カンヌに登場した3つの「怪物」 世界の不安を映すカンヌ国際映画祭リポート2017(2)

オクジャは優しくて賢い。それゆえに悲しい。資本主義の暴走と世界の不安を、巨大ブタという具体的、独創的な事物で描ききる。そこにポン・ジュノの本領がある。

■空中浮遊する難民と欧州の危機

同じく19日にコンペで上映されたハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督『木星の月』にも“怪物”が登場した。

ハンガリーに不法入国しようとした難民の青年が、国境地帯で銃撃される。ところがどうもおかしい。飛び散った血のしずくが浮き上がり、やがて全身が空中に浮遊する。傷がいえた青年は、自在に浮遊する能力を身につけていた。

コーネル・ムンドルッツォ監督『木星の月』

難民キャンプでその秘密を知った医師は、青年をブダペストに連れて行く。酒飲みで金に汚い医師は青年に、国境ではぐれた父のもとに逃がしてやるからと言い含めながら、その超能力を使って金を稼ぐ。

『ホワイト・ゴッド/少女と犬の狂詩曲』で都市を占拠する犬たちの反乱を描いたムンドルッツォが、今回も長回しのカメラで都市に出現する非日常の光景をとらえる。空中浮遊する青年は時に天使のようにも見える。

題名は木星の第2惑星エウロパのこと。ヨーロッパの隠喩だ。難民の青年が命からがらたどり着いた夢の土地、ヨーロッパの退廃とモラルの危機がここには映っている。ムンドリッツァは「この映画をヨーロッパの物語として見てもらうことが大事だ。ハンガリーも含むヨーロッパで進行している危機を背景にした物語だ」と説明している。

『散歩する侵略者』の不穏な空気

21日にある視点部門で上映された黒沢清監督『散歩する侵略者』は地球侵略をもくろむ宇宙人の物語である。

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