新曲をリリースする際、ネットを含め一切の事前告知をせず、最初の約3週間は店舗のみの販売とすることでファンを店頭に呼び戻し、CDショップ発のヒットを生み出したからだ。
タワーレコード新宿店のチーフ・石黒大貴氏は、発売当日の様子に目をみはったという。「レジの行列が途切れず、あんなにCDが売れるのは入社以来初めて見ました(笑)。90年代にリアルタイムで聴いていた30~40代のお客様が多かったですが、10~20代の若い世代の姿も目を引きました」
ハイスタの影響を受ける若手バンド、04 Limited Sazabysらはツイッターで、リリースの喜びや斬新な売り方をつぶやいた。そうした、新世代バンドの言動が若い音楽ファンを動かし、10~20代にまで購買層を広げる一因となったと考えられる。
逆に、ベテランアーティストが若手のミュージシャンから刺激を受けている面も見逃せない。小沢健二は音楽番組『LOVE MUSIC』(フジ系)で、「(04年結成の3人組シティポップバンド)ceroのようなアーティストがいるから、またポップスをやろうと思った」と発言。ハイスタも、11年から再開している自身主催の音楽フェス「AIR JAM」で、ONE OK ROCKやWANIMAなどの若手バンドと共演しており、様々な刺激を受けているようだ。
若手が台頭するなかで、ベテラン勢の「音楽魂」が再びかき立てられているわけで、それがベテランアーティストが次々と復活する大きな原動力ともなっているのだろう。
今後も、T-BOLANが8月16日に21年ぶりの新曲を収録したベスト盤の発売を予定。KICK THE CAN CREWも8月30日にニューアルバムを発売する。
ハイスタと04 Limited Sazabys、小沢健二とceroなどのように、ベテランと若手が刺激を与え合うことで、お互いのファン層の幅が広がる効果も生まれている。相次ぐベテラン勢の複活は、音楽市場のすそ野を広げる役割も果たしている。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2017年8月号の記事を再構成]
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