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発酵食品から発見 日本食の健康効果、70年代に特徴 日経BP総研マーケティング戦略研究所 西沢邦浩

2017/5/11

PIXTA

 2013年に日本食(和食)が世界無形文化遺産に登録されたことは記憶に新しい。また日本人の平均寿命が世界のトップクラスということもあり、ヘルシーな日本食に対する人気は世界中で高まっている。

 にもかかわらず、同様に世界無形文化遺産に登録されている地中海食に比べて、圧倒的に健康効果に関するエビデンスが少ないというのは多くの専門家が指摘する弱点だ。

 しかし、どのような日本食が健康にいいのか、その理由はなぜかという研究が少しずつ進み始めている。

■1970年代の食事が最も健康的?

 食生活が安定した1960年から年代別に、日本で日常的に食べられてきた食事の特徴を分析し、その健康効果を研究しているのが東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らのグループだ。

 マウスを使った試験では、国民健康・栄養調査をもとに1960年、75年、90年、2005年それぞれの時期の日常食を再現、それを粉末化し、8週間食べさせた。その結果、1975年の食事が最も内臓脂肪がたまりにくく、寿命も長く、認知機能も良好だった[注1]

 この結果を受けて、研究グループは1975年型の日本食を軽度肥満者、健常人がそれぞれ4週間にわたって食べ続ける試験を実施した。すると、同じ期間に現代食を食べた群に比較して、軽度肥満者群ではBMI(体格指数)や体重が減り、血糖値やコレステロール関連指標にも改善が見られ、健常人ではストレスが軽減し、運動機能が向上したという。

 では1975年の日常的な日本食の特徴とは何か。

 同グループは、食材の多様性、カロリー摂取を抑える調理法などとともに、大豆製品、魚介類、野菜、果物、海藻、きのこ、緑茶などの食材を多くとっていること、だしや発酵調味料を使用して塩分・糖分の摂取量を抑えていることなどを挙げている。

■75年は日本ならではの発酵食の摂取量が多い

 アミノ酸の化合物・ペプチドに詳しい京都大学大学院農学研究科の佐藤健司教授は、東北大チームが再現した1975年の食事メニューを分析してあることに気が付いた。「味噌、しょうゆ、日本酒といった麹(こうじ)かび(麹菌)を用いた発酵食品の摂取量がほかの時期の食事に比べて多い。例えば、味噌汁は2005年の週3回に対し、1975年には週7回と倍以上食べていた」(佐藤教授)

 麹かびといえば、「かもすぞー」というフレーズとともに有名になった、石川雅之氏の漫画「もやしもん」(コミックは講談社刊、2007年にフジテレビ系でアニメを放映)のキャラクター「A・オリゼー」の三つ編みが5本、頭から出ているような姿を思い浮かべる向きも多いのでは? そのもやしもんに日本食のパワーの秘密があるかもしれないというのだ。

 佐藤教授が注目したのは、麹かびの発酵によって増えるピログルタミルロイシン、ピログルタミルグルタミンなどの難消化性ペプチド、総称ピログルタミルペプチドだ。ここでは、由来がわかりやすいように「麹発酵ペプチド」と仮称する。

 発酵でできる物質というと、乳酸菌が作る乳酸などの有機酸、アルコールなどはよく知られているが、発酵はそれ以外にもいろいろな物質をつくる。アミノ酸、ペプチド類もその一つだ。

 麹かびが作る麹発酵ペプチドの中でも、効能研究が進んでいるのがピログルタミルロイシン(以下pGロイシン)だという。

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