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見た目は瓶、軽くて簡単 ペットボトルワインが人気

2016/10/14

サントリーのペットボトルワイン

今、ワインの容器が面白い。ワインの容器といえば、750mlのガラス瓶が当たり前として使われているが、それ以外のものが増えてきた。「日本酒をもっとカジュアルに 進化するパウチパック酒」という記事で紹介した、菊水のスマートパウチも元はワインのために開発された容器を使っている。最近では、瓶のような形状のペットボトルワインも登場している。

サントリーワインインターナショナル国産ブランド部の伊藤江里子さん。ワインアドバイザーの資格も持っている

この、瓶のようなペットボトルを調べてみると、単にワイン瓶の形を模しただけではない、さまざまな工夫と思いが凝らされていることがわかった。そこで今回は、サントリーワインインターナショナルで国産ブランドを担当する伊藤江里子さんに、ペットボトルを含めたワイン事情についてお話を伺うことにした。

■見た目にこだわるペットボトルのワインがあればいいのでは

「ガラス瓶にはガラス瓶の、ペットボトルにはペットボトルの、紙パックには紙パックの魅力がそれぞれあると思います」(伊藤さん)

ガラス瓶のワインの魅力は、何と言っても見た目がいいことだろう。高級感があり、いかにもこれからワインを飲むという気持ちが上がる。雰囲気が良くなるという特徴がある。ハレの日に飲むワインは、やっぱり瓶がいいと思う。ただ、持ち運ぶのに重く、一度開けてしまうと冷蔵庫に入れるのもなかなか大変だ。

一方でペットボトルや紙は扱いやすさが身上だ。日常用のワインとして毎日飲む場合に、ガラス瓶だとちょっと大げさな感じになる。毎日気軽に飲むためには、割れる心配がなく、容器が軽く、取り回しが楽なペットボトルや紙の容器の方がいい。

ガラスのような見かけにこだわった

それならば、見た目にもこだわる形のペットボトルがあれば、雰囲気が良く、なおかつ扱いやすくていいのではないか。そういう考えのもと、まるでガラスのワインボトルのようなペットボトルを開発したという。

「開発当初は違う形になるかもしれなかったのですが、ワインの瓶の形にはこだわりました。開発部門と何度も話し合って、触らないとガラス瓶かペットボトルなのかわかりにくい、そういう形を目指しました」(伊藤さん)

実際に完成した製品は、確かに一見したところではガラス瓶かと思ってしまう。ボトルを持っても普通のペットボトルのように簡単にへこむことはなく、しっかりとしている。ガラスと比べて指への吸い付きがいいので、ようやく「あ、ガラスではないのか」と気がつくレベルだ。

ちなみに、このボトルの形は、フランスのボルドー産のワインとよく似ている。細い首の後に、ちょっとがっしりとした肩があり、基本的には直線で構成されている。

ブルゴーニュ型のワインボトル

一方で、フランスのブルゴーニュ産のワインでは、なで肩の曲線的なボトルを使う。多くのワインはこの2タイプの瓶のどちらかを使っている。

例えば、濃厚な赤ワインになるカベルネ・ソーヴィニヨンなどのブドウ品種を使ったワインの多くはボルドー型だ。これは熟成させて飲むものが多いため。熟成の過程で出てくるオリ(澱)という沈殿物が肩のところでひっかかり、注がれるワインに入らないようにしている。近年人気のチリワインも多くがこのタイプのボトルだ。

肩があるボトルにした理由を聞いてみると「特にそこまで意識したわけではないのですが、多くの人がワイン瓶というと肩がある形を連想するので、ボルドータイプにしました」(伊藤さん)とのことだった。

■ペットボトルでワインは大丈夫なのか

普段ペットボトルで清涼飲料水を飲んでいると意外に思うかもしれないが、ペットボトルは気密性に欠ける容器だ。特に酸素を通してしまうので、酸化に弱い飲料を入れるのに向いていないという問題がある。

例えばペットボトルで販売されているミネラルウォーターには、賞味期限が記されている。開封しなければ水は腐らないとされているのに、何故賞味期限がついているかというと、中身が減ってしまうからだ。ペットボトルのガスバリア性は完全ではないため、空気の移動が少しだけある。揮発した水がそこから外に出てしまうというわけだ。ある程度以上減ると計量法に抵触してしまう(500mlとして販売したものが490mlしかないと問題になる)ため、賞味期限を設けて規定量以下になる前に飲んでもらうようにしている。

また、香りの強いものの隣にミネラルウォーターを置いておくと、香りがついてしまうということもある。これも全て、ペットボトルのガスバリア性やフレーバーバリア性が低いからに他ならない。もちろん炭酸飲料を入れるものなどはある程度強化されているが、酸化しやすく繊細なアルコール類は難しかった。その辺はどうなっているのだろうか。

「ペットボトルに特殊なコーティングをすることで、ガラス瓶と同等の品質のガスバリア性能を実現しています」(伊藤さん)

ペットボトルの内側にコーティングをすることで、瓶と同等の酸素バリア性を実現したという。従来のペットボトルとは比べものにならないほど、保存性が優れている。こちらで少し調べてみたところ、ガラス瓶はほぼ酸素を通さず王冠の部分でごくごく微量に透過する(0.001ml/日以下)程度なので、このペットボトルで未開封ならば酸化はほとんど気にしないでもいい。これならば、香りが損なわれることもなくワインを楽しめる。

ただ、どれだけの長期保存に耐えられるのかは今回聞いた範囲ではよくわからないとのことだった。そのため、ペットボトルの中のワインは熟成して味が良くなるタイプではなく、すぐに飲むカジュアルなものが中心となっている。保存用ではなく、すぐ飲むものと考えるといいだろう。

■日常生活によりそうワインを目指した

サントリーの国産ブランドでペットボトルを採用しているのは、主に3シリーズ。「デリカメゾン」「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」「彩食健美」だ。ペットボトルの比率は2割程度にまで上がっているという。

これらは基本的にはどれも、輸入したブドウ(あるいはブドウのジュース)を使って国内で醸造したものだ。日本国内で栽培したブドウを使う「日本ワイン」ではなく、もっとカジュアルなタイプのワインだ。

サントリーがペットボトルで販売しているワイン

ちなみに酸化防止剤というのは、亜硫酸塩のこと。なにやら物騒な名前のように見えるが、ワインでは醸造中に自然に生成されるものもあり、昔から酸化防止や防腐のために添加されている。世界の有機ワイン造りにおいても使用が認められているものだ。

もちろん大量に摂取したら健康に害が出るが、ワインに含まれているのは微量で、亜硫酸塩で健康を害するよりも先にアルコールで肝臓や体を壊す方が先になるという量なので心配はいらない。

ただ、ごくまれに亜硫酸塩にアレルギー反応を示す人もいるので、そういった人は酸化防止剤無添加のものがいいだろう。なお、ドライフルーツにはワインよりもずっと多くの亜硫酸塩が含まれているので、ドライフルーツを食べて大丈夫な人は、ワインの亜硫酸塩で問題を起こすことはないはずだ。

実際に買っている人の意見では「何となく気になるから」「食品でも無添加のものを中心にしているので、ワインも無添加がいい」というものが多いそうだ。中には「量をたくさん飲むので、そうなると少しでも体に余計な物が入っていない方がいいから」という理由もあったとのことだ。

実際に「酸化防止剤無添加のおいしいワイン」を飲んでみたところ、若く、飲みやすいワインだった。ワインの渋み成分であるタンニンなどはあまり感じない。やや甘めな造りなので、ワインは渋くて酸っぱいからと敬遠している人でも楽しめる、多くの人向けの味わいだ。国産ワイン売り上げ容量No.1というのもうなずける。ちなみに、買っている人の6割は女性だという。

少し話が横道にそれたが、ペットボトルを採用しているワインのどれもが、いわゆる「国産カジュアルワイン」というカテゴリに入っている。ペットボトルの特性から考えると、そちらの方がいいからだ。

ペットボトルの軽さはカジュアルなワインにうってつけだ。重さを量ってみたところ760gくらい。「国産カジュアルワイン」は1本720mlと、世界的な標準の750mlよりも少ないこともあるが、ガラスボトルのワインだと1kg前後になってしまうのと比べてかなり軽い。女性がスーパーで買い物するときに買い物籠に1本入れるのにもあまり抵抗を感じないである重さだ。

また、実際に飲んでみると、重さや割れにくさ以外に蓋を閉めるのが簡単というのも大きなメリットだった。ワインはビールなどに比べてアルコール度数が高いため(10%から15%ぐらいまである)、一回の食事で一本を飲み干すことができず残してしまうことも多いだろう。その場合、栓をして冷蔵庫で保管したいのだが、コルクだとこれがかなり難しい。ギュッとコルクを押し込んでみても、横にしたら外れてしまうんじゃないかと思い、ドアポケットなど縦に置くところに保管せざるをえなかったりする。

ところがペットボトルのスクリューキャップだと、キュッと閉めておしまいだ。蓋をしたら、横にして冷蔵庫の奥にそっとしまえばいい。横置きでもワインが漏れてくることは一度もなかった。

これが、日常的にちょっとずつ楽しむようなワインにとても向いているというわけだ。家事の合間にちょっと飲んだり、料理に合わせてグラス一杯だけ飲んだり、まさに日常生活によりそう「相棒」としてのワイン。そういった、ワインをカジュアルに楽しむために、扱いが多少雑でも大丈夫なペットボトルは最適だ。

「氷と楽しむ 酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」夏に限定発売された

ペットボトルのワインが増えている理由には、デイリーで親しめるワインを増やすことで、ワイン市場を広くしたいという思いがある。そのための飲用シーンや中身の提案もし続けているとのこと。例えば、夏に限定販売された「氷と楽しむ 酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」などは、消費者から暑い日にワインを冷やし忘れたときには氷を入れて飲んでいるということを聞き、だとしたら最初から氷を入れること前提で少し濃い味わい(アルコールも)にしたらいいんじゃないかとして販売。すぐに完売してしまったそうだ。

取材以後、ちょくちょくペットボトルのワインを飲んでいるが、気楽に飲むのにいい味わいだ。また、値段もそれほど高くはないため、言葉は悪いが、だいぶん雑に扱っても、心が痛まない。外で飲むのにも便利で、瓶よりもペットボトルは捨てる場所が充実しているし、捨て場所がなくて持ち帰るときも軽いため、負担にならない。これは確かに、容器によって飲用シーンが広がったと感じさせた。

聞くところによると、最近、米国などでは缶入りワインの人気も上がっているらしい。バーベキューやスポーツ観戦など、アウトドアで飲むのに便利だからだそうだ。ワインの世界も容器に多様性が出てきてますます楽しみだ。

(日本酒ライター 杉村啓)

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