博多大吉が2位、タモリは3連覇 自虐キャラ系も躍進
タレントパワーランキング2017芸人編
2017年版の芸人タレントパワーは、タモリが3年連続でトップの座を守った。博多華丸・大吉やくりぃむしちゅー、若手では渡辺直美が躍進。全体的に「毒舌」カラーが薄まり、優しい芸風の人たちが上昇した。
日経エンタテインメント!が発表している「タレントパワーランキング」は、アーキテクトが3カ月に1度実施している、タレントの「認知度(顔と名前を知っている)」と「関心度(見たい・聴きたい・知りたい)」の調査を基に、2つのデータを掛け合わせて「タレントパワースコア」を算出、ランキング化したものだ。(調査の詳細は総合編の「タレントパワー、マツコが連覇 新垣、星野が急浮上」をご覧ください)
芸人部門では、タモリが3年連続でトップの座を守った。『ブラタモリ』(NHK)が相変わらず好調で、16年6月の「伊勢神宮」の回では18.6%の高視聴率を記録した。17年の年始には、12月31日に解散したSMAPへ向けて、「人生に勝敗なんてない」と直筆メッセージをスポーツ紙に寄稿したことが話題になり、多くの人の関心を集めた。
今回の調査でひときわ目を引いたのは、博多華丸・大吉だ。14年に初めてトップ30入りしてから毎年順位を上げ続け、ついに博多大吉が2位に浮上し、博多華丸も9位でトップ10入り。大吉が順位を上げた分、コンビは3位となったが、パワースコアは2ポイント上がっている。『ヒルナンデス!』(日テレ系)などのコンビの仕事のほか、華丸は酒飲みキャラを生かした『もらい酒みなと旅』(テレ東系)が定着。大吉は名アシストで特番にも頻繁に出演し、首位に肉薄するまでになった。
渡辺直美が女性芸人No.1
4位には、『世界一受けたい授業』(日テレ系)などのレギュラーが好調なくりぃむしちゅーがランクイン。16年4月の熊本地震を受け、6月にラジオ『オールナイトニッポン』を7年半ぶりに単発で復活させ、チャリティトークライブを開催するなど、故郷に貢献する活動に取り組んだ。12月に『しゃべくり007』(日テレ系)で有田が結婚を発表したことも関心度アップにつながった。
5位には内村光良が入った。2年連続でバラエティの年間平均視聴率1位となっている『世界の果てまでイッテQ!』(日テレ系)では、みやぞんという新たなスターが生まれ、監督・脚本・主演作品『金メダル男』が公開となった10月には、『ヒルナンデス!』で久々に相方の南原清隆と共演した。
そのほか、10月にワールドツアーに挑戦した渡辺直美が一気に順位を上げ、女性芸人No.1となる10位に入った。今年30歳になる若手という意味でもトップとなる。
上位はベテランがひしめくなか、芸歴20年未満の中堅では13位のサンドウィッチマン、19位の若林正恭がランクアップした。サンドウィッチマンは、『バイキング』(フジ系)などのレギュラー番組で存在感を示したことに加えて、富澤たけしが17年1月期ドラマ『カルテット』にレギュラー出演したタイミングで関心度がアップ。若林は4月からBSで1クール放送された『ご本、出しときますね?』で、趣味を生かす形でMCを務め、6月の『IPPONグランプリ』(フジ系)では初優勝するなど、ソロの仕事が支持された。コンビのオードリーも順位、パワースコア共に上昇した。
自虐・いじられキャラ躍進
今回の結果で見えてくるのは、今、支持されている芸人の特徴は、他人を攻撃することで笑いを取らない、共感や優しさを感じさせる人たちであること。これは、「急上昇」した面々を見てもよく分かる。
急上昇1位の渡辺直美は、自分を笑ってもらうことに徹する自家発電タイプ。2位の出川哲朗はリアクション芸人としてバラエティに欠かせない存在であり、「嫌いな芸人」の代表から、いまや「好きな芸人」と言えるほどの支持を得るようになった。3位の徳井義実は女子会のような共感型のトークができ、『今夜くらべてみました』(日テレ系)でその魅力を発揮している。
また、博多大吉に象徴される「自虐キャラ」が上位に上がってきており、4位にトレンディエンジェル、5位に山里亮太が入った。トレンディエンジェルはコンプレックスの薄毛を武器に、16年から大幅に増えたテレビ出演で、ネタだけでなくトークにも果敢に挑んだ。山里は、ラジオでの自虐発言が注目されたほか、16年10月から放送された『ねほりんぱほりん』では、訳ありのゲストの屈折や心の闇などに寄り添いながら、聞き手役を務めた。
さらに、出川にも当てはまる「いじられキャラ」が好かれる傾向。名前を間違われて「児嶋だよ!」と返すやり取りがすっかり定番化した児嶋一哉は10位に。バラエティでの癒し系としてポジションを確立している。13位の近藤春菜も同様の役回りだが、進行役の手腕もあり、16年3月から『スッキリ!!』(日テレ系)のMCになったことで、女性50代以上の支持が広がった。
このような傾向から、「毒」のイメージが強いダウンタウンや有吉弘行は今回は伸び悩んだといえる。安心感のある笑いが好かれるる今、和やかさを感じさせる人が求められていそうだ。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2017年6月号の記事を再構成]
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