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ワインは低糖質 ポリフェノール以外にも効能 血圧を下げる、腸内環境を整える…

日経Gooday

2016/9/19

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

今、ワインが人気だ。実はここ数年は「第7次ワインブーム」といわれ、日本のワインの消費量は過去最大を更新している。今なぜ、ワインが人気なのか? その背景には、安くておいしいワインが手軽に入手できるようになったという面もあるが、忘れてならないのが「健康にいい」というイメージだ。「せっかく飲むならカラダにいいものを」と考える人は少なくないだろう。ワインの健康効果というと、赤ワインに含まれるポリフェノールばかりが脚光を浴びるが、ワインにはそれだけにはとどまらないさまざまな健康効果がある。特集では、知られざるワインの健康効果を紹介していこう。

■今、日本は過去最大のワインブームの渦中

突然だが、現在日本のワイン市場は、過去最大の大ブームになっているということをご存じだろうか。実は、2012年以降、国内の消費量は過去最大を更新中だ。

1990年代後半、赤ワインに含まれるポリフェノールの健康効果が大々的に取り上げられて爆発的なブームになったことを記憶されている方も多いと思う。これが第6次ワインブームだ。このブームは99年以降、徐々に落ち着きを見せ、その後の消費量は減少傾向となった。

その後、リーマン・ショック後あたりから、消費量が再び増加に転換、2012年の年間消費量は第6次ブームを超え、現在に至っている。今は「第7次」ワインブームの真っただ中にある。

■品質の高いワインが、安価に楽しめるようになった

第6次ワインブームの爆発的な人気ぶりをご記憶の方からすると、「ブーム」といわれてもピンとこない人もいるかもしれないが、ここ数年で、街角のワインバー(バル)などは格段に増えたし、居酒屋のメニューでもワインが充実してきた。スーパーでもワインの品ぞろえを充実させてきたところが増えている。

チリやスペインなどから、安くても品質の高いワインが輸入され、手軽に楽しめるようになったことがその背景にある。ここ数年で、スーパーなどで扱っている低価格ワインも明らかにおいしくなっている。

例えば、1000円台のワインというと、昔は「安かろう悪かろう」の典型で、正直おいしいものにはなかなか出合えなかったが、最近は違う。チリなどの南米産で1000円台のワインでも「おいしい」と感じるものが増えた。実際、ワインの輸入元の推移を見ると、ここ数年のワインの輸入をけん引しているのがチリであることがわかる。15年には、チリからのワインの輸入量がフランスの輸入量を超え、国別の輸入数量の第1位になっている。

■ワインブームの主眼が「健康」にシフト

今、ワインが人気を博している背景として、忘れてはならない要素が「健康」だ。ワインは他のお酒に比べても、「健康にいい」というイメージが定着している。筆者もそうだが、「どうせ飲むなら、カラダにいいものを」と考える人は少なくないだろう。ワインというと、昔は「特別なときに飲むちょっといいお酒」だったが、今は健康のために日常的にワインを飲む人が増えている。食文化の歴史に詳しい著述家の速水健朗氏も、ワインブームを先導した要因が、「ステータス」から今では「健康」へと変化したと指摘している。

■白ワインに健康効果はないのか? 酸化防止剤の影響は?

ワインの健康効果としてよく取り上げられるのが、赤ワインに含まれる「ポリフェノール」だ。「フランス人は喫煙率が高く、バターや肉などの動物性脂肪の摂取量が多いのに、心疾患による死亡率が低い」という“フレンチパラドックス”の理由として、赤ワインのポリフェノールの存在が指摘され、第6次ワインブームのけん引役となった。

これにより“赤ワインの健康効果”が不動のものになったわけだが、ワインには赤ワインだけでなく、白ワインやスパークリング・ワインもある。これだけ暑い日が続くと、白ワインやスパークリング・ワインでスッキリ楽しみたいという人も少なくないだろう。同じワインでも、白ワインやスパークリング・ワインには健康効果はないのだろうか。また、赤ワインと一口にいっても、ブドウの品種もさまざまだ。どれも健康効果は同じ、ということはないだろう。

また、ワインに詳しい人なら、ほとんどのワインに「酸化防止剤」が含まれていることをご存じの方もいるだろう。昔から使われてきた成分で、カラダへの影響は心配しなくていいなどといわれるが、実際はどうなのだろうか。また、最近では、「自然派ワイン」「ビオワイン」などと呼ばれるワインも人気で、専門店も増えている。これらは普通のワインと何が違うのだろうか。

赤ワインのポリフェノールにとどまらないワインの健康効果について、山梨大学ワイン科学研究センターの佐藤充克客員教授に話を聞いた。佐藤教授は、メルシャン酒類研究所所長を務め、醸造と健康効果両方の研究に取り組んできたワインのスペシャリストで、これまでワインの健康効果についての論文を数多く発表してきた。

佐藤教授によると、赤ワインに多く含まれる抗酸化物質「ポリフェノール」の効能だけでなく、多くの健康効果があるという。

ワインの主な健康効果
動脈硬化や心疾患の予防(抗酸化作用)
認知症の予防
糖質が他の醸造酒に比べて少ない
利尿効果があり、新陳代謝を活発に
血圧を下げる効果
腸内環境を整える効果
大腸菌、サルモネラ菌に対する抗菌力
ピロリ菌の殺菌効果

■ワインは低糖質だった! 醸造酒の中でも圧倒的に少ない

お酒は飲みたいが健康にも配慮したい――そんな人が気にする大きなポイントが「糖質」だ。最近は、パンやラーメンから甘さが決め手のスイーツに至るまで、あらゆる食品で低糖質(ローカーボ)が空前の大ブームとなっている。メタボが気になるビジネスパーソンも、仕事帰りや自宅の晩酌のお供に飲むなら、低糖質のものにしたいと思っている人は多いだろう。

「あまり知られていませんが、ワインは醸造酒の中でも圧倒的に糖質が少ないお酒です。糖質を気にする方はワインを選ぶといいでしょう」と、佐藤教授は話す。

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(文部科学省)によれば、赤ワイン、白ワインの糖質は100グラム当たりそれぞれ1.5、2.0グラムと少ない。これは、日本酒の3.6~4.5グラム、ビールの3.1~4.6グラム(いずれも、純米酒と本醸造酒、淡色とスタウトなどタイプによって異なる)の60%から3分の1程度だ。ちなみに、100グラム当たり糖質1.5グラムというのは、糖質が少ない食品として知られるシイタケ(菌床栽培・生、1.5グラム)と同等の数値だ。

しかし、ワインの原料は果物であるブドウだ。ブドウは糖度も高く、ブドウのジュース(ストレート)の場合は、100グラム当たり14.4グラムも糖質を含んでいる(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)。それなのになぜワインの糖質は高くないのだろうか。佐藤教授は「ブドウに含まれる糖分はアルコール発酵により、分解されエタノールになります。この発酵過程でほとんどの糖分が消費されるため、ワインの糖質は少なくなるのです」と説明する。なお、実際にワインを飲むと、甘口のデザートワインではない通常のワインでも甘さを感じるものが少なくないが、佐藤教授によると「うまみ成分であるアミノ酸が多く含まれているから」だという。

※ワインは低糖質だと説明したが、貴腐ワイン(ソーテルヌなど)やアイスワインなどの甘いデザートワインは糖質を多く含んでいる。デザートワインを食事と一緒に大量に飲むということは通常あまりないが、糖質を気にする方は気を付けたい。

なお、寒冷な土地などで収穫したブドウからワインを造る場合は、ブドウの糖度が低く十分なアルコール濃度が得られないことがある。この場合は、「補糖」といってワインを発酵させる前に糖を加えることがある。補糖により「ワインの糖分が増えるのでは?」と思う人もいるかもしれないが、佐藤教授によると、これらはすべて発酵の段階で分解されアルコールになるので糖分が増えることはないそうだ。

糖質の量だけでいえば、焼酎やウイスキーは0(ゼロ)グラムと断トツに低いが、トータルのカロリーで比較すると、焼酎は100グラム当たり146~206キロカロリー(単式か連続式蒸留かで異なる)、ウイスキーは237キロカロリーなのに対して、ワインは赤白共に73キロカロリーと低い。ワインは全体のバランスがとれたお酒なのだ。

■適量のワイン摂取が血圧を下げる!?

佐藤教授は、注目のワインの健康効果として「血圧を下げる効果」と「腸内環境を整える効果」を指摘する。

「適量のワインは血圧を下げる効果が期待できます」と佐藤教授。「イギリスのリバプール・ジョン・ムーアズ大学の研究者が、6000人を対象に、運動、食事、肥満度と血圧の関係を調べたところ、ワインを多く摂取する人は血圧が統計的に有意に低かったという調査結果が出ました。一方、ビールの場合は血圧は上昇しました」(佐藤教授)。この調査では、ワインを飲む人の中で1日約250ミリリットル程度たしなむ人が最も血圧が低いという結果が出ている(Annals of Human Biology;24(3):1997,229-247.)。なお、ワイン1日約250ミリリットル以上になると、血圧は上昇したという。

なぜ、ワインに血圧を下げる効果が期待できるのだろうか。佐藤教授は、「ワインにはカリウムが多く含まれています。カリウムには、ナトリウム(塩分)を体から排出する働きがあります」と説明する。赤ワインの場合、ワイン100グラム中に110ミリグラム、白ワインの場合は60ミリグラムのカリウムを含んでいる(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)。日本酒(5~7ミリグラム)やビール(34~65ミリグラム)より豊富に含まれている。

■ワインには腸内環境を整える効果も

ワインの味わいの特徴の一つに、酸味がある。この酸味の基となっているのが、ワインに多く含まれる酒石酸、乳酸などの有機酸だ。「酒石酸、乳酸などの有機酸には、腸内で悪玉菌の生成を抑え、善玉菌を活性化させる働きがあります。つまり、腸内環境を整える効果が期待できるのです」(佐藤教授)

さらに、ワインに豊富に含まれるポリフェノールも腸内環境を良くするのに一役買っているという。「ポリフェノールは、分子が大きく腸でなかなか吸収されません。実は、腸内にいる善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌はポリフェノールを食べて増殖するのです。つまり、ポリフェノールには食物繊維をとるのに近い効果があり、便秘予防などの効果が期待できます。ポリフェノールが多い赤ワインの方がより多くの効果を期待できます」(佐藤教授)

佐藤充克(さとう・みちかつ)山梨大学ワイン科学研究センター客員教授・農学博士。東北大学農学部卒業後、メルシャン入社。東京大学農学部、カリフォルニア大学デービス校を経て、メルシャン酒類研究所・所長に就任。赤ワインのポリフェノールの研究を進める。NEDOアルコール事業本部、研究開発センター所長、山梨大学大学院ワイン科学研究センター、ワイン人材生涯養成拠点・特任教授、山梨県果樹試験場・客員研究員などを歴任。ワイン及びポリフェノールに関する論文多数。

(大塚千春=フリーエディター・ライター)

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