「隠岐牛」をブランド化した、島で唯一の土建会社社長飯古建設社長 田仲寿夫氏(上)

口に入れると脂がすっと溶け、霜降りなのに味はさっぱりしている。生まれも育ちも島根県海士町の「隠岐牛」は、一流料理人もうならせるほどの絶品だ。ほかの地域のブランドで売られていた黒毛和牛を島で肥育し、「隠岐牛」の名で売り出すことに成功したのが飯古(はんこ)建設。島で唯一の土木建設会社がブランド牛づくりへ乗り出した経緯と、事業に託す思いを聞いた。

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ここ中ノ島を含む隠岐諸島全体で年間約1200頭の牛が生まれていますが、「隠岐牛」の名で市場に出回るのは、その1割程度しかありません。なかなか手に入りにくい肉なので、「幻の黒毛和牛」ともいわれています。

目指しているのは、口の中に入れてもベトつかず、脂がさっと溶けて、あまり体の負担にならない肉。牛肉に関して、最近はみなさん「赤身がブームだ」と言いますが、隠岐牛は案外、霜降りでありながら赤身に近く、さっぱりと食べられるのが特徴です。

隠岐牛は「幻の黒毛和牛」ともいわれている

牛枝肉の格付けは全国的に統一され、「歩留まり等級」と「肉質等級」によって15種類に分けられます。私たちはこれまでの約10年間で1534頭の隠岐牛を東京食肉市場へ出荷し、そのうち8割以上が最高ランクの「A5」または「A4」の評価を受けています。

隠岐で生まれた子牛の評価はもともと高く、その一部は本土で肥育され、全国的に名の知られた地域のブランドで売られていました。私は隠岐で繁殖した子牛を島内で肥育することで、「隠岐牛」をブランドにしたかった。その原点は何かといえば危機感です。

政府の財政改革で公共事業が半分以下に

景気・不景気といっても、島の場合、都会ほど波は大きくありません。不景気になれば、公共事業をすればよかったですから。隠岐諸島全体における公共事業の規模は、ピーク時で年間400億円もありました。弊社の場合も、ピーク時は20億円近い公共事業を請け負っていたこともあります。政府の財政改革に伴う公共事業の削減で、それが瞬く間に半分以下の約8億円まで減りました。

公共事業に関してはあまりいいイメージを持っておられない方も多いと思いますが、海士町のように小さな島では、ある一定規模の公共事業がないと、経営は成り立ちません。島に建設会社がなくなれば、護岸工事や道路工事もできなくなる。災害時には本土からわざわざ機械や人を持ち込まなくてはならず、工事費も、それだけ割高になってしまいます。

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