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デトックスにブーム再来? 科学的根拠が後押し

日経BPヒット総合研究所 西沢邦浩

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NIKKEI STYLE

2005年から06年にかけてデトックス(解毒)ブームがあったのを覚えておいでだろうか?

体に蓄積すると害を及ぼす重金属や化学物質だけでなく、必要以上の量になると体の調子を狂わせる原因になる老廃物、活性酸素、ストレスから体脂肪といったものまで、すっきり出そう(消そう)という健康法だ。

それまでココアブーム(1995年)、赤ワインブーム(97年)、血液サラサラブーム(03年)などがあり、何かをとってプラスの効果を得ようとする「足し算の健康法」が主流だったところに登場した「引き算の健康法」として注目を集めた。

ブームが始まった一つのきっかけは、厚生労働省が03年に発表しその後改訂した、「妊婦への魚介類等の摂食と水銀に関する注意事項」だったと記憶する。

その内容は、本マグロやキンメダイといった、食物連鎖で有害金属のエチル水銀がたまる傾向がある魚について、妊娠もしくはその可能性がある女性は、胎児への影響を避けるため、週に1食以内(約80g)にとどめたほうがいい、などとするものだった。

つまり、妊婦は鉄火丼なら週1杯までに、ということになる。

健康に対する広い作用に期待が高まり、世界的に注目を集め始めていた魚油(DHAやEPA)源である魚の食べ方について厚生労働省が出した注意だったため、妊婦以外の人たちにまで不安は及んだ。

これを受けて、毛髪の水銀含有量で体内の蓄積度合いを予測する検査や、有害金属を排出する可能性がある方法(キレート=金属イオンと結合する成分をとる方法)などが話題になった。

実は、同じ03年に、建材や家具などから出る揮発性有機化合物によるめまいや頭痛などの「シックハウス症候群」といわれる健康被害報告を受けて建築基準法が改正され、建築材料へのホルムアルデヒドの使用制限などが決められている。またこの少し前には、ガソリンやたばこ、塩化ビニールなどを燃やした時に出るダイオキシンや、ポリカーボネート樹脂を用いた食器に含まれるビスフェノールAに関する報道も多かった。

重金属だけでなく、化学物質による健康への影響も問題化していたのだ。

2大ヒットは、ファイバーデトックスとプチ断食

重金属や化学物質の害を避けたいという生活者意識は、05年ごろになると、心身にとって不必要なものを排出したり、消したりすることへの関心に広がっていき、ダイエットや美容に関心が高い女性たちを巻き込んで、ブームになっていった。

これが、解毒もしくはデトックスという呼ばれる健康法だ。

なかでも、日常生活の中で実行できる方法として、ブームをけん引したデトックス法が2つある。

1つは、食物繊維(ファイバー)をしっかりとって、代謝を妨げたり、肌荒れをもたらしたりすると考えられる毒素・老廃物を便と一緒に排出することで、ダイエットや美肌を実現しようという「ファイバーデトックス」だろう。

そもそも食物繊維入りの食品の中には、食べたものが腸を通過する時間を短くし、糞便(ふんべん)の量や排便回数を増やすことで、「おなかの調子を整える」という表示を許可された特定保健用食品(トクホ)もあり、すでに便通改善に役立つ素材という認識は広まっていた。さらに食物繊維には体内に入れたくない毒素を吸着して便として排出する作用もあるとして新たな関心を呼び起こしたのだ。

一方、食物繊維が大腸でビフィズス菌などの有用菌を増やして悪玉菌を抑え込み、これらが作る毒素を減らす働きも解明され始めていた。

こうした新たな機能訴求は、「ダイエットをしてもなかなか効果が表れない」「便秘がちで肌の調子が悪い」といった悩みを持つ女性層の心をつかみ、食物繊維で腸をきれいにする健康法、ファイバーデトックスのブームが起きた。

そしてもう1つは、引き算の発想を極め、食事を抜いて心身をリセットしようという断食だ。何日も食事を抜く本格的な断食は一般人には難しいということで、「週末デトックス断食」「プチ断食」といった手軽に試せる方法が人気を集めた。

筆者が属していた日経ヘルスは、1998年の創刊当時から、昭和初期に生まれ、玄米菜食や断食を取り入れて心身が持つ本来の機能を取り戻そうと提唱する「西式健康法」に注目し、継続して取り上げていたため、デトックスブームの中で、実施しやすい断食を特集するのは自然の流れだった。

「胃腸の処理能力を超えた食べ物は宿便という形で腸内にとどまり、腐敗を始める。この状態のときに腸内の悪玉菌がまき散らす毒が体内で生じる最も深刻な毒だといっていい。それを出すために最適なのが断食と少食だ」。西式健康法を研究し、自身が院長を務める甲田医院(大阪府八尾市、閉院)で実際に断食療法を行っていた故甲田光雄院長はこう語っていた(「日経ヘルス」2006年6月号より)。

しかし、当時デトックス関連の健康法を毎号のように取り上げていた日経ヘルスの編集者として、記事を作るにあたって不足感が否めなかったのがエビデンス(科学的根拠)だ。

読者からの反響が大きく手応えは十分だったが、裏付けデータの少なさには泣かされた。

たとえば食物繊維によるデトックスの背景には、「体の毒素の7~8割は腸から排出されるため、腸こそが最大の解毒器官。だから腸の機能を調整して便通を良くし、毒素の排出力を高めることが必要だ」という考え方があったが、残念ながらこれを裏付ける確固とした科学的根拠は見い出せなかった。

また、少食や断食を行ってエネルギー不足になると、体脂肪が分解されケトン体という物質ができ、これが糖の代わりに脳のエネルギーになるのでダイエットにもなる可能性もある、という考え方は示されていたが、それを裏付ける人試験データもまだほとんどないと言っていい状態だった。

食物繊維をとり続けたときの便通改善実感や食事を1、2日抜いた時に得られる爽快感は体験した多くの人に共通してあったのではないか。しかし、こうした実感をよりどころにせざるを得ない面が強かったせいもあってか、やがてデトックスブームは収束していった。

腸、断食のエビデンスが目白押し

デトックスブームから約10年が経った今、食物繊維と腸の関係、そして断食・少食(カロリー制限)は、世界の医学界が注目する最先端の医科学に躍り出た。

NatureやScience、Cellといったトップ科学ジャーナルが競い合ってこの分野の最新研究を発表し、それを一般メディアもこぞって取り上げている。

まず腸。

老廃物や不要な重金属などを排出するだけではなく、全身の健康維持に関わる中枢的な器官だということが明らかになってきた。

下に挙げた、「腸内環境が悪化したときに高まるリスク」の図を見てほしい。

これは、それぞれの健康キーワードに関する研究中で注目すべきものの出典をまとめたものだが、これらはまさに腸の不調がメンタル面まで含めた全身の不調に大きく関わっていることを示している。

そして、食物繊維も便通を良くするのみならず、腸に住む有用菌の餌になって、これらの菌が作りだす物質がエネルギー代謝や血糖のコントロールに関わったりしていることや、腸にあって免疫に関わる細胞を刺激して免疫物質を作ったりしていることがわかってきた[注1]。

ここ数年、糖質を制限する食事法が人気だが、一方で、精製しておらず食物繊維が多い全粒の状態で、糖質の代表である穀物を1日90グラム以上(玄米だと炊き上がりで茶碗やや大盛り1杯程度)とっている人たちでは、摂取量がもっとも少ない人たちより糖尿病の死亡率が36%、すべてのがんの死亡率が11%、脳卒中発症率が14%減少するという、多くの研究を系統的に分析した報告も発表され、穀物の食物繊維と腸との関係性が探索されている[注2]。

また、粘性の高い繊維には過度な食欲を抑制する働きがあるという研究や、若いころから食物繊維を多くとっている女性で将来の乳がん発症リスクが低いといった、女性の関心を集めそうなエビデンスも登場している[注3]。

もう一つの断食・少食(カロリー制限)はどうか。

こちらは、ダイエットばかりかいろいろな病気のリスクを下げ、長寿に関わる遺伝子群(sirtuins)のスイッチをオンにするなどの働きで寿命の延長につながるかもしれないという報告が目白押しだ。

言い方を変えると、いつも好きなだけ食べることや過食が体にとって「毒」であり、そのデトックス法としての断食・少食のエビデンスがそろってきたと言える。

例えば、前に触れた、断食状態のときに出てくるケトン体の主成分はβ-ヒドロキシ酪酸という物質だが、これには身体機能や認知能を高める働きがあることがわかってきており、ケトン体を含んだ飲料をとってスポーツの記録を伸ばす可能性を検証する研究も始まった[注4]。

また、24時間ほど断食をするとオートファジー(自食作用)が活性化することを東京大学の水島昇教授らがマウスの試験で明らかにしている。さらに、同教授のグループは、オートファジーが働くことで、全身の細胞や組織で再生力が高まり多くの疾患のリスクを低下させる可能性があることも報告している[注5]。

断食は細胞レベルからデトックスを促す方法だったのだ。

この1月、米ウィスコンシン大学と米国立加齢研究所(NIA)の2施設で1980年代から並行して進められてきた、食事を自由摂取させるアカゲザルの群と約3割カロリーを制限した食事で生活する群の長期観察研究結果を、両グループが共同で解析した論文が発表された。

これまでは、カロリー制限が健康長寿に役立つとするウィスコンシン大と効果があるとは言えないとするNIAの見解が割れていたが、今回、「成人以降(中高年)で適度なカロリー制限を行うと、健康と寿命の延長に寄与する」という共同見解が示され、論争に終止符が打たれることになった[注6]。

人ではどうか。

アカゲザルの研究のような長期研究の実施はなかなか難しいが、米心臓協会が最近発表した断続的断食に関する科学的声明によると、週1日もしくは2日の断食(通常食の25%以下のカロリー制限食)を3~24週間行った計10の研究で、期間中に被験者は平均3~8%体重が減っている。

また、19人の男女が1カ月のうち5日間を通常の3分の1から2分の1くらいの摂取カロリーに落として3カ月過ごしたところ、ケトン体値が終了時に3.7倍に上がり、空腹時血糖値や体内の炎症指標であるCRPの数値が下がるといった試験報告もある[注7]。

デトックスブームは再来するか?

16年からブームといえるのが、食物繊維が多く腸にいい食品や乳酸菌・ビフィズス菌をとる「腸活」だ。17年2月2日に発売された日経ヘルス3月号にも「スーパー腸活」、「べっぴん腸活」と2本の腸活記事が掲載されているので、興味のある方はご一読いただきたい。

市場で、食物繊維を多く含む代表的な穀物である大麦やグラノーラ、グリーンスムージーといった商品がヒットしている現状を見ると、食物繊維も「おなかの調子を整える」から「ファイバーデトックス」時代を経て、「ファイバー3.0」の時代に入っていると言っていいだろう。

こうした流れがデトックスブーム自体の再来につながるかどうかは、エビデンスを伴い、ストーリー性が豊かな大型商品が登場するかどうかにかかってくる。

また、デトックスや解毒、体内浄化といった表現は、薬事的に商品の訴求に使用できないので、伝え方の工夫も欠かせない。

江戸時代の儒学者、貝原益軒は「養生訓」の中で、「酢やショウガやワサビ、コショウ、カラシ、サンショウなどを食事に加えると、食事に含まれる毒を制してくれる」といった表現で解毒に触れ、また「食事は腹7、8分でやめること。食べ過ぎると病気になる危険性がある。食事が原因で病気になったと思われるときには飲食を断つこと」などを挙げて断食・少食を勧めている。

そもそも江戸時代の漢方では解毒という考え方がかなり重要視されていたようだ。これは、文化2年(1805年)の江戸日本橋の街並みを詳細に描いた「熈代勝覧(きだいしょうらん)」に見える薬種問屋の最も大きな大看板に「けとく(解毒)」の文字が踊ることでも推し量られる。

つまり、デトックスはそもそも生活の知恵として日本人に根付いていた考え方だと言えるのではないだろうか。ただ、現代の満ち足りた食生活の中で忘れ去られがちなだけだ、と。

だとすれば、消費者の琴線に触れる商品の設計や訴求は十分可能だと思われるし、10年前と違って説得力のあるエビデンスが後押ししてくれる環境も整った。

ブームが起こる可能性は十分にあるだろう。

[注1]Int J Obes (Lond). 2015 Sep; 39(9): 1331-38.
   Cell Host Microbe. 2016 Aug 10;20(2):202-14.
[注2] BMJ 2016;353:i2716
[注3] Obes Rev. 2011 Sep;12(9):724-39.
   Cell 2014 Jan 16;156(1-2):84-96.
[注4]FASEB J. 2016 Dec;30(12):4021-4032.
   Cell Metab. 2016 Aug 9;24(2):256-68.
[注5]Cell. 2010 Feb 5;140(3):313-26.
   Cell. 2011 Nov 11;147(4):728-41.
[注6]Nat Commun. 2017 Jan 17;8:14063
[注7]Circulation.2017 Jan 30.[Epub ahead of print]
   Cell Metab. 2015 Jul 7;22(1):86-99.
西沢邦浩(にしざわ・くにひろ)
日経BPヒット総合研究所 主席研究員・日経BP社ビズライフ局プロデューサー。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として新媒体などの事業開発に携わった後、98年「日経ヘルス」創刊と同時に副編集長に着任。05年1月より同誌編集長。08年3月に「日経ヘルス プルミエ」を創刊し、10年まで同誌編集長を務める。
日経BPヒット総合研究所

日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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