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倍率20倍! 豪華列車「ななつ星」ツアーの魅力探る

2017/4/10

 あなたにとって「最高の旅」とはどんな旅だろうか。消費や価値観が多様化した成熟社会ニッポンで全ての人が納得する答えを出すのは難しいが、この列車にはそのヒントが隠されているかもしれない。運行開始から3年半がたった今も快走が続くJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」だ。1人あたり料金(2人1室の場合)が最高95万円という料金設定にもかかわらず、乗車チケットを手に入れるには今も20倍を超える倍率の抽選をくぐり抜けなければならない。豪華列車の何が人々を引き付けるのか。3月上旬、取材班は2人の「旅をする達人」とともにななつ星に乗り込み、隠された最高の旅へのヒントを探った。答えはBSジャパンの日経プラス10特別編「感動列車『ななつ星in九州』の旅~最高の旅をする、最高の旅をつくる」(4月16日日曜日午後7時~8時54分放送予定)で紹介する。

 ななつ星に挑んだ「旅をする達人」は、独自の感性で社会を切り取るコピーライターの糸井重里さんと、世界30カ国以上を巡ってきた雅楽師の東儀秀樹さん。2人は3月4~5日、ななつ星の生みの親であり「旅をつくる達人」でもあるJR九州の唐池恒二会長、日経プラス10の小谷真生子キャスターとともに、福岡・佐賀・長崎・大分の九州北部をまわる1泊2日コースを体験した。

出発地の博多駅ホームでは多くの人がななつ星を見送った。糸井さんらは中から手を振った

 ここでななつ星について簡単におさらいしておこう。JR九州が約30億円かけて造った7両編成の列車で九州各地を巡る旅行サービスのことだ。2013年10月に運行を始めた。旅行のコースは九州北部をまわる1泊2日コースと九州をほぼ一周する3泊4日コースの2つがあり、いずれも博多駅(福岡市)で発着。佐賀・有田や大分・由布院などところどころで列車を降りて散策もする。

 運行開始以来、よく話題になってきたのが車両の豪華さと料金の高さ。車両の外装は顔が映り込むくらいピカピカに磨き上げられたえんじ色(正式には「古代漆色」)をしていて、内装は有田焼の名人・14代酒井田柿右衛門の遺作になった洗面鉢をはじめとした匠(たくみ)の技を随所にちりばめつつ、木をふんだんに使っている。これまでに数々の観光列車を走らせてきた唐池会長と工業デザイナーの水戸岡鋭治さんコンビの集大成といえる。

夜中のマジックショーを楽しむ糸井さん
車内にあるピアノを弾く東儀さん(中央)

 列車を「移動手段」から「観光の目的そのもの」に捉え直したコンセプトだが、豪華な分、料金も高い。現在の1人あたり料金(2人1室の場合)は33万~95万円。名実ともに最高級といえる列車である。5月にはJR東日本の「トランスイート四季島(しきしま)」、6月にはJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」でも、ゆったりと各地を巡る豪華列車の運行が始まる予定だ。

 達人たちを乗せたななつ星は3月4日、午前9時58分に博多駅を出発。旅の前半では、糸井さんが唐池会長との対談で乗車したときの印象を振り返った。まず「乗ったときの高揚感が予想外だった」そうだ。事前に写真などを見て「こんなもんかな」というイメージを自分の中で持っていたものの、乗客専用のラウンジ「金星」や乗り込むまでのクルー(乗務員)や関係者の姿を見て、「皆さんがこの列車を本当に愛していること、大事にされているのが伝わった」からだという。そういう姿につられて糸井さん自身の気持ちも高ぶったようだ。

出発前、博多駅にあるななつ星の乗客専用のラウンジ「金星」で乾杯する(右から)糸井さん、小谷キャスター、東儀さん

 糸井さんは沿線などななつ星の外にいる人が手を振ってくれることも「価値を高めている」という。「僕らが乗っているものをまぶしく見ている方がいることで、乗っている自分たちがまた『わあー』ってなってくるんだよね」。沿線の人に向けて手を振り返す。その時の心境を「自分という個人が手を振っているんじゃなくて、(ななつ星全体が)生き物のようになってしまうんですよね」と独自の言葉で表現する。

 一方の東儀さん。最高級の列車に心躍っているかというとそうでもないようで……。小谷キャスターとの対談で今回の旅の印象を尋ねられると、「この旅は僕には酷なんです。列車だから行程がはっきりしているじゃないですか。何時に出発しなきゃいけないとか、それは僕にはあり得ない旅です」。

走行するななつ星。最後部にはパノラマが楽しめる大窓がある

 東儀さんが好きなのは訪れた土地を自由に巡って興味のあるものを見たり食べたりして、その土地の生活感や空気を感じられる旅だという。ななつ星に乗ってみたのは「そんな中でも特別な面白さを僕なら見つけるだろうっていう自分のチャレンジもあって」だそうだ。この旅を終えるとき、東儀さんが何を語るのかに注目だ。

 2人は1泊2日の旅を通じて、クルーやななつ星が停車した駅の地元住民と触れ合ったり、車内での食事、夜のバータイムを楽しんだりした。有田の窯元の訪問や由布院の昔ながらの路地の散策もした。博多駅に戻るのは翌日5日の午後5時31分。約31時間30分の旅で、どんな「最高の旅」が見つかるのだろうか。

(杉本 耕太郎)

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