週2回たった4分の体メイク スロー&クイックの衝撃

日経トレンディ

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「ラクな健康法ほど効率がいい」――。最新の研究などから、科学的に証明されつつある事実だ。

例えばランニング。体脂肪を落としたいなら、歩くのと同等か、むしろ遅いぐらいのスピードで走る「LSDランニング」が最も有効ということがわかってきている。人と会話しながら走れる程度が目安だ。一流のアスリートならいざ知らず、「極端な糖質制限」「毎日10kmの走り込み」などのストイックな健康法は、多くの人にとってむしろ効率が悪いことになる。

「2重の刺激」で強烈に効かせる

東京大学大学院教授 石井直方氏。専門は身体運動科学、筋生理学。81年、ボディビル世界選手権3位。著書に『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など

ジムに行く時間はないが、スマートな体は手に入れたい。そんな人に最適な筋トレがある。1回僅か4分で効率よく筋肉に負荷をかけられる「スロー&クイック」トレーニングだ。

特徴は、まず極端にゆっくりした動きのトレーニング「スロー」を行い、その直後に素早い動きのトレーニング「クイック」を組み合わせて行う点。「スロー」では4秒かけて関節を曲げ、さらに4秒かけて関節を伸ばす。「クイック」では同じ動きをできるだけ速く繰り返す。いずれも関節は伸ばし切らないのが鉄則だ。

これがなぜ、筋肉を鍛えるのに有効なのか。例えば、重いダンベルを持つなどの強い力を発揮すると、筋肉が収縮して筋内の血流が悪化。すると血液の酸素運搬能力が奪われ、筋内が酸欠状態になる。「細かいメカニズムは解明されていないが、筋肉が酸欠状態になると疲労が進み、タンパク質が合成されることがわかっている」(東京大学大学院教授の石井直方氏)。

「スロー」なら、重りを使わなくても筋内を酸欠状態にできる。関節を伸ばさずに休みなく負荷をかけ続けることで、じわじわと血流が制限されていくためだ。いわば、筋肉を“だます”トレーニングといえる。「強い力を瞬間的に使うよりも、むしろ弱い力を長く発揮するほうが、タンパク質がより合成されるというデータもある」(石井氏)。

近畿大学生物理工学部准教授 谷本道哉氏。大阪大学工学部卒業。専門は筋生理学、トレーニング科学。著書に『35歳からのカラダルールBOOK』(ベースボール・マガジン社)など

一方の「クイック」は、切り返しの加速を利用して瞬間的に強い負荷をかけることで、「スロー」だけでは引き起こせない物理的な筋損傷を生じさせる。石井氏とともにこのトレーニングを開発した近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉氏は、「筋肉の微細な損傷が修復される過程で、タンパク質のさらなる合成や筋線維の核の増加などが起きる。これらは筋肥大につながる刺激になる」と説明する。

スローで酸欠にし、クイックで速筋を鍛える

筋肉には、持久力に優れる遅筋と、瞬発力に優れる速筋がある。速筋のほうが肥大率が高いため、いかに効率よく速筋を使う運動に到達させられるかが筋肥大へのカギだ。スロー&クイックで筋肉を限界まで追い込むと、短時間で速筋を鍛えられる。

速筋を使うには、高強度が必要

では、どれくらいの頻度でやるべきか。傷ついた筋肉が修復される期間を与えるために、実は適度な休息が必要。毎日ではなく、むしろ週2回の筋トレが効率的だという。速い動作を繰り返す筋トレは関節に負担がかかるが、「『スロー』の後に行えば、過剰な速さは筋疲労のために抑えられる。関節への負担が少なくなり、ケガのリスクを軽減できて安全」(谷本氏)。

スロー&クイックを週3回、10週間行った50~60代の被験者12人の大腿部前部の筋厚(データ提供:谷本道哉氏)

谷本氏が昨年、50~60代の被験者12人に対して、週3回のスロー&クイックを10週間にわたって継続する実験を行った。その結果、全員の筋肉が肥大。平均で3mmの筋肥大が確認された。「筋肉は何歳でも強くなる。むしろ高齢になるほど伸びしろが期待できる」(谷本氏)。

ダイエットにはスクワット

太らないためには、下半身を鍛えるスクワットを優先的に行うべき。下半身には、大腿筋などの大きな筋肉が集まっている。ここを鍛えて基礎代謝を向上させれば、次第に安静時でも脂肪を燃焼できる体になっていく。

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