ヘルスUP

日経Gooday 30+

炭水化物なのに太らない 秘密はレジスタントスターチ

日経Gooday

2016/10/17

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 「健康のためには、炭水化物の摂取は控えよう」とはよく言われるところ。特に近年は低炭水化物ダイエット(ローカーボダイエット)が注目を浴び、ご飯やイモ類などの炭水化物を控えている人も多いだろう。ところが、炭水化物の中には食物繊維と同様の働きをする「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」なるものを含む食材・食品がある。しかも、このレジスタントスターチ、食物繊維のように腸内環境を整えるだけでなく、体重増加を抑えたり、内臓脂肪の増加を抑えたりする効果が期待できるという。

 プロントコーポレーションは9月1日にレジスタントスターチを多く含む「ハイレジ生パスタ」のメニューの提供を開始。その発表を兼ねたメディアセミナーの席で、慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科の渡辺光博教授に話を聞いた。

■健康のためには炭水化物は適度に摂るべき

 食物繊維が、生活習慣病の予防から便秘の解消まで、健康な体を維持するために大きな役割を果たすことは、今や広く知られている。一方で、日本人の食生活では、食物繊維は大きく不足している。

 厚生労働省(以下、厚労省)による食物繊維の摂取基準は、男性が1日20グラム以上、女性が18グラム以上(いずれも18~69歳まで)だが、2014年の国民健康・栄養調査結果(厚労省)を見ると、成人日本人の実際の摂取量は年代により12.8~16.4グラム(男女合わせた平均値)。どの年代でも目標量を下回っているのが現状だ。

 実は、「日本人の食物繊維の摂取量が低下している背景には、お米、麦、イモなどの炭水化物の摂取の減少がある。1955年と2010年の穀類の摂取量を比較すると3分の1まで減少しているのです」と、渡辺教授は指摘する。

 「昨今は低炭水化物ダイエットが注目され、炭水化物を摂らなければいくら肉を食べてもいいという説まであるが、これは現在、国内外の学会でも議論の的となっている。食物繊維の摂取不足は便通のみならず、腸内環境を悪化させ、いわゆる悪玉菌を増やしてしまい、体脂肪の蓄積や脂肪肝、糖尿病、高血圧の発症などの生活習慣病、がんや免疫機能の低下、精神疾患にまで影響を与えることが科学的に解明されてきている。健康のためには食物繊維の摂取源となる炭水化物は適度に摂るべきだ」と警鐘を鳴らす。

■食物繊維と同様の働きをする「レジスタントスターチ」って!?

 炭水化物の中でも、近年、大きな注目を浴びているのが「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」と呼ばれるものだ。レジスタントスターチとは、消化されない(レジスタント)でんぷん(スターチ)という意味で、糖質であるにもかかわらず、食物繊維と同じような働きをする。

 「レジスタントスターチは良質の炭水化物で、小腸内で消化されず大腸まで届き、腸内細菌のエサになる」(渡辺教授)。その結果、食物繊維を摂った時と同じように、腸内でいわゆる善玉菌を増やす働きがあるとされ、腸内環境を整える効果が期待できるのだという。

 「腸内細菌は善玉菌が増えれば悪玉菌が減る。腸の上皮細胞には、隣り合う細胞同士を密着させる“タイトジャンクション”と呼ばれる物質があり、これが、いわば腸の“見張り番”として機能し、食品に含まれたり悪玉菌が作ったりする“毒素”を体内へ入れないようにしているが、歳を取るとこの機能が緩み、毒素が入りやすくなる。それが、エイジングの理由のひとつにもなっている。そのため、腸内の善玉菌を増やすことは、いろいろな意味で非常に重要となってくるわけです」と渡辺教授は指摘する。

■レジスタントスターチに期待できる4つの効果

 レジスタントスターチは、食物繊維と同様の働きをすることで、血糖値の上昇抑制や便通の改善が期待できる。ほとんど消化されずに腸内を移動することで消化が緩やかになるため血糖値の急激な上昇が抑えられ、また腸内環境が整うため、便秘解消効果が期待できるわけだ。腸内環境は美肌と密接な関係を持つため、これが整えば美肌効果も期待できる。

レジスタントスターチに
期待できる
4つの効果
血糖値の上昇抑制
便通の改善
美肌などのアンチエイジング効果
体重増加の抑制(脂肪減少)

 さらに、レジスタントスターチの摂取により、体重増加の抑制も期待できるという。渡辺教授は、高脂肪食だけを食べたマウスとレジスタントスターチを含んだ高脂肪食を食べたマウスの体重の推移を比較する研究(2016年抗加齢医学会総会で発表)を実施した。すると、高脂肪食のみのマウスは体重が増加し続けたのに対し、レジスタントスターチ入りの高脂肪食を摂ったマウスは体重が減ったという。

 また、レジスタントスターチを含む高脂肪食と含まない高脂肪食を摂取したマウスの肝臓、白色脂肪組織(WAT)、腸間膜脂肪組織(いわゆる内臓脂肪組織)の臓器重量を比較したところ、レジスタントスターチ入り高脂肪食を摂取したマウスでは、それを含まない高脂肪食を摂取したマウスよりも、脂肪重量の増加が抑えられたうえ、脂肪肝も改善し、同時に糖尿病も改善していたという。「こうした結果から、レジスタントスターチを多く含むハイレジ食品には肥満を防止し、内臓脂肪の増加を抑制する効果が期待できる」と渡辺教授は説明する。

脂肪とレジスタントスターチを一緒に食べたマウスは太らない!?

 レジスタントスターチを多く含む食品を摂取することで、より高い健康効果が期待できると考えられるわけだが、では、レジスタントスターチを多く含む食品には、どんなものがあるのだろう。

 レジスタントスターチは、インゲン豆、トウモロコシ、大麦、白米、全粒小麦(全粒粉)、ジャガイモなどの食材に含まれる。レジスタントスターチは加熱すると大幅に減り、冷めると再び増える。これは、未加熱の食材はでんぷんの分子が消化されにくい状態にあったり、冷や飯のように一度加熱され糊化したでんぷんが、冷めることで再結晶して消化されにくくなったりするためだ。

 ご飯やパスタには1%、ふかしイモには6%のレジスタントスターチが含まれるという。レジスタントスターチを含む食材を冷たい状態で食べると腸内細菌のエサになるわけだが、現実的には「冷たい食材・食品ばかりを食べ続けるのは難しい」と渡辺教授は考える。

 こうした中で渡辺教授は、プロントコーポレーションと共同でレジスタントスターチを多く含む「ハイレジ生パスタ」を開発した。このパスタには、約70%がレジスタントスターチという超ハイレジのコーンスターチ、J-オイルミルズの「アミロファイバーSH」を配合した。「アミロファイバーはトウモロコシから作られているが、トウモロコシのレジスタントスターチは他の難消化性でんぷんより、腸内細菌のエサになりやすい」と渡辺教授。

 「ハイレジ生パスタは、大学の学生に試食してもらったが、モチモチしておいしいと好反応だった」そうだ。1食分でレタス2.5個分の食物繊維と同等の効果が見込めるレジスタントスターチが含まれているというこの生パスタメニュー。9月1日に「カフェ&バー プロント」で提供を開始した。話題の健康食をこの機会に一度、試してみてはいかがだろう。

 渡辺光博(わたなべ・みつひろ) 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、慶應義塾大学SFCサイエンス・ラボ代表。フランス国立ルイパスツール大学博士課程卒業後、フランス国立科学研究所。ハーバード大学院、国立長寿医療研究センター、国立健康・栄養研究所客員研究員、慶応義塾大学医学部などを経て現職。専門はヘルスサイエンス、アンチエイジング、代謝疾患、栄養医学、予防医学。胆汁酸を介したメタボリック・シンドロームの原因究明、ごきげんと疾患の関係など様々な疾患を解明するプロジェクトを遂行。

(大塚千春=フリーライター)

ヘルスUP新着記事

ALL CHANNEL