「苦しいときは話すことが大切」のウソ ウィンチ氏「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」著者インタビュー(2)

日経Gooday

「物理的な距離を置くと、感情的にも距離を置くことができるのです。カメラのズームアウト機能を使うようなイメージで、出来事からどんどん、距離を離してみてください。

嫌なことを思い返すとき、同時に、肩がかちかちに固まったり、おなかが痛くなったりすることがあるかもしれません。そんなときにもこの他者視点を用いると、ちょうど首から下の部分がすーっと落ち着く感じがします。

私たちは、例えば目の前に怒鳴っている上司がいるとすると、それを映画の全画面で見ているような感覚に陥ってしまいます。しかし、ズームアウトして、距離を置くと、同時に心も落ち着くのです。

他者視点を使うと、嫌なことを思い出すときの血圧の上昇が抑えられることが分かっています。また、その実験から1週間経過した時点でも、思考のループ傾向が明らかに減り、思い出したときの心理的苦痛もかなり軽くなる、つまり『つらい記憶を薄める』働きが得られることが分かっています[注2]

[注2]Pers Soc Psychol Bull. 2008;34:924-938.

――ちょっと練習が必要そうですね。行うときの、コツはありますか?

ガイさんの著書「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」

「集中することが必要です。一人きりになれる場所、静かな環境で、できれば部屋も暗くして行うと、集中しやすくなります。何回か行うと、心が落ち着いてきます。例えば5分間行って、5分前と比べて気持ちがどうなったかな?と感じてみるのもよいでしょう。

重要なのは、急がないこと。スナップショットではなく、映画館で映画を眺めているような感覚で、ゆっくりとイメージしましょう。カウンセリングの場でこのエクササイズを説明すると、その場で2秒ほど行って『はい、やりました』という人がいますが、それではやったことにはなりません(笑)。

職場ではなかなか難しいと思いますが、例えばトイレの空間ならば静かに集中できるかもしれませんね」

――「ただ話すことだけで思考のループが解決するわけではない」ということが心理学で分かってきたこと、それを解決する一つの方法が「他者視点」で物事をとらえなおしてみる、ということがよく分かりました。

「自動再生するように、出来事を反芻し続けるのは良くないですが、自分の心を見つめ直す『内省』は有益です。有害な繰り返しをやめ、有益な内省に変えることで、ネガティブな思考のループから抜け出しやすくなるのです。この手当ての方法をぜひ覚えてください」

次回は、7つの感情のなかでもよく起こりがちな「失敗・挫折」したときの手当ての仕方について聞いていく。

ガイ・ウィンチ(Guy Winch, Ph.D.)さん
心理学者。ニューヨーク大学で臨床心理学の博士号を取得後、セラピストとしてニューヨーク大学メディカルセンターに勤務。その後、マンハッタンで開業し、20年以上にわたって心理療法を実践している。講演家としても定評があり、TEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は430万回以上(2017年2月時点)視聴され、「2015年で最も人気のトーク」にランクインした。「ハフィントン・ポスト」や心理学誌「サイコロジー・トゥデイ」にブログを寄稿。他の著書に「The Squeaky Wheel」(未邦訳)がある。

(ライター 柳本操)

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