終わるのが惜しくて、本を読み切れません
女優、ミムラ
大好きなエビフライや卵焼きは最後に食べるタイプ。そのためか、好きな作家の本を最後まで読み切ることができません。終わってしまうのが惜しいので、ちょっとだけ残して次の本に手を付けてしまいます。伝記物は本人の人生を終わらないままなので、なんだか気の毒です。この癖、どうしたらよいでしょう。(大阪府・女性・50代)
◇
相談者さんとお話がしたいです! 私もおいしいものは後にとっておいて、じっくり味わいます。食べ物はおいしく食べられるリミットが決まっていますが、本はないですものね。私は逆に喜々として一気読みして、読後感に長々浸るタイプなので、そこだけ違いますが……。
ご相談内容を読み返すほどに「そのままでもいいじゃないですか!」とニッコリしてしまう私がいます。いや、むしろこの読み方をまねしたい。だって本と長く関係性を続けられるすてきな読書法と思いましたし。
相談者さんのあふれる想像力の中に居を構えた本の登場人物たちは、幸せだろうと感じます。未完のストーリーを胸に秘めたまま年を重ねていくのも文学的で味わい深く、よいじゃありませんか。ロマンチックです。
と、このままでは回答として変な賛同なだけなので、読み切る方法を考えてみました。
私は書評の連載をやらせていただいているので、月に何冊かは必ず読み切らねばなりません。もともと放っておいてもたくさん読むのですが、締め切りがあるのは効くと思います。
なんとなく期日を決め、友達と読み終えた本の話をしたり、ブログや書評サイトに投稿する目標を立てたりするのはどうでしょうか。仲の良い読書友達がいるのなら、内輪の書評ごっこも楽しいです。もしかしたらそこで、お気に入りの本のエンディングをお預けにする以上の楽しさに出合うかもしれません。
また、電子書籍はいかがでしょうか。登場人物へも思いをはせる相談者さんの特徴から、実物でなくデータとしての本を読むことで、別の距離感で付き合えるかもしれません。本大好き人間の私も活用しています。
しかし、他人と本を共有したり、デジタルな場で本を読んだりすることは、相談者さんには不要かなという思いもチラリ。だって本一冊ずつとじっくり遊んでいるだけで、とっても楽しそうです!
読書好きとしてオツな楽しみ方のご伝授にお礼を申し上げます。あわよくば是非その本への愛情とワクワクを、時には他の方とも共有して、本たちがもっと愛されるように先導してやってくださいませ。
[NIKKEIプラス1 2017年5月27日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。