これを受けて、当時の運営最高責任者が日本人の副総支配人を増やす方針を打ち出し、まずは候補者の人材プールを作ることになった。それを、当初は「4Dプール」と呼んでいた。初年度は20人以上がこの4Dプールに手を挙げ、うまくいくかに思えたが2年目には応募者が半数近くに減ってしまい、3年目にはゼロに落ち込んだ。そこで、今度は思い切って新卒から幹部候補生を早期選抜し育成する方針へと転換。2010年から日本独自のエリート人材育成プログラムとしてスタートしたのが「RJET」だった。

あえてホテル志望ではない学生を

RJET1期生を選ぶにあたって麻生氏が意識したのは、「ふつうならホテルに入ってこなそうな人材」だったという。「従来の年功序列に飽き足らず、早く上に上がりたい、マネジャーになりたいという新卒に狙いを定めて採用したところ、ほとんどがもともとホテル業界志望ではなく、商社やメーカー、航空会社の総合職などを目指していた学生たちでした」

麻生氏は「ふつうならホテルに入ってこなそうな人材」を選んだ

語学にたけた野心的な学生を引き付けたのは、入社後10年から15年で総支配人になれる人材を育成するとうたった点だ。通常、新卒から総支配人になるには30年近くかかるところ、このプログラムの修了者なら「飛び級」してスーパーバイザー以上の職階からスタートできるため、早ければ30歳代半ばで総支配人のポジションに就ける。いわば出世のバイパスコースをゆくことを約束されたようなものだが、周囲とのあつれきはないのだろうか。

「もちろん最初はありましたし、今でも多少は残っていると思います。ただし、彼らにはそれを覆すだけの圧倒的なリーダーシップスキルを身につけてもらいたい。例えば総支配人は料理を作れませんが、ホテル経営はできます。つまり、個々のスキルはなくてもリーダーシップが備わっていれば、リーダーとしての仕事はできる。RJETが目指すのもそこです」(麻生氏)

合格すると、1年目はすべての部署を回りながら必要なマネジメントとリーダーシップのスキルを学ぶ。「現場をロクに知らないくせに」という周囲の反発はつきものだが、麻生氏によれば、それを乗り越えていくのもリーダーシップスキルだという。

「先輩が困っていたら、自ら進んで助けなさいと指導しています。大変なことを引き受け、解決したら、最初は冷たい視線を投げていた先輩たちも、必ず一目置いてくれるようになりますから」

2年間にわたるプログラムの最終段階では、難しい「卒業試験」も課される。11月から2月までの4カ月、北海道・ニセコ地区にあるヒルトンニセコビレッジで実際にチームを任せられ、マネジャーとして機能するかどうか、を試されるのだ。

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子どもを産んでから大学で学んだ異色の人材も活躍中
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