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昇進を決めるのは いまや上司ではない!? 今ドキ出世事情~あなたはどう生きるか(14)

2016/10/18

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 努力すれば出世できる。ただし方向さえ間違えなければ。

 さらに言えば、その方向を間違えないようにできればさらに出世しやすくなるのだけれど、イマドキの会社では、出世させる人にどんな条件を求めているのでしょうか。

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■かつての年功とは上司との関わりでもある

 出世の基本となる、管理職への昇進昇格基準、そして取締役などへの役員への任用基準を超大手から中小企業まで100社以上設計した立場として、わかることがあります。

 それは、10年前と比べても、選ぶ基準が変わっているということです。

 前回記事では、スペシャリストとゼネラリストの比較をしましたが、10年前まではそもそも出世の候補になるタイミングが共通していました。

 多くの会社で、そのタイミングは年齢や社歴といった、経験を積んだ年数で決められていました。年功、とまではいえませんが、たとえば従業員1000人を超えるような会社だとさすがに30歳を超えていないと課長にはできない、という暗黙の了解があったり、オーナー家の人でもなければ30代で取締役になることはない、というような判断がされたりしていました。そのためにそれぞれの役職毎に、最低何年間は経験を積まないと上がれないという基準がもうけられていました。

 仮に基準がなかったとしても、たとえば40歳で課長になって50歳で部長になった人は、30歳と35歳と40歳の課長候補を並べてみて、30歳の人を積極的に昇進させようとは思えないわけです。「彼にはまだ早いよ」という言葉が使われるのはこういうタイミングでした。

■抜擢が基準を変え始めている

 しかしこの10年間でそういった「まだ早い」という基準で出世候補から外すことが減っています。私自身特に2010年以降にお手伝いする会社では、30歳課長や40歳部長、時には35歳役員を生み出すための仕組みを求められ設計することが増えました。それもグローバルに活躍する超大手企業において、です(規模が小さい会社で出世が早いことについては、当連載の最初に示しましたのでそちらをご覧ください)。

 なぜそういうことができるようになったのか、といえば、組織におけるタコツボの破壊です。それは例えば徒弟制のような仕組みが壊されていっていることに近い。以前、ミシュランの星を取った寿司店の職人が、徒弟制ではなく研修で育っているということが話題になりました。ホリエモンがそのことを当然だ、としてしたことでネットでも広まりました。

 実はそのような変革が企業組織でも起きているのです。

 統計的にはまだ明らかになっていませんが、人事改革の現場にいる私の実感として、具体的な変化は大きく3つあると感じています。

■上司推薦から人事部推薦へ

 第一に感じている変化は、昇進推薦者の変化です。

 具体的に言えば、ある人の昇進推薦を上司がするのではなく、人事部が行うような会社が増えてきているということです。

 そもそも上司と部下の関係は、良好であっても悪くても、上下関係ははっきりしています。その結果として、いかに部下が優秀であったとしても、上司に並ぶことは難しくなるわけです。特に上司の方が部下よりも劣っている場合には、上司は決して部下を推薦することがありません。

 だから人事部が常に目を光らせて、優秀そうな人をピックアップして、経営層に報告をするような場面が増えています。

 特に少子高齢化で60歳を超えて活躍する人が増えていくと、あえて部下をひきあげない上司が増えてきている気がします。優秀な部下だ、ということがわかっていても、彼や彼女を引き上げた結果自分が会社に居場所をなくすようであれば、昇進推薦を躊躇(ちゅうちょ)するのは自然なことではないでしょうか。だから人事部が活躍する場面が、自然に増えているのです。

■指名委員会の拡大

 上司推薦から人事部推薦に切り替わっている会社では、それにあわせて、誰をどこに配置するべきか、ということを会社全体で考えるようになっています。それが第二に感じている変化です。

 通常、多くの会社の人事異動は欠員補充の形をとります。たとえば30人の部署で、定年で1名、中途で2名、合計3名が退職した場合、3名の欠員補充が人事部に依頼されます。人事部ではそれらの欠員情報をもとに、新規採用者のうち何人をどこに配置するかを検討します。しかし中には新人では対応できない場合があります。そこで各部署に、出しても良い人員についての確認を行います。その結果として異動案が作成されていくわけです。

 そのような異動検討の場面では、「優秀な人をくれ」という要望よりも「こいつはいらないからどこかへやってくれ」という依頼の方が圧倒的に多いわけです。その対応に追われるのが良くあるタイプの人事異動です。

 結果として、優秀な人は各部署に囲われてしまい、優秀でない人は各部署を転々とすることになります。会社によってはジョブローテーションという仕組みを採用していて、3年から5年おきにほとんどの人を異動させる場合があります。ゼネラリストを育てるタイプの会社で採用される仕組みですが、その場合でも優秀な人はやがて古巣に戻ったりします。

 しかしそのような判断を全社的に吸い上げてしまうのが指名委員会や人事委員会と呼ばれる仕組みです。委員会の場では、できない人の処遇ではなく、できる人の処遇が話し合われます。

 「彼は今の部署で10年。実績もあげてきた。まだ32だけれど、これからの活躍を見越して少し早いけれど昇進させてはどうか。今の課長は別の部署に異動させて、今の部署をそのまま任せればよい」という判断は、上司には決してできないわけです(自分を異動させるような判断ができる人は、おそらくそれ自体がとても優秀な人でしょう)。

 あるいは「A事業部とB事業部のエース同士を交換しよう。それぞれが激変の中でどう成長するかを見極めて、より早く大きく成長した方を次の役員候補にしよう」という判断も、各事業部が絶対にするわけがありません。その異動のせいで売上目標の達成が危うくなるかもしれないからです。

■外部アセッサーの活躍

 第三の変化は、外部者の視点の活用です。

 たとえば次の役員候補が3名いるとき、誰を引き上げるべきか、ということについて、外部者に面談をしてもらった結果判断するということです。そのような役割をアセッサーと言いますが、私自身多くの会社からアセッサーの依頼を受けるようになりました(年内には労政時報とのタイアップで、アセッサーを中心としたアセスメントの展開について記事を発表するとともにセミナーも開催する予定です。興味のある方はセレクションアンドバリエーションまでお問い合わせください)。

 外部者の視点で昇進判断をする、という意味はなんでしょうか?

 それはつまり、「自社にとってどんな人が優秀なのか」、ということを明確に定めるということなのです。そもそも「優秀さ」の定義があいまいだと、外部からの判断もできません。しかし、ビジネスを取り巻く環境変化をとらえ、そこで活躍してほしい人の行動を定めることができれば、それは明確な昇進判断基準となります。そしてその上で、情実が絡んでしまう社内の人材ではなく、あえて外部の第三者に判断してもらうことで、より適切な人材を選抜できるようになるわけです。

 ではそれらの基準は今、どういうものになっているのでしょうか。次回は実際に使われている基準の一部を紹介してみましょう。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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