岡崎体育、英語風歌詞で話題 笑いとクールで共感呼ぶ
2016年5月にデビューした27歳のソロアーティスト岡崎体育。デビューアルバム収録のテクノポップ「MUSIC VIDEO」は、「カメラ目線で歩きながら歌う」などのミュージックビデオにありがちな演出をコミカルな歌詞にし、岡崎自身がミュージックビデオ内でそれらを再現して話題になった。
ミュージックビデオはYouTubeの再生回数が2200万回を超える(7月5日現在)。メジャーデビュー前の16年1月にはツイッターに「すりきり一杯の米を計り」などの、お米の炊き方を書いたメモを、英語風にカッコよく発音したネタ動画をアップし、20万リツイートを記録した。こうした工夫の理由を「まずはアーティストや楽曲に興味を持ってもらう仕掛け作りが大切な時代だから」と話す。
自らの音楽ジャンルを「盆地テクノ」と名乗る。京都盆地の宇治で育ち、デビュー後も活動拠点としていること。また音楽活動を始めた頃は、シンプルな音数のテクノ系の楽曲を作っていたからだという。デビューを機に現在は、「幅広い層に聴いてもらえるよう、ジャンルを広げていっています」。
2ndアルバム「XXL」は、EDMやラウドロック、ファンクなど前作にはない多彩なジャンルの楽曲から成る11曲。「前半は笑えるネタ系の楽曲、後半はアーティスト性の高い真面目な楽曲と、1枚で2枚分楽しめる構成です」
前半に収録された「感情のピクセル」は、今はやりのラウドロックを岡崎テイストに仕上げた作品。Aメロのクールな世界観の歌詞から一転、サビでは動物の名前がたくさん並んだふざけた歌詞へと変わる。ミュージックビデオでも、長野の廃工場で撮影した岡崎がボーカルを務めるバンドのカッコいい演奏シーンから、着ぐるみの動物たちが出てくるファンシーな映像に切り替わる演出だ。
ファンクナンバー「Natural Lips」は、前述のツイッターで話題となったお米の炊き方のネタ動画から着想した1曲。彼女にフラれた男の心情をつづった日本語詞をわざと英語風に歌う。「『湯浴み』は"you and me"、『堪え難い』は"tiger tie"など、英語のように聴こえる日本語を苦労して探しました」
一方、後半収録の「鴨川等間隔」では、1人で過ごす不毛な時間の寂しさをメロウなサウンドに乗せて、笑いゼロで真剣に歌っている。
今も地元・京都のスーパーマーケットでバイトを続ける岡崎。「金銭的な理由ではないです。音楽スタジオのようなバイト先と違い、自分が世の中でどれぐらい知られているのかを改めて認識できる貴重な場なんです」
ネット動画世代ならではの感覚で生み出す岡崎の楽曲は、今後も共感を呼ぶ層を広げていきそうだ。
(「日経エンタテインメント!」7月号の記事を再構成。敬称略。文/中桐基善 写真/藤本和史)
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